労働環境は? 収入が高い職種は? 中国のゲーム会社は脅威なのか?そんな気になる話を、ゲーム業界のなかの人に語ってもらった。
改善されつつあるゲーム業界の労働環境
衛藤:今日は、ゲーム会社の内情について、内部にいる人の視点で話をしよう、という集まりです。
森本:特殊な業界なので、外からみているとわかりにくいですからね。
衛藤:というわけでさっそくですが、ゲーム業界はブラックだなんてよくいわれますがどう思いますか?
森本:一般的な尺度で考えたらブラックなんじゃないですかね。たぶん衛藤さんが昔働いていた某大手ゲーム企業も含めて、単純な労働時間はたいてい8時間では収まりませんよね?
衛藤:そうですね。基本的には裁量労働制のような仕組みになっていて、労働時間も結構長かったという印象があります。ただ、私がいた会社だけかもしれませんが、長時間労働を強制されて苦しんでいる、という人はあまりいなかったように思います。
どちらかといえば、会社にいる間はかなり自由に時間を使えて、合間に休憩所のようなところで雑談したり、新作のスマートフォンゲームをチームの皆で遊んであれこれと意見を交わしたり、という感じで楽しく過ごしていたように思えます。
もちろんリリース間近になるとパソコンに張り付いて深夜まで働くこともよくありましたが、それでもやっぱり楽しかったという印象の方が強いですね。
森本:私がゲーム会社に入った頃はさらに長時間労働だったのですが、それでもやはり楽しかったという印象が強いです。この感覚は、たぶん基本的にゲーム会社で働く人はゲームが大好きだから、という理由が大きいのでしょうね。
衛藤:それは間違いないと思います。周りもゲーム好きだらけなので話していて面白いし、自分が携わっているゲームが完成していく時の興奮は今でも言葉にできないですね。悪いいい方をすればやりがい搾取みたいなことなんでしょうけど、こっちとしては、私のやりがいをいくらでも絞り出してくれ、とすら思います。
森本:今の時代、そんなの普通は許されませんけどね(笑)。それと同時に、最近は本当にゲーム業界の労働環境は改善されていて、自分の限界を超えてまで働かせられるようなことはほぼない、ということを読者の方には伝えておきます。ただし、かなりのゲーム好きじゃないとおそらく耐えられない環境でもあるとは思いますが。
衛藤:そうですね。実際、私の周りにも「自分はかなりのゲーム好きだと思っていたけど、ゲーム会社に入ったら全然普通の人レベルだった」という感想を抱いてやめていく人もいました。
なのでこの話は、「一般的な尺度で考えればブラックだけど、やりがいを持てる人にとっては充実した環境」といったところですかね。そういえば、ゲーム業界の特殊な労働環境といえば、正社員はあまりいなくて契約社員が多いですよね?
森本:そうですね、大手ゲーム会社でも半分以上が契約社員という部署も珍しくないと思います。というか、正社員になっているのは新卒入社で入った人と、ヒット作を作った人、それから他社で実績をあげて転職してきた人くらいじゃないですかね?
普通の求人募集に応募してきたような人は、ほぼ例外なく契約社員からスタートということになっている会社が大半です。
衛藤:私が新卒で入った会社もそうでした。ただ、社内で正社員なのか契約社員なのかを気にしている人はあまりいませんでしたね。もちろん、「正社員になってやる」という熱い気持ちを持っていた方もいたとは思いましたが、そもそもほとんどの人が契約社員なので気にならない環境ではあります。
森本:ゲーム業界はとにかく人の出入りが激しいですからね。もちろん、経営側にとって契約社員の方が都合がいいという理由もあるのでしょうが、ある意味気楽にやめられる状態でいる方がいいという人も多いと思いますよ。
ただ、契約社員で数年間過ごしてゲーム業界をやめることになったら、キャリアとしてはほとんど価値がないという評価になるのも事実なので、ゲーム業界に入るならある程度の覚悟は必要でしょうね。それこそ、「自分にはあっていないな」と感じたらすぐにやめた方がいいと個人的には思います。