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メタバース
NFT
AI

What's Metaverse “結局、メタバース とはなんなのか?”

Iolite 編集部
2023/03/29

メタバースは“虚構のバズワード”なのか、
“進化したインターネット空間”なのか。

瞬く間に流行語となり広まった「メタバース」。だが実際のところ、「メタバースとはなんなのか?」という問いへの回答は未だみえてこない。結局のところ、中身はからっぽのバズワードであるとの声も聞こえてくる。

そこで、ゲーム・Web3.0に詳しいライターA氏と、メタバースプロジェクトへの投資で大失敗した個人投資家B氏に、「メタバース」の現実を本音で語り合ってもらった。

A氏今日はメタバースについて自由に話し合って良いということで。さっそくですが、そもそもメタバースってなんなのか?という問題がありますよね。この言葉は使い人によって意味が全然違うことも珍しくないので、まずそこから擦り合わせていきたいです。

B氏おっしゃる通りで、意味が曖昧なまま使われていることが多いですよね。個人的には、メタバースという言葉は3つの文脈で使われていると考えています。

最もわかりやすいのは、『ハイクオリティなゲームとソーシャルネットワーク的な人間関係がある3Dデジタルゲーム』です。この場合は、MMORPGなどのオンラインゲームの延長線上にあるものがメタバースである、という考え方になります。

A氏『ファイナルファンタジー14』とか『フォートナイト』、『どうぶつの森』らへんをメタバースであると考えるパターンですね。

この使い方なら、要するに複数の人間がプレイして交流できる3Dゲームはすべてメタバースだ、ということになります。ただし、今どきのオンラインゲームでは他人との関わりがないものの方が珍しいくらいですから、最新のオンラインゲームをかっこよく言い換えただけとも考えられます。

B氏もう1つの使われ方は、Facebookから改名したMeta社に代表されるパターンですね。さっきの『メタバース』からゲーム要素をなくして、人々が交流、学習、仕事とかもできるような3D空間という意味合いで使ってるパターンです。

今のインターネットはテキストによる交流から一歩進んで、オンラインミーティングのような動画を使った交流が広まった段階ですが、それをさらに進化させようと。

無機質な背景と生身の姿ではなく、3Dデジタル空間とアバターを使って今よりもリアルに近いコミュニケーションを取れるようにしよう、という発想ですね。『バーチャル渋谷』とかもこれに近いタイプのメタバースです。


メタバースといえばすべてブロックチェーンが
関係するという考えは正解ではない

A氏ここまでの2つは、ブロックチェーンとかNFTとかはまったく関係ないですよね。

B氏そうです。メタバースといえばすべてブロックチェーンが関係するという考えは、正解ではないんですよね。

ブロックチェーンが関係してくるのは『ブロックチェーン及び暗号資産とNFTを活用している3Dデジタル空間』をあらわす言葉として使われる場合です。

この場合は、3D空間のなかにあるデジタルなモノに価値があること、NFTや暗号資産を使うことでそれを表現できて現実世界のお金とも交換できることにメタバースの真価を求めているというか。

A氏メタバース空間のなかで土地の一区画にいくらの値段がついた、とかが話題になるのはこれです。今までのオンラインゲームではどれだけゲーム内で価値が高い武器でも、その価値を現実世界に持ち出すことができなかったけど、NFTと暗号資産を使えばそれができると。

B氏NFTアートが流行ったことによって、NFTを使うことでデジタルなモノに価値をつけるという概念が一気に広まり、それなら3Dデジタル空間に存在するモノにもすべて価値をみいだせるのではないか、という発想ですね。

ただし、Web3.0プロジェクトが、特に理由もなく話題性と資金調達のために『メタバース』を謳うパターンもあります。たいていはブロックチェーンゲーム系のプロジェクトで使われるのですが、そもそも3Dですらないゲームが『我々はメタバースを構築する!』とかホワイトペーパーに書いているんですよね。

A氏メタバースといっておけばとりあえずカッコいいだろうと(笑)。今のところショボいゲーム画面しかなくても、いつか物凄いグラフィックのゲームに進化するのかもしれない、と期待させて投資してもらうための言葉ですね。

