「MetaQuest」や「PS VR」などのヘッドセットを用いたVRゲームが一時注目を集めた。
果たして、VRゲームはゲーム市場のあらたな戦場になるのだろうか。
あらたなゲームの形として注目も将来性は未知数
VRとは、「Virtual Reality(バーチャルリアリティー:仮想現実)」の略称で、仮想空間をまるで現実のように体験させる技術の総称である。現時点ではヘッドセットを装着して、デジタル画面をまるで現実であるかのように体験できるものが、VRとして普及し始めている。そのなかでも、ゲーム体験向けに作られたものがVRゲームである。
Meta社が開発した「MetaQuest」や、プレイステーション向けのヘッドセット「Play Station VR」などがすでに販売されており、それぞれの対応ソフトもリリースされている。
このVRゲームを、ゲーム市場の次のブルーオーシャンであると考える識者やメディアは少なくない。たとえばGrand View Researchが発表したゲーム市場に関するレポートでは、VRゲームの市場規模は、2023年~2030年にCAGR22.7%で成長し、2030年までに約1,095億ドルに達する見込みであるとしている。
ちなみに、2023年時点のゲーム市場全体の市場規模が1,600億ドルなので、この予想によれば2030年にはその3分の2程度の規模にVRゲーム市場が単独で成長しているということになる。
しかし、このような予想は、現状ではあまりにも楽観的な期待に基づいたものであるというしかない。ヘッドセットやVR対応ソフトについてはまだ市場が十分に形成されているとは言い難く、その売上規模も少ないデータから予測するしかないが、今のところ上記のような爆発的な成長は起きていないことは間違いない。
たとえば2023年10月に、Meta Questストアの累計収益が20億ドルに達したという。しかし、同時に直近12ヵ月の収益ペースは減少しているとも報じられている。20億ドルという数字の評価は見方によって変わるが、少なくとも1,095億ドルの市場規模に程遠いことは間違いないだろう。しかも収益ペースが減少しているということは、勢いが衰えている可能性すらあるのだ。
いずれにしても、今のままでVRゲームが突如成長するようなことはないだろう。ゲーム市場では、どの分野であってもまずヒットタイトルがあり、それによって市場が成長してきたという歴史がある。たとえばスマートフォンゲームでは、『パズドラ』のヒットによってプレイヤーが一気に増え、開発企業の参入が活性化した。
同じように、VRゲームでも大ヒットタイトルがあらわれない限り、コンシューマやPCゲームに比肩する市場規模へと成長することも難しいだろう。もちろん、このような状況をチャンスであると捉えて参入しているゲーム会社も存在するため、彼らが大ヒット作を作り上げることに期待しよう。
VRゲームの現在と未来
- ヘッドセットは続々と発売されており、装着感やスペックは改善され続けている。
- 一時期は急激に成長するという予測もされていたが、その勢いは衰えており、ヒットタイトルもほぼ生まれていない。市場規模を拡大するためにはヒットタイトルの登場が必須。
ゲーム実況動画は是か非か?
近年、ゲームの実況動画は、動画プラットフォームにおいて人気コンテンツになっている。『フォートナイト』などのeスポーツ的タイトルだけではなく、『マインクラフト』のようなゲームも、配信タイトルとして人気が高い。
そこで気になるのが、ゲーム実況動画は果たしてゲーム市場にとってプラスなのか、という問題である。動画配信がプロモーションになるという意見もある一方で、ネタバレなどによって購買意欲を削いでいるのではないかという考えを持つ人も少なくない。
この問題についてはゲーム業界においても賛否がわかれるところだが、プロモーションの一環としてゲーム実況が重要な地位を占めるようになっていることは間違いないだろう。