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その代表格ともいえる漫画やアニメ業界で、NFTを活用するビジネス・サービスは多く存在する。「漫画・アニメ×Web3.0」の可能性と課題について改めて考えてみよう。
上川:ここ数年、漫画やアニメ業界がNFTを始めとしたWeb3.0のテクノロジーを活用する事例が増えています。そこで、今回は漫画・アニメーション×Web3.0の可能性について語っていきましょう。
高野:さっそくで申し訳ないのですが、NFTとかWeb3.0というのは厳密にはどういう意味なのでしょうか?私も何度か耳にしたことがあるのですが、実は厳密な定義が理解できていないままです。
上川:そういう方は多いと思いますよ。最近になって使われるようになった言葉ですし、使う人によって定義が変わったりすることもありますから。
では、まずはそれぞれの言葉の説明から始めましょう。NFTというのは、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれていて、デジタルデータが唯一無二であることを証明する技術です。
もう少し簡単にいえば、特定のデジタルデータに真贋証明書のようなものを紐づけるものですね。
高野:それがなんの役に立つのですか?
上川:そもそもデジタルデータというものは、無限にコピーできるものですよね?私が持っている画像データをコピーして高野さんのパソコンに送った場合を考えてみましょう。あとから第三者があらわれて、私と高野さんが持っている画像のどちらが原本、つまりオリジナルな画像データなのかを見分けることはできません。
また、私も自分がその画像の最初の所有者であったことを証明する術はありませんよね。同じように、インターネット上には、大量にコピーされたデータが溢れています。
そうなると、もはや誰がそのデジタルデータの所有者なのか、作成者なのか、ということすらわかりません。
つまり、本来デジタルな世界には”原本”や”オリジナル”、”所有者”という概念自体が存在しないともいえます。
そんなデジタルな世界に、「唯一無二であること」を証明できる技術を持ち込み、まるでフィジカルなモノのように扱えるようにしたのがNFTです。
だから、NFTがなんの役に立つのかと聞かれると、「これまでデジタルな世界ではできなかった多くのことが可能になります」という回答になります。そのあたりは、後で具体例を出して解説しましょう。
高野:では、Web3.0というのは?
上川:Web3.0というのは、丁寧にいえば「ブロックチェーン技術をベースにした分散型技術により、現在のインターネットよりも分散化・非中央集権化されたあたらしいインターネットの姿」を指すものです。
でもこれだとわかりにくいのでもう少し簡単にいえば、ブロックチェーン技術を使って生まれるテクノロジー、サービス、アプリケーション全般を指す言葉といえます。
NFTもその1つですし、ビットコインなどの暗号資産もWeb3.0の一種です。ただ、漫画やアニメの業界で主に活用されているのはNFTのみですね。
現物と紐ずくNFT
高野:なるほど。漫画関連の企業やIPによるNFTの活用事例は数多く生まれています。たとえば集英社は「マンガを、受け継がれていくべきアートに」というビジョンのもと「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」というプロジェクトを立ち上げました。
その第一弾として、『ONE PIECE』の活版印刷作品とNFTを組み合わせて販売しています。
上川:フィジカルなアート作品と、その所有を証明するNFTを組み合わせたプロジェクトですね。
高野:このプロジェクトは評判も売上も好評なようで、2021年のスタート以来、『ONE PIECE』以外のさまざまなIPや作家のNFTを販売し続けています。
上川:この事例は、NFTを活用することによるマネタイズ手法の多様化を実現したものといえるでしょう。
漫画のイラストは以前から世界中で高い評価を受けていましたし、ファンも世界中に存在しているので、漫画をフィジカルなアートとして販売することは、NFTが存在しなくても実現できたかもしれません。
ただし、その場合はいわゆる贋作の問題が常につきまとうことになったはずです。また、海外ファン向けに販売サイトを制作したり、プロモーションを展開するのも、簡単ではなかったでしょう。
しかしNFTにすることによって、国内のみならず世界中のファンや投資家にアピールすることができるようになりました。
また、販売されるイラストにはブロックチェーンと連携したNFTタグシールが付属していて、いつでも所有者を確認できるというのも、これまでにないあたらしい点です。
