Web3.0

次の“ブルーオーシャン”になるか? ブロックチェーンゲームの現状と可能性

2024/07/29Iolite 編集部
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次の“ブルーオーシャン”になるか? ブロックチェーンゲームの現状と可能性

“稼げるゲーム”として話題になったブロックチェーンゲームの現状は?

ブロックチェーンゲームはなぜ盛り上がっているのか?

そこにチャンスを見出すゲームプレイヤーと開発者、それぞれの期待と狙いとは。

ブロックチェーンゲームとは

ゲーム市場のなかには、コンシューマやPC、モバイルゲームのような主要市場のほかに、VRゲームのように今は規模が小さくても将来性を期待されている市場がいくつか存在する。ブロックチェーンゲーム(BCG。GameFiやWeb3.0ゲームとも呼ばれる)もその1つである。まず、BCGについて改めて解説しよう。

BCGとは、暗号資産やNFTといったブロックチェーンベースの技術を活用したゲームのことである。たとえば暗号資産やNFTを介することでゲーム内資産と現実の資産(お金)を交換できるようになるというのが、ブロックチェーンによって実現したBCGの大きな特徴の1つといえるだろう。

実際にはブロックチェーン技術によって可能になることは数多く、今もさまざまな工夫が凝らされている最中だが、現時点では「ゲームを通じて(現実のお金を)稼げる可能性がある」ものがBCGであると理解しておけば十分といえる。

そんなBCG は、Web3.0と呼ばれるブロックチェーンベースの技術を活用している業界ではすでに有名だが、一般的知名度はそれほど高くないので、誕生した経緯と現状について簡単に解説しておこう。

最初のブロックチェーンゲームとなった『クリプトキティーズ』

最初のBCGは2017年にリリースされた『クリプトキティーズ』というタイトルで、デジタルネコのNFTを繁殖して育て、取引するというゲームだった。

このネコNFTを取引する際の決済手段として暗号資産も使われていたが、その後、暗号資産をさらにゲームのなかに組み込んだタイトルが登場する。それが『アクシーインフィニティ』である。

本作は、キャラクターのNFTを保有した状態でゲームをプレイすることで、トークンを獲得できる「Play to Earn(プレイトゥアーン)」という仕組みを生み出した。

『クリプトキティーズ』はNFT の取引によって暗号資産を増やせるチャンスがあるというものだったが、『アクシーインフィニティ』ではゲームをプレイするだけで暗号資産を獲得できるチャンスが生まれたのだ。

さらに、「Play to Earn」の仕組みを応用したタイトルとして、2021年には『STEPN(ステップン)』がリリースされた。このBCG は、「デジタルスニーカーNFTを保有した状態で歩くとトークンを獲得できる」ようになっており、一時は全世界でアクティブユーザーが60万人を超えるほどの流行を巻き起こしている。

上記の内容からもわかる通り、いわゆる“ゲーム”というよりも健康アプリに近いものだが、そこに暗号資産やNFTを組み合わせることで、まったくあたらしいサービスとして人気を博した。

非常に簡潔にBCGのこれまでの経緯を紹介したが、「NFT の取引」と「ゲームプレイを通じたトークンの獲得」、そして「ゲーム内資産と現実の資産が交換できる」というのが、現在のBCGが備える主要な魅力であるといえるだろう。(なお、このほかにも「NFTによってデジタルデータを所有・取引する」という体験や、「ゲーム内資産の価値が現実の価値と連動して変わっていく」といったように、従来のゲームには存在しなかったあらたな体験や仕組みが数多くあるため、上記だけがBCG のすべてというわけではない点には注意してほしい)

ブロックチェーンゲームを取り巻く現状

そんなBCG は、暗号資産を始めとしたWeb3.0に関心を持っている投資家を中心に、大きな注目を集めている。その理由は、いうまでもなく資産を増やせる可能性があるからだ。つまりBCGはゲームであり、投資でもあるといえるだろう。

ただし、従来のゲーム業界に比べればそのユーザー数はまだまだ少ない。現状では、ほんの一部の人たちだけが注目しているものといえるだろう。

また、BCGはWeb3.0業界(ブロックチェーン関連のサービスに関わっている企業や人)からも期待されている。Web3.0という言葉が一時日本でも話題になったが、現在でも暗号資産を始めとしたブロックチェーン技術が社会に広く受け入れられているとはいえない状況のなか、ゲーム=BCG がWeb3.0の魅力を広めるきっかけになるかもしれないからだ。

そもそもブロックチェーンをベースにした代表的な発明といえる暗号資産は、インターネット上で「価値の交換」を可能にした発明であるとも評されており、金融分野と強く結びついている。そのため、今のところはWeb3.0業界では資産の交換や保全、あるいは投資といった金融分野のサービスが中心となっているのだ。

しかし金融分野だけではWeb3.0の世界観を社会に広く伝えることは難しい。そこで、多くの人にWeb3.0を伝える役割を、エンタメであるゲームが担えるのではないかと期待されているのが現状である。

今のブロックチェーンゲーム市場は成長前のモバイルゲーム市場かもしれない?

では、そんなBCGを開発しているのはどのような企業なのか。当初は、上記のようなWeb3.0業界の企業が中心となっており、『アクシーインフィニティ』や『STEPN』の開発企業も従来のゲーム業界での実績はまったくないが、BCGタイトルの成功によって莫大な収益を獲得している。

そして近年では、このようなWeb3.0業界出身といえる企業に加えて、従来のゲーム業界で活躍してきた企業たちもBCGに参入し始めている。BCGをゲームの一種であると考えれば当たり前のように思えるかもしれないが、過去数年にわたって新興市場として賑わい、多くの企業が成功を手にしてきたモバイルゲーム業界が、最近になってレッドオーシャン(=稼ぎにくい市場)になってきたことも無関係ではないだろう。

かつてソーシャルゲームやスマートフォンアプリ市場の黎明期には、いち早く参入した新興企業たちが成功を収め、一気に会社の規模を拡大した。仮にBCGがこれからソーシャルゲーム市場のように爆発的に成長するのであれば、そこに参入しておくことは、ゲーム会社が当然とるべき選択肢となるはずだ。

しかも、現在のBCG の開発規模は、コンシューマゲームなどと比べればはるかに小さい。BCG が大規模な市場へと成長するのかは未知数だが、仮にうまくいかなかったとしても、損失はそれほど大きくならないといえるだろう。つまりBCGは、比較的ローリスクでハイリターンを得られる可能性がある市場とみられているのだ。

このように、それぞれの思惑が重なり、にわかに市場が盛り上がりつつあるというのがBCGの現状である。

Column

NFTとは、「偽造できない所有証明書」及び「偽造できない証明書付きのデジタルデータ」のことで、暗号資産と同じく、ブロックチェーン上で発行・取引されるもの。わかりやすくいえば、ゲームのキャラクターや武器のようなデジタルデータに「これは唯一無二である」という証明を付与し、それを取引できるようにする仕組みである。

これにより、ブロックチェーンゲームではゲーム内のデジタル資産をほかのプレイヤーと取引可能になる。取引には暗号資産が使われ、暗号資産は日本円にも交換できるようになっている。

2018年にリリースされた『アクシーインフィニティ』(開発:SkyMavis)は、ゲームプレイを通じてトークンが獲得できる仕組みを生み出した。

2021年にリリースされた『STEPN』(開発:FSL)は、NFTを保有して歩くだけでトークンを獲得できる仕組み「Move to Earn」を生み出して広めた。

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