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CoinPostとWebXを率いるキーマンが語る業界の“現在地” 各務貴仁氏と青木誠氏独占インタビュー

2024/07/29Iolite 編集部
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CoinPostとWebXを率いるキーマンが語る業界の“現在地” 各務貴仁氏と青木誠氏独占インタビュー

Web3.0領域の行く末を左右する分かれ道を見定めるポイントとは——

国内最大規模メディアが抱く信念、そして2回目の開催となるアジア最大規模カンファレンスのみどころに迫る

——お二人がWeb3.0領域に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

各務貴仁(以下、各務):私はもともと金融系の仕事をしていたこともあり、2016年頃にビットコインの存在を知りました。その後、当時世界で最もビットコインの取引が盛んだったのが日本であったということや、マイニングなどに関心を抱いたことがきっかけでこの領域に足を踏み入れました。

あとは、グローバル市場で金融のやり取りをする際、既存の手法に煩わしさを感じていたことも大きかったです。

たとえば私自身、留学していた時に国際送金でストレスを感じる場面が多々ありました。当時も今も、暗号資産はボラティリティが大きく、金融領域での決済に向いているとは一概にいえません。それでも、価値移転という部分で取引のしやすさが従来と比べて高いことは事実ですし、海外にいたからこそ便利な側面を体感できたのだと思います。

青木誠(以下、青木):僕は2018年に当時インターンで入った会社がたまたまクリプト事業をあらたに立ち上げたのが始まりです。ちょうどその時期にバイナンスのVC部門である「バイナンス・ラボ」が初期投資を行うタイミングで、僕が入った会社のプロジェクトがたまたま選ばれたんです。

その会社自体はスタートアップでありながら、ある程度規模が大きい会社でした。Web3.0領域の事業をグローバルに展開していたこともあり、これまでのビジネスにないボーダーレスな世界観を味わえて面白いなと感じたのがこの領域に注力しようと思ったきっかけですね。そこから縁があり、CoinPostに入社しました。

CoinPost入社後は、自分の強みであるビズデブや営業力を活かすポジションに就きました。これまで日本市場に興味を持つ海外のクリプトプロジェクトはいくつもあったのですが、環境や言語の壁などがあり全然日本には来てくれませんでした。こうした状況をどう打開するのかという点にフォーカスしてカンファレンスなどに参加し、実際にプロジェクトをキャッチアップしたりすることは現在も続けていることです。

CoinPostの強みは人材からなる「組織力」

——CoinPostは今や国内最大規模のWeb3.0メディアとして知られていますが、その最大の強みを教えてください。

各務:メディアと組織体制でそれぞれ強みがあると考えています。

まずメディアでいえば、ユーザーが情報を得るために、我々が“フィルター”として機能している点に強みを感じています。この領域の情報は無限にありますので、ユーザーとしては取捨選択が難しいと思います。

また、どのような情報が必要になり、それがどのように関連しているものなのかなど、クリプトに携わっている方々は不確実性やストレスを感じていることと思います。そうした課題を解決できるだけのポテンシャルがあるというのは、CoinPostというメディアの強みだと思います。

組織体制でいえば、グローバル人材を中心にチーム作りを行っていますので、多言語に対応できる点や、良い意味で日本企業らしくない社内風習もプラスに働いていると捉えています。フットワーク軽く海外に行ったりもしますし、クリプトの情報を追いかける志の高いメンバーが集まっている点も強みといえるでしょう。

青木:僕自身も信頼性や情報の網羅性、またフィルターとしての役割というユーザー視点での強みがCoinPostにはあると思います。

ビジネス的な側面でも、国内外のWeb3.0メディアと比べてさまざまな国で開催されているカンファレンスなどに足を運んでいる自負があります。こうした日々の取り組みが海外とのコネクションであったり、信頼性を構築することにつながっています。

ですので、CoinPostの最大の強みは人材かなと僕は思っています。それはメンバーそれぞれの知的好奇心の面もそうですし、日本では得られない情報をメディアや会社の事業として活用できているかなと思いますね。

Web3.0はマーケットとビジネスの両面で重要な“転換期”に

——お二人は現在のWeb3.0領域がどのようなフェーズにあると捉えていますか?