話題性があり、世界中の顧客に販売できて、贋作の心配もない。自社のIPを守りつつ、ブランド力を活用して成功した事例といえるでしょうね。
高野:大手出版社としては、講談社も漫画IPのNFT化を展開しています。2021年にはヤングマガジンで新連載をスタートした『code:ノストラ』のNFT作品を販売しました。
販売されたのは第一話の全51ページを各5部。販売開始から12時間で完売し、それ以降も2話の各ページを販売するなどしています。
▶︎2021年に販売されたヤングマガジン新連載「code:ノストラ」のNFT作品。第1話の全51ページ各5部は、約12時間で完売した。お気に入りのページを1部購入する人が約半数を占めたものの、なかには30ページまとめて購入した例もあったという。
ちなみに、このNFTの取引額が1番大きかったのは日本ではなく、米国だったそうですよ。また、2022年には『進撃の巨人』のデジタルコレクティブNFTを米国で販売し、2024年に『FAIRY TAIL』のデジタルカードNFTを販売開始すると発表するなど、人気IPをNFT化して海外展開するという動きが目立ちますね。
上川:日本の"マンガ"を世界に届ける手段としてNFTを活用している事例ですね。集英社、講談社に共通しているのは、どちらもすでに確固たるIPを確立している作品をさらに広め、ビジネスとしてマネタイズ手段を拡大することを目指した動きであるという点です。
クールジャパンという言葉が使われるようになって久しいですが、「マンガ文化の世界展開」というのは、日本の悲願ともいえます。
その助けとしてNFTが活用されるというのは、NFTという技術にとっても素晴らしいことといえるでしょう。
高野:イラストとNFTというのは、相性がいいのでしょうか?
上川:そもそもNFTというテクノロジーが広まったのも、アート作品と組み合わせたことで投機的なブームが巻き起こったからです。
それから、ジェネラティブアートと呼ばれる、いくつかのパーツを組み合わせて自動生成したデジタル画像をNFT化したものもブームになりました。当時、1枚20億円以上で販売されるNFTまであったほどです。
高野:ものすごいですね。フィジカルな絵画で考えると、歴史的な大物作家の作品でないかぎりそんな価格にはなりませんよ。
上川:ところが、そのような高額な価格で取引されたNFTの多くは、有名な作家による作品ではありません。
それどころか、あらかじめ作成した目や口、髪型などのパーツを自動で組み合わせただけのジェネラティブアートという手法によって生み出されたものです。
普通、イラストやアートに価格がつく場合というのは、その作品がよほど優れているというケースか、作家のネームバリューがすごいケースですよね。
ところがジェネラティブアートNFTはそのどちらにもあてはまらないのです。イラスト自体は、それこそインターネットのどこにでも転がっているようなクオリティですし、作家と呼べるほどの存在すらいません。
しかし、当時はジェネラティブアートNFTということだけで、次々と作品が売れていきました。ただし、そのようなブームは長続きせず、ほとんどのNFTは暴落してしまいましたが。
世界的人気漫画をNFT化してグローバルに展開
高野:それに比べれば、人気漫画の一コマやキャラクターイラストというのは、明らかに価値がありますね。
上川:そうですね。当初のNFTブームの時は、ただ「NFTである」ということだけで高額な取引が次々と成立しました。実際のところ、Web3.0やNFTという用語、そしてテクノロジーはバズワードのように広まっていますし、投機的な魅力があることも知られています。
それゆえに、「NFTである」ということだけでも、一定の需要があり話題性もあるのです。そこに、日本の出版社が持つ人気IP作品を載せることができれば、「NFTアートはイラスト自体には根源的な価値がない・価値があるとは思われていない」という課題を解決できます。
その上で、NFTというテクノロジーを使うことだけで一定の話題性を獲得できて、グローバルからの注目を得られる。しかもIPのコントロールが難しいという問題も解決できます。
そういう意味で、集英社や講談社の取り組みは、NFTの活用事例としては真正面からの正攻法といえるでしょう。
ただし、このような手法を取れるのは、すでに世界的ともいえる人気を獲得している漫画だけです。そのような人気タイトルのNFTはたしかに順調な売れ行きをみせていますし、実際に販売抽選なども世界中からファンが殺到しています。
しかし、このような成果を生み出せるのはほんの一握りの作品だけです。
高野:たしかに、先ほど紹介したもの以外にも、漫画のイラストをNFT化した事例はいくつも誕生しています。それらは成功していないのですか?
