スマートフォンを中心とした検索やSNSが1つの完成へと近づき、あらたなビジネスモデルが求められている時代。
フリージャーナリストとして活躍し、「Web3とメタバースは人間を自由にするか」等、数々の著書を手がける佐々木俊尚氏に、Web3.0に対する考え、そして今後の展望について話を聞いた。
——佐々木さんの考えるWeb3・Web3.0の概念とは?
佐々木:去年の暮に出した『Web3とメタバースは人間を自由にするか』でも書いたのですが、『中央集権』と『非中央集権』という話があります。
もともと、インターネットが始まったのが1995年くらいからですよね。それでもはや30年近くが経過しているんですけど、途中で大きなパラダイム・シフト、転換点が2006、7年頃にありました。この頃に『Web2.0』という言葉が出てきたんです。
では、それまでの『Web1.0』とは何だったのか。結局、インターネットが出現したといっても、その双方向性が突然生まれたわけではなかったんです。要するに古い、初期のインターネットにおいては、個人が誰でも自由に発信できるという状況でもなかった。
自分でホームページを作ることはできましたが、それはそれなりのスキルが必要で、そういう状況にSNSやブログサービスが登場し、誰でも発信が簡単に、自由にできるようになった。そういう意味で『Web2.0』という言葉を使っていたと思います。
それまでのインターネットがなかった時代は、テレビや新聞が情報を独占していた、中央集権的な時代であったのに対し、『Web2.0』の時代は情報が自由かつオープンに使える、非中央集権的な時代になった。
良かったよね、と当時はいわれていたけれども、その自由な非中央集権的な時代が永遠に続くかと思ったらそんなことはなかった。
2010年代後半ぐらいから、そのSNSやブログなどのプラットフォーム、いわゆる『ビッグ・テック』日本では『GAFAM』などといわれる企業の力が強くなって、再び中央集権化が進んでしまった。
そしてその背景にはもう1つ、AIの普及があるわけです。AI がすごい勢いで進化して『深層学習』という能力を身に着けたことで、『最適化』という名の大企業のコントロール力をさらに強める形になった。
あまりに中央集権化が進みすぎたせいで、今のビッグ・テックに対しては『監視資本主義』だという批判も起きています。
そうした状況のなかで、ちょうど『ブロックチェーン』という技術があらわれました。このブロックチェーンというのは、誰も情報を独占するわけではなく、あらゆる所に情報が点在し、それをみんなで共有する、そういう仕組みなわけです。
このブロックチェーンを使えば、ビッグ・テックの完全な支配のようなものから脱却できるのではないか、あらたな非中央集権的な世界が作れるのではないか、という所で盛り上がってきたのが『Web3』なのだと思います。
これが一般的な理解だと思いますが、個人的にはブロックチェーンで完全に非中央集権的な世界ができるか、という点に関しては疑問符をつけています。
ブロックチェーンといっても、誰もが平等になるわけではなく、たとえばビットコインにしても取引所となる巨大企業が必要なわけですよね。
そうするとその取引所の企業がどんどん巨大化していくのは間違いないわけですから、その企業が次のビッグ・テックになる。結局、中央集権化はなくならないのではないか、というのが僕の個人的な認識です。