市町村が積極的にWeb3.0事業に取り組み成果をあげている「山形」

日本百名山に選ばれている蔵王や月山、飯豊、朝日、吾妻、鳥海などの山々に加え、母なる川として親しまれている最上川などの大自然に囲まれている山形県。全国生産量の7割を占めるさくらんぼを始めとする農産物も豊かにあり、開湯1900年超になる蔵王温泉や銀山温泉、天童温泉など全国的に知られた温泉地も点在する。

山形県でもさまざまなWeb3.0事業を推進しているが、特に注目したい事業が2023年4月17日に販売開始された山形県西川町のデジタル住民票NFTだ。これは保有すると、西川町のデジタル住民になることができ、同町のオンラインコミュニティに参加することができるほか、水沢温泉館・大井沢温泉館の入浴料が無料になったりするというものだ。

日本の自治体として初の試みである西川町のデジタル住民票に関しては、本項掲載の西川町・町長・菅野大志氏のインタビューをご覧いただきたい。

山形県西川町ではデジタル住民票のほか、デジタルトレカNFTプロジェクトも推進している。月山朝日観光協会イメージキャラクターである「ガッさん」をモチーフにしたデジタルトレカNFTを第1弾として発売しており、同プロジェクトのデジタルトレカNFT第2弾として、西川町の特産品である山菜をテーマにした「山菜トレカNFT」も発売した。

また、山菜トレカNFTの発売に際して自治体公認のクリエイターも一般募集している。西川町公認NFTクリエイターに認定されると、「西川町自治体公認NFTクリエイター証明書NFT（SBT）」が贈られるほか、町長からの感謝状が贈られる。

本プロジェクトの展望としては、西川町のデジタルトレカNFTを使用したデジタルトレカゲームの開発、限定グッズなど、多角的なエンターテインメントを展開予定としている。さらに、西川町では同町に実在する公園の命名権NFTをHEXAにて2023年9月1日～10日にかけてオークション販売した。

この命名権NFTは個人のみならず法人でも落札することができ、命名した公園には実際に看板が設置されるようになる。

これまで紹介した山形県西川町は関係人口の創出のために数々のWeb3.0事業に取り組んでいる。しかし、山形県では西川町のほかにも積極的にWeb3.0事業に取り組んでいる自治体がある。

山形県村山市では、2023年2月12日に東北初のメタバース上での婚活イベント「marry360むらやまバレンタインマッチングイベント」を開催している。このプロジェクトは山形県東根市に本社を構えるS.E.Onetop合同会社と山形県村山市の共催で、その目的は人口流出が進んでいる地方の移住施策のモデルケースとなるべく、地域貢献及び地域おこしの一環として行うものとしている。

その結果、本イベントでは市内外からの男女11名が参加。11人中10人＝5組のカップルが成立し、大盛況に終わった。S.E.Onetop合同会社と山形県村山市は今後も関係人口の増加につながる大きなツールとして可能性を秘めた本イベントを持続可能なイベントモデルのひな形として、Withコロナに向けた地域創生の一助とする考えだ。

日本郵政グループは「みらいの郵便局」に向けた取り組みの一環として、山形県山辺町の町制施行70周年を記念した2種類のNFTアートを販売した。このNFTアートには、山辺町の特産品であるかき氷「すだまり氷」のキャラクター「すだまりんちゃん」と、同じく特産品の「ニット」をモチーフとしたデザインとなっており、「日本郵便NFTマーケットプレイス」にて購入可能だ。NFT収益の一部は山辺町に還元され、今後はNFT購入者が山辺町を訪れた時の特典利用が可能になる予定だとしている。

このように山形県では西川町や村山町などの自治体が積極的にWeb3.0事業を推進して関係人口の創出に成功するなど、一定の成果を収めている。今後も県内の自治体では西川町や村山市をモデルケースとした取り組みが行われていくことが予想される。