上川:何をもって成功というべきかは難しいですが、オープンなデータをみると、あまり売れていない漫画NFTは少なくありません。
実際のところ「◯◯をNFT化!」といった発表をして販売していても、ほぼ入札がなかったり、まったく取引されていないという事例も散見されます。
また、一度NFTの販売を試みたものの、おそらくあまり売れなかったという理由で続報がないケースも多いです。
高野:なぜうまくいかなかったのでしょうか?
上川:1つは、NFTへの投資熱が冷めてしまっているという理由があげられます。2022年頃に多くのイラストNFTが高騰してブームとなったのですが、現在ではその多くが暴落しています。
当然ながら、当時のブームはほぼ投機的な理由によって生まれたものなので、それによって”損をする”ということが広まれば、ブームは終わってしまいますよね。
次に、NFTというものが、まだ多くの人に知れわたっていないという問題があります。実際のところ、NFTという用語を聞いて不信感を抱く人は多いですよね。
むしろ、その方が多数派かもしれません。しかも実際に取引をする場合は暗号資産やウォレット(暗号資産やNFTを扱うための電子財布)の設定などが必要になることもあるため、初心者にとってはハードルが高いものになっています。
さらにいえば、よほどの人気IP以外は、そもそもあまり魅力的ではないという問題があります。特にNFTはグローバルに向けて販売するものなので、海外にまでその人気が広まっているようなIP以外は、見向きもされないというのが現実かもしれません。
高野:つまり、漫画×NFTという組み合わせで現実的に活用できるのは、超人気IPだけ、ということになるのですね。
上川:今のところはそうですね。ただし、先ほど話した通りNFTというのは今までデジタルな世界に存在しなかった概念をあらたに持ち込むテクノロジーなので、「何が正解なのか」はまだ誰にもわからないという面があります。
「人気漫画のイラストをNFTにして販売する」という方法は、もっとも想像しやすくて購入者にもわかりやすい事例だったということでしょう。
今後あらたな手法が次々と生まれると予想できますし、すでにかつてない試みをしているものも生まれています。
NFTはクラウドファンディングのような性質を持たせられる
たとえば、これまでは既存の人気IPをNFT化するという試みについて話してきましたが、NFTの世界からIP化することを目指すプロジェクトも生まれています。その1つが、『新星ギャルバース』です。
高野:どのようなプロジェクトなのですか?
上川:日本の昭和アニメのような世界観とデザインで作られたコレクティブNFT(複数のイラストが存在するNFTシリーズ)で、当初から「アニメ制作」という目標を掲げています。そして、このNFTの保有者はアニメ制作に関われるようになっているようです。
高野:イメージとしては、アニメ制作クラウドファンディングにNFTをかけあわせたようなものですね。
上川:はい。ただし、アニメ制作には莫大な時間と費用がかかるので、今のところそれが現実的に行われている様子はありません。
とはいえ、このコレクティブNFTは2022年に発売されてからすぐに完売し、一時は初期販売価格の10倍近い値段をつけました。
ほかには、同じくコレクティブNFTシリーズである『CryptoNinja』のキャラクターを使用したアニメシリーズが2023年に放映された例もあります。また、世界的なNFTプロジェクト『Azuki』も、IPを活用したアニメの制作を発表済みです。
高野:なぜNFTプロジェクトがアニメへと進出する動きがあるのでしょうか?
上川:漫画やアニメをNFT化するのとは反対のアプローチで、まずNFTを販売し、それが好評だったら”IP化”、”ブランド化”を進めてさらにその価値 を高めようという考え方です。
また、NFTの販売というのは資金調達という側面があります。投資家から資金を集め、そのお金で何をするのかという疑問への回答として、アニメ化が選択肢に入っているということでしょう。
高野:NFTとして誕生したプロジェクトの展開先として、アニメが選ばれるというパターンもあるのですね。
上川:いわゆるデジタルイラストNFTのブームは一旦は去ったという形ですが、現在でも一定の人気を誇るプロジェクトも残っています。それらのなかから今後もアニメや漫画化を進めるものは出てくると思います。
高野:そのほかのアニメや漫画とNFTのコラボレーションにはどのようなものがあるのですか?