各務:マーケットにおいてもビジネスにおいても、重要な転換期にあると思っていて、まさに今、ここが分かれ道になると捉えています。

たとえば産業や米国で承認され注目されている暗号資産の現物ETFなど、Web3.0技術がいわゆる一般産業に今、落とし込まれつつあります。

そうしたなかで、日本を始めとした各国政府によるこの領域へのアプローチも活発になってきています。国策にするかどうかは各国政府の方針次第でしょうが、いずれにしてもWeb3.0を産業として位置付けるかについては、ビジネス的に重要な局面にきていると思います。実際、香港やシンガポールなどでは力を入れている様子がうかがえます。

産業を育てていくという面では国の支援が非常に重要となります。企業に対して何らかの優遇措置を設けるなどして産業支援を行うことが今後のカギとなるでしょう。

私自身も現在、経産省のWeb3.0に関するアドバイザリーボードに参加していますが、そこでも国から予算をいただくにはユースケースであったり、成果をどれだけ出せるかといったところがポイントになると感じました。そうした意味でも、今後2年の取り組みがこの領域にとって重要になると考えています。

青木:現在のWeb3.0領域は過渡期にあります。これまでもさまざまな場面で過渡期といわれてきましたが、その性質は異なります。

たとえば、「DeFiサマー」と呼ばれた時期が過去にありましたが、あれはもともと金融領域や投資に興味のある方々を中心にリーチしていき認知が広がっていきました。つまり、コアな層の間で盛り上がりをみせていたということです。

ですが、2022年頃から現在にかけてはNFTブームなども相まって、一般層に向けての普及が始まりました。今まではブロックチェーン、暗号資産に対して悪いイメージが先行していたかもしれませんが、徐々にその技術が実社会で必要なものであると認知されてきて、スタートアップ主導であったものが、国内外問わず大企業にも広がりつつあります。

こうした状況を踏まえれば、Web3.0は本当の意味でマス層への広がりに向けた過渡期に差し掛かっていると思います。

特に日本やアジア市場は、欧米と比べてもWeb3.0の普及に向けたイネーブラー企業の参入が増えています。

たとえば現在、NTTドコモさんがWeb3.0領域へ6,000億円もの資金を投入すると意思表明を行なったり、攻殻機動隊とSTEPNのコラボのように、人気IPとWeb3.0プロジェクトのコラボも実現したりなど、一般の方々にも広く認知されている企業が参入していますよね。こうした形で、やっと一般の方々にもWeb3.0が使われるようになっているという意味で過渡期にあると考えています。

——今ではAIブームによってWeb3.0からAIへと軸足を移す方も少なくないと思いますが、その辺りはどのように捉えていますか?

青木:日本と海外で比べると、やはり海外の方がAIに注力する傾向は強いのかなと感じますね。特にVCによるお金の流れなどではそれを強く感じます。これまでは暗号資産領域に投資をして多くの利益を狙っていたかと思いますが、ROI(投資利益率)という面では実際AIの方がいいんじゃないかという風潮が強まったことも要因としてはあると思います。

一方、日本ではWeb3.0を国策として進めようという動きもありますし、海外に比べるとAIに軸足を移すという動きは落ち着いている印象です。昔ですと、暗号資産市場が落ち着いているとカンファレンスなども閑散としていました。しかし、最近ではたとえ暗号資産市場の動きが芳しくなくてもたくさんの人がいますし、マーケットがボラティリティに左右されることなく成熟化してきた証拠かなと感じています。

——昨年、アジア最大級のWeb3.0カンファレンス「WebX」が開催されましたが、当初どのような背景・目的から企画をされたのでしょうか?

