Web3.0

「STEPN GO」の誕生秘話 FSL共同創業者ヤン(ヨーン)・ロン氏インタビュー

2024/07/29Iolite 編集部
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「STEPN GO」の誕生秘話 FSL共同創業者ヤン(ヨーン)・ロン氏インタビュー

人気ゲーム「STEPN」を生み出したFSLが見据える次なる戦略とは?

Move to Earnを確立させた人気Web3.0ゲーム「STEPN」。

その後続タイトルとなる「STEPN GO」を発表したFSLの共同創業者であるYawn氏に、同タイトルの特徴や今後の展望、また日本での展開について迫った。

——6月にリリースされた「STEPN GO」の特徴と「STEPN」との差別化について教えてください。

Yawn Rong(以下、Yawn):ベースは似ていますが、内容は異なります。

まず、「STEPN」ではプレイしてユーティリティトークン・GSTを得るために必要なエナジーが6時間ごとに回復していました。しかし、「STEPN GO」で得られるユーティリティトークンはGGTとなり、さらには回復のためにスニーカーをバーン(焼却)する必要があります。

そのため、これまで以上にスニーカーの数が必要となり、「STEPN」と比較した際の最大の変更点であると思います。同時に、この仕組みを導入することでスニーカーの価値が一定に保たれやすくなります。

次に、「STEPN GO」ではスニーカーの貸し出し機能である「Haus System(ハウスシステム)」を導入しました。これはWeb3.0についてあまり詳しくないユーザーを意識したものです。

「STEPN」では、ユーザーのオンボーディングに課題を抱えていました。ユーザーがプレイするためにNFTスニーカーを購入したり、ウォレットのシードフレーズを覚える必要があるなど、初心者にとっては参入障壁が高いです。これらに加え、「STEPN」を始めるためには紹介コードである「アクティベーションコード」を友人たちから得なければいけないこともあり、プレイまでの道のりがシンプルとはいえません。

だからこそ、私たちのチームは時間をかけて何度も議論しました。そうして導入されたのがハウスシステムです。また、「STEPN GO」ではメールアドレスを使用し「FSL ID」を取得することで、シードフレーズが不要となります。これにより、潜在的なユーザーを大幅に増やすことが可能となりました。

さらに、ソーシャル機能とインタラクティブマップもあらたに導入しています。ユーザーは自分の 3D アバターやアウトフィット(衣装)をカスタマイズしてインタラクティブマップ上でほかのユーザーに個性をアピールすることが可能になります。これもユーザーの参加率を増やすことにつながるだろうし、楽しみの1つになると信じています。

なお、衣装を作成するにはGGTが必要になります。これもトークンの長期的な需要を生み出すことが可能な仕組みの1つですね。特にコスプレ文化がある日本のユーザーは本当に楽しんでくれる要素だと思います。

現在、「STEPN GO」ではNFTスニーカーが抽選であたる「Alpha Draw(アルファ・ドロー)」を開催(6月19日~7月19日)しています。これは抽選で3つのNFTスニーカーがあたるというキャンペーンです。

アルファテストとベータテストは、このキャンペーン終了後に開始します。このインタビューが掲載される頃にはもう開始されているでしょうね。

ほかにも、「STEPN GO」ではさまざまな機能を追加しています。たとえば、ミステリーボックスの仕様にも変更が必要であると認識し、「STEPN GO」では「Raw Stone(ジェムの原石)」を開発、実装しました。これはミステリーボックスのドロップに影響する「Luck(運)」に影響を与えるため、「STEPN GO」からあらたに「Karma(カルマ)」「Charm(チャーム)」も導入しています。

カルマは、これもあらたに導入したプレイヤー対プレイヤー(PvP)モードでの獲得報酬量に影響を及ぼす属性で、カルマが高いほど報酬が増えます。また、チャームは衣装をつくるために必要な衣装の欠片を集める際に使用する要素です。

——FSLはすでに「STEPN」をリリースし、非常に人気であるにもかかわらず、なぜ「STEPN GO」を開発することにしたのですか?