上川:目立つものとしては国内企業のA3社が手掛ける「Otaku Culture Studio」が「日本のアニメ・マンガ・ゲームコンテンツをWeb3.0化して、ファンとクリエイターが共に作品を盛り上げる世界を目指す」という目標を掲げてさまざまなコラボレーションを行っています。
▶︎Otaku Culture Studioはさまざまな作品とコラボしたNFTを販売。第一段として、2022年に公開された映画「雨を告げる漂流団地」の限定NFTを販売した。販売価格0.04ETHで、1,111個がわずか1時間で完売した。
アニメ声優とコラボレーションしてオリジナル音声付きのNFTコレクションを販売したり、『COBRA』などの人気IPとのコラボNFTを販売していますね。
高野:声優のオリジナルボイスというのは面白いですね!「唯一無二の音声を自分のものとして所有する」というのは、アニメファンの心をくすぐる試みのように思えます。
上川:ほかにも同プロジェクトは2022年に公開された映画『雨を告げる漂流団地』とのコラボNFTを販売しています。
こちらは1,111個がわずか1時間で完売したとか。こんな風に、コンテンツに関連するNFTを販売することでプロモーションにもなりますし、もちろんビジネスとしてマネタイズ手法の多様化にもつながります。
▶︎Otaku Culture Studioの「Project KOWANE」では、日本独自の発展を遂げた声優文化をWeb3.0の世界に発信。有名声優とタッグを組み、独自のNFTを提供している。
高野:別のタイプの漫画×NFTの事例として、「DeManga」というサービスも面白そうです。近年流行している漫画アプリのようなサービスなのですが、 漫画を読んで応援することで報酬をもらえるという仕組みになっています。この報酬というのが、「報酬を使ってキャラを育成し、NFTとして取引できる」という仕組みになっているようです。
上川:漫画を読むという行為をゲーミフィケーションするタイプのサービスですね。DeMangaは「独自トークンの発行」というのも計画として発表しているので、NFTだけではなくトークンも活用するのでしょう。
▶︎DeMangaで漫画を読み、NFTを獲得するまでのサイクル。一般的な漫画アプリのように好きな作品を読んで応援するだけで、オリジナルキャラクターNFTを獲得できるという。
高野:トークンというのはなんですか?
上川:いわゆる暗号資産のことです。トークンを発行するというのは、運営企業が自分でトークンを作 り、それを販売することで資金調達を行うということです。Web3.0と呼ばれる業界では当たり前のように行われています。
高野:そのトークンというのを買う人はいるのですか?
上川:もちろんです。NFTと同じように投機的な目的で買う場合もありますが、たいていはトークン発行企業が保有者に向けた特典や、トークンの用途を事前に発表します。それをみて、トークンを購入したいと感じたり、将来的に値上がりしそうだと感じた人が購入するんです。
DeMangaはまだそのあたりのことを発表していませんが、一定数のトークンを持っているユーザーには「作者のサイン入りイラストをプレゼント」とか、「自分が好きな作品が連載になるための投票権をたくさんもらえる」などの特典が発表されるのだと予想します。
NFTについても「オリジナルキャラクターを育てるとたくさんの応援(投票)ができます」と発表しているので、読者がNFTやトークンに投資をすることで、DeMangaをより快適に利用できるようになり、連載作品の決定といった運営の意思決定に参加できるようになるのでしょう。
このようにトークンやNFT保有者に、運営の意思決定権を与えるというのも、Web3.0業界では珍しくない活用方法です。
高野:NFTやトークンというとどうしても抵抗感があるという人もいますが、とりあえず漫画を読んでいれば勝手にNFTが手に入る、というのなら気軽に始められそうですね。
上川:こんな風に、NFTやトークンを使った試みというのは「デジタルイラストNFT を作って売る」以外にも多数生まれています。このなかから、もしかしたら将来のスタンダードが生まれるかもしれません。
高野:ここまで紹介してきた以外に、NFTを使ってできることはほかにないんですか?
