米Google出身のAI研究者が日本で設立したAI開発スタートアップ「サカナAI(Sakana AI)」が近く、米ベンチャーキャピタルなどを引き受けとする約200億円の資金調達を実施することがわかった。交渉関係者が明らかにした。
実施すれば、既存の資本と合わせるとサカナAIの時価総額は1,800億円に達する。時価総額10億ドル(約1,570億円)以上のスタートアップは「ユニコーン」と呼ばれる有望未上場企業と称される。
サカナAIは、GoogleのAI研究者だったライオン・ジョーンズ(Lion Jones)氏とデビット・ハ(David Ha)氏、日本の外務省出身の伊東錬氏が創業メンバーで現在の社員数は15人だ。
日本でAI企業を設立した理由についてハ氏は、「私は6年半、ライオンは12年、Googleで働いてきた。Googleでは研究に取り組む環境に恵まれていた」と述べていた。
その後、Googleが研究開発よりもエンジニアリングに注力するようになったとし、「私はAIの研究がしたかった。そこで当初Googleで経験したような研究開発を設立しようと考えた」と語っている。
ジョーンズ氏はAI業界では著名な人物で知られる。生成AIの爆発的な普及につながった「トランスフォーマー」と呼ばれる言語処理モデルの開発者の1人であり、6年前にその論文を発表している。
ジョーンズ氏は今のAI技術に課題があると考えている。大量なデータが必要になるのに加えて、問題が起こる度にメンテナンスをし続ける必要があり、労力とコストがかなりかかると指摘する。
そこで、ジョーンズ氏とハ氏は「魚の群れが天敵を避けて泳ぐ」ような、自然界を見習ったシステムをつくろうと考えたようだ。
日本を拠点にグローバル展開を目指すサカナAI
サカナAIは異なる特徴を持つ複数のAIを組み合わせて、より優れたAIを生み出すプロジェクト。複数の生成AIの優れた点を抽出するためAIモデルを短期間で効果的に開発が可能となる。そのため、問題が起こっても柔軟に対応でき効率性が高まる。
一般的に、大規模なAIを開発するには、膨大なデータと計算資源が必要だ。こうした背景から、資金力があり、既存のITサービスを提供する大手IT企業が有利とされている。
しかし、サカナAIは小さな魚が群れを形成するように既存AIを組み合わせることで高度なAIを作ることを目標としている。この方法で実際に「日本語で数学の問題を解く大規模言語モデル」を開発することに成功している。
サカナAIは日本を拠点としてアジアから世界へと技術の利用者を拡大することを目指しており、「AI分野で日本発のグローバル企業となる」というビジョンの実現に向けて活動している。
ハ氏は「AIの開発拠点のほとんどが米国のベイエリア(サンフランシスコ周辺)あるいは北京にある。AIのような重要なテクノロジーの未来を少数の企業や政府が支配することは望むべきではない。日本は米国と中国の中間にあるため、日本は技術開発で重要な役割を担うべきだ」と主張している。
アナリストたちは、サカナAIの潜在的企業能力は生成AIで世界をリードするChatBPTを開発するOPENAI、Googleを超えると評価している。日本発のユニコーンが生成AIの未来を見据え、世界をリードすべく動き出したといえる。
画像:Shutterstock
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