Yawn:2023年に「STEPN」のバージョンアップグレードとして、当初フェーズ7と8を計画していました。これはいわば「STEPN GO」のプロトタイプです。

フェーズ7のアップグレードでは、あたらしいエネルギーシステムやフィットネスシステムなど、アプリ内エコノミクスに対処するための追加機能を追加することを目指していました。フィットネスシステムは、人々に定期的な運動の習慣を身につけさせることを目指しており、1日10分以上の運動を続けると報酬が与えられるといったものです。

また、フェーズ8のアップグレードでは、当時は方向性が見出せていなかったソーシャル機能を追加で実装することを目指していました。その際に懸念事項であったのは、新機能を続々と導入し、既存の「STEPN」ユーザーに大きな影響を与えることでした。

そうすると、アップグレードをしすぎてユーザーを困惑させないよう、慎重に作業を進めなければならない。しかし、このバランスを保ちながら「STEPN」のビジョン・ミッションを達成することは不可能であると判断し、あらたなゲームとして「STEPNGO」の開発に踏み切ったのです。今後、「STEPN」ユーザーを徐々に「STEPN GO」にオンボードしていく予定です。

——FSLは「STEPN GO」のリリースを通じて、ユーザーにどのような価値を提供していきますか? アクティブユーザー数など具体的な目標も教えてください。

Yawn:私たちはゲーミフィケーションの楽しさや友情、健康な体と心など、長期的な価値提供を目指しています。これはゲームの構造やNFTによって達成できるものと考えていますが、現状の「STEPN」に欠けている要素です。

その上で、「STEPN GO」では「STEPN」と比較してユーザー数を10倍にできると考えています。つまり、ユーザーを500万人から5,000万人に増やせる自信があります。運がよければ1億人のユーザーを獲得することもできるでしょう。5,000万人のユーザーを獲得するには、6ヵ月から9ヵ月ほどの期間を要すると思います。

先ほども説明した通り、「STEPN GO」ではハウスシステムやプレイ開始までの準備を簡素化したことも自信につながっています。

ハウスシステムでは、スニーカーを貸し出すホストユーザーはゲストとして5人をハウスに招待することができます。ゲストは2~4週間ほどホストユーザーからスニーカーを借り、その後ハウスにとどまるか、抜けるかを選ぶことになります。

仮に抜けることをゲストが選択した場合、招待できる枠が1つ空きますよね。そうすると、ホストユーザーはゲストユーザーを招待しようとするはずです。それはエナジーの回復を行うためにスニーカーが必要となるため、より多くのGGTを得る必要があるからです。これが連鎖し、いずれホストユーザーが増えることで、自然とユーザー数は増加していくことが見込めます。

——2月に一度リリースされた「Gas Hero」をなぜベータ版に戻したのでしょうか? また、いつベータ版に戻すことを決めたのですか?

Yawn:NFT資産の質・量とユーザー数の増加が不均衡になったためです。そのため、「Epic」と「Legendary」のレアリティがなかった時点までロールバックし、Web3.0ネイティブではない人たちもプレイできるようユーザー数を調整する必要があると判断しました。

もしこの措置を施さなかったら、一部のユーザーによる独裁的な状況に陥っていたかもしれません。

現在ベータ版では、資産の質・量の増加をユーザー数に対して均衡になるようバランスを調整しています。現在、毎日約50名のプレイヤーがあらたにベータ版に参加していますが、再び一般公開した時には誰もが楽しめるゲームになっていると思います。

——「Gas Hero」の正式版はいつリリースする予定ですか?

Yawn:再リリースの時期はまだ私自身にもわかりませんが、「Gas Hero」のチームは現在、新機能を含め開発に取り組んでいます。

多くのプロジェクトではリリース予定日を発表するものの、実際には遅れる傾向にあります。それでは楽しみに待っていてくれるユーザーたちに申し訳がないため、私たちは準備が整った際に発表し、数日でリリースするスタンスをとっています。

——FSLやYawnさんは日本のWeb3.0市場をどのようにみていますか?また、日本のユーザーにどのようにアプローチする予定ですか?