青木:背景・目的としては主に3つの要素があります。まず1つは、「グローバルとの窓口を置くこと」です。日本では政府がWeb3.0を進めていく意欲をみせるなどポジティブな状況ですが、グローバルチャネルがないという課題があります。

現時点のWeb3.0領域は、ほかの業界と比べてもそうした窓口やつながりが重要になります。なおかつ、日本からさまざまなプロダクトがリリースされつつある状況なども加味すると、海外への情報発信がカギを握ることになるでしょう。こうした状況、課題を踏まえ、まずは日本から海外に情報を発信できる場を作りたいという目的がありました。

2つ目は、「グローバル企業による日本進出のきっかけ作り」です。日本では2018年に発生した大規模な不正流出事件を契機として、「空白の5年」が訪れていたと個人的に感じています。

しかし、その間に暗号資産取引所FTXの破綻などが相次ぎ、一方で日本市場では規制整備を行なっていたことで顧客資産が守られたという実績から、再び日本進出を検討するグローバル企業も増加しつつあると感じています。

そうした時に、やはりオフラインで直接目に触れて体感してみる場があるというのは、日本企業とグローバル企業双方にとってプラスになると考えました。

最後に3つ目は、「マス層にWeb3.0を広げていくこと」です。これまでの業界イベントというと、どちらかといえば短期的なトレンドを捉えるものが多かったのですが、Web3.0という技術を届けるには長期的にマス層へ届ける意識を持ってイベントを開催する必要があると感じていました。

ですので、Web3.0領域の方々だけでなく、それ以外の幅広い層の方々がこの領域に興味を持つきっかけになるようなセッションやスピーカーを用意するよう心がけています。

——そもそもですが、WebXを最初に立案したのはどなたですか?

青木:僕ですね。きっかけは2年前に開催された業界カンファレンス「Token2049」でした。当時1人で参加したのですが、その頃のイベントというとどこに行っても同じ人がいて、どこかで同じ人たちが交流をしているような閉鎖的なものばかりでした。

こうした状況をみて事業にしたら成功するだろうと思いましたし、これを誰かがやらなかったら日本の失われた時間というのはダラダラと続いてしまうと感じてすぐ企画書を書きましたね。それから昨年は準備期間約7ヵ月で開催に至りました。

各務:最初は1,000人規模のイベントを想定していたのですが、結果的にスケールしていき大規模なものとなりました。政府関係者の方々にも協力していただき、Web3.0に対する需要も感じましたね。

WebXのメインテーマは「Web3.0の社会実装に向けた議論」

——今年もWebXが開催されますが、昨年からパワーアップした点や注目ポイントを教えてください。

:WebXのメインテーマは「Web3.0の社会実装に向けた議論」ですので、基本的には昨年と比べどのようにカンファレンスの質を上げ、規模を大きくしていくかというところに注力しています。

規模というところでは昨年と比べてスポンサーの数も増えており、今年は180社前後となる見込みです。また、セッションに関してもスピーカーの数が増えますし、昨年よりも内容の濃さという点でパワーアップしていると思います。

各務:WebXに限らずですが、Web3.0という不確実性の高い領域に信頼性をもたらしたいという想いが私たちにはあります。ですので、会社としてはこの領域の秩序を形成する取り組みを重要視しています。

たとえばメディアサイドにしてもWeb3.0領域は情報のカバレッジが金融領域のなかでも圧倒的に欠けているのが現状です。暗号資産銘柄の情報を1つとるのも難しい場合があります。

投資家も情報がなかなかとれないなかで投資判断を行うのは厳しいでしょうし、将来的に暗号資産ETFを作るとなった際にもレポーティングのハードルが高くなると思います。こうした現状を私たちは改善していきたいと考えており、情報を幅広く拾うことが信頼できるプロジェクトを可視化することにもつながると思います。

一方、カンファレンスサイドでも同様のことがいえ、Web3.0領域の関係者だけが集まっても、外部からみたらその信頼性・信憑性はブラックボックスになっていてみえないでしょう。私たちは日本を始め米国、中国など、グローバルの政府関係者を招待し、対話する場を設け、産業としてWeb3.0領域に参入したいと考える方々を後押ししたいと考えています。

——各務さんのお話から「信頼」という言葉の重みを感じたのですが、各務さんの思う信頼性を測る上で重要視することとはなんですか?

