スターバックスユーザーのロイヤルティシステムを向上させることに特化したこのプログラムは、実施からわずか1年で幕を閉じた。
終了した理由は明らかにされていないが、正確にはプレスリリースで「Web3.0開発の次なるステップに向けた準備が必要」であるためと記されている。
このプレスリリースを鵜呑みにすると、次期プロジェクトの準備期間を設けるため、もしくは“ベータプログラム”としていることから、このプロジェクト自体が今後のプロジェクトのために試験的に運営されたとも読み取れる。
しかし、スターバックスの最高マーケティング責任者であるブレイディ・ブリュワー氏も「Web3.0エクスペリエンスに革命を起こすだろう」と語っていたことからもわかる通り、このプロジェクトが開始した当初はスターバックスにとって肝入りのプロジェクトだったはずだ。それが1年足らずで終了したということは事実上の失敗だったといえるだろう。
このプロジェクトに関連するNFTの価格をチェックしてみると、オデッセイNFTのラインナップの大部分が赤字であることから、このことがプロジェクト終了の原因の主であることが想像に難しくない。
具体的には同プロジェクトのセイレーンシリーズを除いて、ほかのシリーズのNFTはすべて発売時の価格を下回っており、そのほとんどが90%以上の価格下落となっている。つまり、最初にオデッセイシリーズのNFTを購入したユーザーはすでに赤字となっている可能性が高い。
また、ユーザーがクエストをこなすことで無料で手に入るNFTのフロア価格も一桁まで下がっている。これでは最初にクエストをこなすためにユーザーが消費したコストをカバーすることはできない。では、オデッセイNFTのラインナップの大部分が赤字となった要因は何であろうか。
実際にオデッセイプロジェクトが始動した当初は2,000枚のセイレーン・コレクションが20分足らずで完売、NiftyゲートウェイでのスタンプNFTの総売上高は340万ドル、さらには公式サイトがアクセス過多のためアクセス不能になったこともあったほどで、このあとわずが半年足らずでプロジェクト終了することになるとは誰も思わなかったはずだ。
前述のブレイディ・ブリュワー氏の発言内容もこの実績をみるとその自信も確かにうなづける。プロジェクトの滑り出しとしては実に順調な滑り出しだったこのプロジェクトがその後低迷した背景にあるのはNFT市場全体の停滞だろう。
2024年2月以降、ビットコインやイーサリアムが最高値を更新するなど暗号資産市場は幅広く上昇している一方で、NFT市場は下落傾向にあり、2023年のNFT取引高は118億ドルで、263億ドルだった2022年の実に半分以下となり、前年比145億ドル減少している。このようなNFT市場全体の低迷の影響を受けた可能性は十分考えられる。
ただし、これはあくまで憶測にすぎない。スターバックスのこのWeb3.0マーケティングアプローチは1年間のトライアルに過ぎないかもしれない。今後何らかの動きがある可能性は十分にあるので、注目する必要があるだろう。
Good idea
カルビーの『NFTチップスキャンペーン』
2022年7月にカルビーは博報堂と協働でCryptoGames社の「Astar Farm」という農業体験ゲーム内で10,000名に向けて初のNFTを配布した。
これはこのゲームでじゃがいもを収穫したユーザーのなかから特定の人がカルビーの実際のポテトチップスを受け取れるというキャンペーンだったが、大好評だったこのキャンペーンを受けて、さらに2023年4月に両社は『NFTチップスキャンペーン』を実施し、大きな反響を呼んでいる。
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