Yawn:ソニーが暗号資産取引所運営に参入するというニュースからもわかるように、日本では大企業がWeb3.0を重要なセクターとして認識しています。

私は日本におけるWeb3.0領域の本質には2つの側面があると考えています。まず1つは、大企業がインフラを構築する傾向にあることです。これにより、より多くの人たちがWeb3.0領域で開発を行えるようになります。

もう1つは、IPの存在です。インフラ開発には長い時間を要します。その間に、アニメやマンガなどのIPを活用してコラボしていくことがWeb3.0の普及につながります。

私たちもIPとのコラボを通じて日本の伝統的なWeb2.0市場に進出していくアプローチを進めていく予定です。私たちの目的は、Web2.0とWeb3.0という2つの世界の橋渡しをすることです。この2つが混ざりあうことで、双方にとって良い機会を与えることにつながります。

——FSLでは今後も日本の企業や団体と連携していく計画はありますか?

Yawn:もちろんです。日本は私たちにとって重要な市場の1つです。8月に行われるWeb3.0カンファレンス「WebX」の際に再び日本を訪れ、将来のパートナーシップに向けた機会を探る予定です。

——FSLの最大の強みは何ですか?

Yawn:私たちは非常に実践的で、問題を根本から、そして永続的に解決することを目指しています。それを実現することができるポテンシャルを持っています。

また、私たちはWeb2.0とWeb3.0のギャップを埋めることに取り組んでいます。過去3年間、私たちはこの点に注力してきました。最近リリースされたFSL IDと「STEPN GO」は、ギャップを埋めるための1年間にわたる集中的な研究開発の成果です。

私たちはこの7ヵ月の間にFSL IDや「Gas Hero」、「STEPN GO」をリリースしたほか、Adidasとの大規模なパートナーシップ、ガバナンストークンである・GMTの1億GMTに及ぶエアドロップなどを行なってきました。これらはいずれも非常に効率的に実現しており、こうした実績も強みだと思います。

——「STEPN GO」の今後の展望とFSLの短期・中長期の目標を教えてください。

Yawn:「STEPN GO」の短期的な目標は、「STEPN」ユーザーを徐々に「STEPN GO」に誘導し、世界的に高い人気を獲得して、数百万、数千万人ものユーザーを獲得することです。

「STEPN GO」は単一のゲームではなく、2つのアプリがあわさったものです。その2つとは、FSL IDと、FSLのソーシャルプラットフォームである「Moon Base」を指します。

FSL IDによりユーザーは煩雑な設定をする必要がなくなりますし、FSLが提供する「FSLポイント」というロイヤルティプログラムでも役に立ちます。

中期的な目標としては、何百万人、何千万人というユーザーを獲得した後、多くのブランド間コラボレーションを実行し、徐々にFSLIDをWeb3.0のユニバーサルログインとして強化し、FSLポイントをほかのサービスでも使用できるようにすることです。

また、現在Moon Baseの開発に注力しています。Moon Baseは、Apple Vision ProなどのARギアでリリースすることを目指している拡張現実(AR)製品です。

長期的な目標としては、「STEPN GO」で得たGGTと衣装を利用し、トークンを活用した上で、ユーザーが仮想都市を構築してMoon Baseで交流できるようにすることです。これは映画「レディ・プレイヤー・ワン」のような世界観です。その頃には、ARギアが屋外でも使用できるようになっていることを期待しています。

このように、私たちはユーザーを大切にしていくとともに、長きにわたるライフサイクルの価値創出を今後も行っていきます。


Profile

◉ヤン(ヨーン)・ロン(Yawn Rong)

FSL Co-founder

Web3.0プロダクト開発スタジオ、FSLの共同設立者。FSLが開発するさまざまな製品のコンセプト立案、ゲーミフィケーション、トークノミック戦略を担当。革新的なWeb3.0フィットネスゲーム「STEPN」や「STEPN GO」、Web3.0ソーシャルゲーム「GasHero」、NFTマーケットプレイスである「MOOAR」などを手がける。

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