各務:個人ユーザーの目線でいうと、そのプロジェクトに外部のデューデリジェンスを行っている組織が入っているかが信頼性を見分けるポイントだと考えています。信頼性がないと動けないインベスターや取引所関係者もいますので、どこが関わっているプロジェクトなのかというのは気にした方がいいでしょう。

もちろん外部のデューデリジェンス組織が入っていないから信頼できないというわけではありませんが、プロジェクトに対して前向きな見方がしやすくなる要素となります。

——2回目の開催となる今年のWebXで最も重要視していること、また目標として定めているものがあればお聞かせください。

青木:まず今年は昨年以上に面白いセッションを届けたいなと考えています。ほかのカンファレンスなどでは「この人はこの話をするよね」と形骸化したものもあるかと思いますので、そうではなく意外性のある内容や対談の組み合わせなどを意識しています。

あとは、海外で注目されていたり、これまで日本に来てくれなかったプロジェクトなども誘致していますので、その辺りも注目してもらえればと思います。

各務:セッションに関しては一見すると意外にみえる組み合わせを昨年以上に増やしていきます。また、ナショナルクライアントを増やしていきたいという意図もありますので、その辺りも意識してセッションを組んでいきます。

昨年もそうなのですが、50%ほどは一般産業の事業者様が参加されたので、そうした裾野を広げていくところにフォーカスしていきたいと考えています。ですので、セッションも一概にWeb3.0オンリーにこだわっていなくて、AIや株、資産形成など、最新テックやあらたな資産形成の形をテーマに組んでいき、幅広い方々が足を運んでみたいと思えるような内容にしていきます。

——最後に、WebXの開催に向け意気込みをお聞かせください。

青木:セッションや海外プロジェクトの誘致など、とにかくこだわりをもってカンファレンスを構成していますので、少しでも興味のある方にはぜひ参加していただきたいです。

また、WebXの開催期間中はさまざまなプロジェクトによるサイドイベントなども実施されますので、そうした場にもぜひ足を運んでいただき楽しんでもらえるとうれしいですね。

各務:私個人としてもこの業界をより地に足着いた形になるようサポートしていきたいという想いがありますし、産業として伸びていくことで私たちのビジネスも伸びていく互換関係にあると考えていますので、いかに技術の可能性や興味を抱いてもらうかが重要となります。

そのためにも、ほかでは聞けないトピック、私たちだからこそ作り上げることができる空間作りを強化して面白いカンファレンスにしていきたいなと思います。


Profile

各務貴仁(Takahito Kagami)

株式会社CoinPost代表取締役CEO
株式会社SUDACHI Tech代表取締役

高校卒業後アメリカ、カナダへ4年間の留学を経験。2017年7月より仮想通貨・ブロックチェーン専門メディアCoinPostを立ち上げ編集長となる。また、2018年よりCoinPostのCEOに就任後、ブロックチェーン×福祉、映画、カンファレンス、グローバルメディアなどの複数の事業拡大を行う。

青木誠(Makoto Aoki)

株式会社CoinPost取締役CSO
WebX代表理事

2017年より仮想通貨関連事業に携わり、2022年に正式にCoinPostに参画。現在は、WebXのFounderとしてカンファレンス事業を牽引しつつ、CoinPostの取締役CSO(ChiefStrategy Officer)を務める。

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