B氏悪い意味でのバズワードとして『メタバース』を使うパターンです。どういうつもりで『メタバース』というキーワードを使っているのか理解できないようなプロジェクトもあるので、読者の方にはぜひ気をつけていただきたいですね。

A氏そういえばメタバース=ARやVRだと混同されることがありますが、これは勘違いだと思うんですよね。ARはそもそも現実世界にCGなどをデジタル技術で映し出すものなので、メタバースとは違うものです。

VRは『仮想現実』を意味する言葉で、メタバースとよく似ています。ただし、VRの場合はSNSのような人間同士の関わりが必須条件ではないのでやはり違うニュアンスを持つ言葉です。また、VRヘッドセットも、それ自体はメタバースではなく、メタバースやVRに触れるためのツールの1つでしかありません。

B氏たとえばVRヘッドセットをつけて美少女ゲームを楽しむようなことをメタバース体験とはいいませんね(笑)。ヘッドセットが進化すればメタバースで得られる体験がもっと素晴らしいものになる可能性はありますが、メタバースにとってヘッドセットは必須項目ではありません。


メタバースの土地を売り出すのはいいけど、結局その土地で何ができるのか?っていうのはよくわからない。

A氏ここからは、主にWeb3.0の文脈で使われる『メタバース』の現状について話していきましょう。Bさんは、いわゆるメタバース銘柄にもいくつか投資しているんですよね。

B氏かなり早い段階で『The Sandbox』と『Decentraland』に投資しています。それ以外でも『NFT Worlds』とか、話題になったメタバースプロジェクトの土地やトークンを買っていますが、正直なところ投資結果としてはボロボロですね。

たとえば『The Sandbox』のLand(土地)は100万円超えが当たり前みたいな時期もありましたが、今は1ETH(約20万円)で買えます。

A氏どのメタバースプロジェクトもだいたいそんな状況ですか?

B氏そうですね。当初はメタバースが流行すれば土地の価格も上がるだろうと意気込んでいたのですが、予想がはずれました。メタバース内の土地のことを『ランド』と呼んで、それを売り出すパターンが多かったのですが、メタバースの不動産バブルはひどい弾け方をしています(笑)。

A氏それって結局、Web3.0的メタバースは話題性ばかり先行して失敗したってことなんですか?

B氏ゲームの発展、インターネットの発展という方向性でみれば『リッチな3Dデジタル空間』という意味でのメタバースはまだまだこれからの段階なので、失敗云々を論じる段階ではありません。

ただし、NFTや暗号資産を絡めた『Web3.0的メタバース』は期待感だけが先行しすぎたとはいえますね。暗号資産もNFTも、投資的観点からみればとにかく早いもの勝ちという面があったので、メタバースについても私のように我先にと飛びつく人が大量に生まれたのは仕方ないと思っています。

A氏土地を売り出すのはいいけど、結局その土地で何ができるのか? っていうのはよくわからないというのが正直なところです。

少なくとも今の段階では、ブロックチェーンやNFTを活用したメタバースというものは、現実的には動いていないですよね。振り返ってみれば、ランドの売り出しというのは資金調達の手段でしかなかったのかなと。


現実世界と同じで、メタバースも人が集まらなければ土地にもあまり価値がない

B氏一応、『Decentraland』内で音楽フェスが開催されるなど、3Dデジタル空間だからこそ実現できるようなイベントは開催されているんです。ただ、日常的に人々がメタバース内で生活するというような状況にはなっていません。

土地を所有していればそこに自身のお店を出したり、賃貸収入を得られるようになったりする、ということになっているんですけどね。現実世界と同じで、人がいなければ土地にもあまり価値がない、という当たり前のことにみんなが気づいてしまいました。

A氏NFTや暗号資産の有無にかかわらず、メタバースというものが実際に広く普及するまで、まだ相当時間がかかることは間違いないですよね。最近では、メタバース内での迷惑行為や性被害を問題視するようなニュースも報じられているように、問題は山積みです。

B氏メタバースにログインした女性が、多くの男性アバターに取り囲まれて嫌がらせを受けたり、性的な言動をされたり、という問題ですね。

そのへんは今のインターネットでも問題になっていますが、リアリティがある3D空間ともなればより一層その被害が深刻化するとも懸念されています。デジタル空間がリアルな世界に大きく近づいた時には、良い面だけではなく悪い面も出てくるということでしょうね。