上川:よくいわれるのは、個人によるマネタイズ手法の拡大ですね。先ほど、大半のNFTイラストはクオリティという面で優れているわけではない、という話をしましたよね。
だからこそ、クオリティが高いものはほかよりも注目を集めやすいという面があります。なので、一時期はいわゆるイラストレーターやアニメーターの方がイラストNFTを作って販売するという事例も増加しました。そして実際に数百万円、 数千万円の利益をあげたという人もいます。
高野:アニメーターの方や、新人漫画家など、まだ十分な知名度を獲得していない人でも、腕さえあれば稼げるというのは魅力的ですね。
上川:また、NFTの特徴として「二次流通からも制作者に収益をわたせる」というものがあります。NFT というのはあらかじめ「取引が行われるたびに制作者に一定の割合の取引金額を渡す」とプログラミングしておくことができるんです。
特に漫画については、転売や中古販売では、制作者に一切売上が入らないという点が問題視されていますよね。
高野:できれば中古ショップなどで安く買いたいけれども制作者に還元されないのは嫌、という意見もありますからね。
しっかりと制作者に還元されるのであれば、安心して購入できそうです。
上川:もう1つ、NFTを始めとしたWeb3.0には「お金を出して応援する」という文化が根付き始めています。
大好きな漫画作品や作家を応援する手段として、今まではコミックスを購入してSNSでつぶやくというのが一般的ですが、将来的には「NFTを買う」というのもその手段になるかもしれません。
NFTの場合、熱狂的なファンが100人いれば、その人たちにむけて特別なイラストなどを販売することができますから。
高野:なるほど。クリエイターを応援したいという文化は、徐々に広まっているように感じます。NFT を購入すれば、かなり直接的に作家を支援できるわけですね。
なんとなく、クリエイターが「活動費が足りないので」といってクラウドファンディングをするのは現実的ではない気がしますが、「NFTを購入して活動を応援してください」という形なら無理がないと思います。
上川:アニメについても、漫画と同様にグローバルなファンが存在するものなので、もっとNFTを活用すればマネタイズにつながるはずです。
高野:どんな手段が考えられますか?
上川:アニメファンの間では、よく名シーンが語られますよね。そのシーンの動画をNFTにして販売すれば、購入したい人はいると思います。
アニメではありませんが、Web3.0業界では『NBA Top Shot』というNBA(米国プロバスケットボールリーグ)の名シーンをNFT化したコンテンツが1年間で売上7億ドルを超えたこともあります。
大好きな選手の最高のシーンを“自分のもの”にできるなら、いくらでも払うというファンがいるのは納得できますよね。
同じように、アニメのあの名シーンを保有したい!という欲望も、きっと潜在的にはあるはずです。高野さんはそういうシーンありませんか?
高野:そうですねえ。進撃の巨人で神作画だと話題になった、立体機動を使った戦闘シーンは何度でもみてしまうほど好きです。あと、『かぐや様は告らせたい』の告白シーンとか、『ONE PIECE』の“頂上決戦”とか。もしあのシーンをみた直後に「NFT化しました」と聞けばおそらく買ってしまいます(笑)
上川:漫画ファンやアニメファンは、自分の感動や愛情を表現するためにお金を出すことを、むしろ喜びだと感じますよね。
マネタイズと聞くとちょっといやらしいと感じる人もいるかもしれませんが、ファンにとってはお金を払って応援できるというのはむしろありがたいことです。
NFT によって、運営企業もファンもうれしくなるようなサービスが今後も生まれることを楽しみにしておきましょう。
Profile
◉上川宗
38歳、フリーライター。最新テクノロジーを中心にIT専門記者として活動。Web3.0とNFTに詳しく、NFTアートプロジェクトに参画した経験を持つ。好きな漫画は『蒼天航路』、今期の推しアニメは『無職転生』。
◉高野カズキ
出版社勤務を経て独立。現在はエンターテインメントを扱うWebメディアの編集長を務める47歳。好きな漫画は『カイジ』、『嘘喰い』、『彼方のアストラ』。アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』にハマりライブにも参加した。
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