コロナ禍の巣ごもり需要などを受けて市場規模は拡大し続けているものの、予算・スケジュールの大規模化によりゲーム会社にとってはハイリスクな市場になっている。
コンシューマーゲームの今と今後
コンシューマゲームとは、ニンテンドースイッチやプレイステーションといったゲーム専用ハード及び専用ソフトのことである。かつてはゲームといえばコンシューマゲームだったが、近年ではスマートフォンゲームやPCゲームの勢いに押される形で、存在感を失いつつあるようにみえる。
しかし、コンシューマゲーム市場は過去10年にわたって市場規模を拡大し続けており、特にコロナ禍以降はさらにその勢いを増している。スマートフォンゲームやPCゲームの隆盛に比べれば派手ではないが、着実に拡大し続けている市場でもあるのだ。
2023年の国内市場規模は前年比7.8%増の4,039億円と推計されている。うち、専用ハードは前年比27.5%増の2,675億円で、ニンテンドースイッチが4,06万台、プレイステーション5は前年の2倍以上となる259万台を販売した。
ソフトをみれば、国内売上ランキング上位は10位までをニンテンドースイッチが占めている。なかでも『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』は192万本の大ヒットとなり、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』(154万本)と『ピクミン4』(111万本)もヒットした。
一方、2024年に入ってからは昨年ほどの大ヒットは生まれていない。7月時点では『ファイナルファンタジーVII リバース』(プレイステーション5)の34万本が売上ランキング1位となっており、以下新作タイトルとしては『桃太郎電鉄ワールド』、『ペーパーマリオRPG』(ともにニンテンドースイッチ)と続く。昨年に比べれば新作タイトルの売上は減っている数字となっているが、これはコンシューマゲームの特性として仕方ない面もある。
コンシューマゲームの開発は年々規模が拡大し、予算やスケジュールも膨大なものになっているからだ。
かつては1年から2年程度で開発していたタイトルが多かったものの、近年では3年以上かかるのが当たり前になり、AAAタイトルと呼ばれる大規模開発では7年、8年とかかることも珍しくない。そのため、毎年コンスタントに大作を投入できる企業はほぼ存在せず、数年おきにAAAタイトルを投入する形になっているのだ。
また、先ほども述べた通り開発費も年々高騰しており、全世界で1億8,000万本以上の売上を記録した『グランド・セフト・オートV』の開発費は約250億円。これほどの大予算ではなくとも、数十億円規模の開発費を投じることは当たり前になっている。
そのため、ゲーム会社によるコンシューマゲーム開発は“一球入魂”を数年おきに繰り返す、というサイクルになっていることが少なくない。その結果、完全新規IPを作るよりも人気IPの続編や派生作品をリリースした方が、売上の予測が立てやすくリスクも抑えられるため、近年の新作はその多くが既存シリーズの続編となっている。
そして、中規模予算でのソフト開発は非常に少なくなっており、コンシューマゲームのソフト市場は二極化している。ゲーム会社による大規模予算のAAAタイトルと、個人開発者らによるインディーゲーム系である。インディーゲームのヒット事例としては、昨年ニンテンドースイッチ向けソフトとして600万ダウンロードを記録した『スイカゲーム』があげられるだろう。本作はゲーム実況配信などで人気に火が付き、またたくまに大ヒットした。
ニンテンドースイッチの後継機が今期中に発表予定
今後も二極化は続く可能性が高く、誰もが知る有名IPの続編が1年間に数本販売され、まれにインディーゲームなどからスマッシュヒットを飛ばすタイトルがあらわれるという形になるだろう。中規模な予算で開発する場合は、比較的安価で開発できるスマートフォンゲームなどの方が成功確率が高いという認識が広まっているため、今後も当分はこのような二極化構造が続く可能性が高いはずだ。
ただし、来年に向けてさらにコンシューマゲーム市場が盛り上がる要素もある。任天堂が、今期中にニンテンドースイッチの後継作に関して発表することを明かしているからだ。
2017年に販売したニンテンドースイッチは現在も売上好調だが、新ハードの登場によって市場にどのような変化が起きるのかは要注目だろう。コロナ禍以降に巣ごもり需要からユーザーを拡大してきたなか、さらにコンシューマゲーム市場を盛り上げる起爆剤となることを期待したい。
コンシューマーの現在と未来
- 予算・スケジュールともに巨大化しており、開発に7年以上かかるタイトルも少なくない。
- AAAタイトルとインディーゲーム系という二極化が進み、新規IPタイトルや中規模予算タイトルは減少している。