継続的に人を集められるような魅力がないと
メタバースの構築は失敗する


A氏では、今後メタバースがどのように発展するのかについて話しましょう。

B氏まず大前提として、メタバースというのはさまざまな技術が発展したその先にようやくできあがるものだと思っています。そもそもキレイなグラフィックの3Dデジタル空間で何かをしようという時点で、ハイスペックPCが必要になるので、ほとんどの人にとってはハードルが高いですよね。

また、インターネット回線のスピードも必要になります。近年話題になっている5Gが普及してようやく誰もがメタバースを楽しめる時代が来るといえるのではないでしょうか。

さらにいえば、NFTや暗号資産を絡めた場合はユーザーが自分でウォレットを管理しなくてはいけません。

暗号資産が多少普及してきたとはいえ、大多数の方は取引所を介して取引するだけで、自分のウォレットを作ったことすらないでしょう。そういう意味ではWeb3.0に関するリテラシーの向上も必須です。

A氏NFTが絡むようないわゆるWeb3.0的メタバースが普及するまでの道のりはかなり遠いように思えますね。それよりは、現在のオンラインゲームの延長線上にあるようなメタバースの方がはるかに希望があるように感じます。

B氏私もそう思います。何より、『メタバースにログインして何するの?』という問題を解決できそうなのは、今のところゲームだけなんですよね。

ただ、そうなると普通のオンラインゲームとして成功するような面白いゲームが、わざわざ暗号資産やNFTを導入する意味がないので、Web3.0的メタバースとは異なるものになるでしょう。

A氏今、世界中でメタバースを作ろうという企業やプロジェクトが増えていて、国内でもNTTドコモ、KDDI、グリーなどの大企業がメタバースの構築を始めています。

ただ、どのメタバースも『その仮想世界で何をやるのか?』という問いへの回答を提示できていないと思うんですよね。今のところ、音楽フェスとかファッションショーといったイベント開催によって人を集めるという動きだけはありますが。

B氏それだけだと日常的にログインする動機になりませんからね。結局、継続的に人を集められるような魅力がないとメタバースの構築は失敗すると思います。昔の自分にいってあげたいくらいですが、メタバースならなんでも投資する、みたいな考え方は危険ですね。

A氏今のところメタバースが活用される見込みがある分野ってゲーム以外にあるんですか?

B氏個人的にはEC(ネットショッピング)、防災あたりはメタバースだからこそできること、というのがありそうな気はしています。

ECメタバースなら、実物と変わらないみた目の3Dデジタル商品をメタバース内でみて商品を選んだり、メタバース内の店員さんに相談しながら選んだり、ということが広まると思っています。

このあたりは今のネットショッピングサイトでは実現できていないユーザーニーズを満たせる部分ですから。

A氏メタバース百貨店ができたり、今のAmazonや楽天市場みたいなECサイトがまるごとメタバースになったら1回使ってみようと思う人は多そうですね。

B氏防災分野は実は密かにメタバースの活用が広まりつつあります。現実の街と変わらない空間をメタバースで作って、そこで地震や水害が起きた時のシミュレーションをしたり、交通渋滞をシミュレートして街の設計に活かしたりという方法です。

A氏なるほど。投資とかそういう観点とは違いますが、メタバースが社会を良くするという意味で期待できそうですね。

B氏まあ後者はメタバースというよりもVRの進化と考える方が適切かもしれませんが、とにかくそんなふうに少しずつ『メタバースって役に立つ』という認識が広まり、その先にようやくNFTなどを絡めたWeb3.0的メタバースの時代があるのかなと考えています。



Profile


◉A氏
元ゲーム会社勤務のゲームライター。Web3.0業界やブロックチェーンゲーム・メタバースに関心を持って動向を追っているが、従来のゲームと比べて魅力的ではないと感じている。


◉B氏

Web3.0とブロックチェーンゲームをこよなく愛すインフルエンサー。個人投資家として、暗号資産投資と同程度の予算をブロックチェーンゲームやメタバース関連プロジェクトに投じている。



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