中国大手フィンテック企業のアントグループ(Ant Group)が、デジタル資産領域への投資から撤退する見込みであることがわかった。18日、ブルームバーグが報じた。
報道によると、アントグループはA&T Capitalが運用する1億ドル(約148億円)規模のファンドから撤退したという。
A&T Capitalはアントグループの支援を受け設立した投資企業だ。運用するファンドではブロックチェーン開発等を行うコンセンシス(Consensys)やレイヤー1ブロックチェーン・Suiを手がけるMysten LabsなどといったWeb3.0関連企業に出資している。
今回アントグループが撤退した明確な理由は明らかにされていないものの、A&T Capitalの創業者で先日役員を辞任したユ・ジュン(Yu Jun)氏による不正行為が背景にあるのではないかとの声もある。
また、アントグループは今年7月に投資家保護など複数の法律違反によって71億4,000万元(約1,440億円)もの罰金を科せられたことから、これが今回の撤退にも影響した可能性が考えられる。
デジタル資産領域への投資から撤退する可能性が高まっている一方で、アントグループではAIに注力する姿勢が顕著だ。
今月に入りアントグループは金融に特化したAIモデルを発表。保険及び資産運用プラットフォームにて試験運用を開始した。消費者向けと金融業界関係者向けに2つアプリを用意し、市場分析や必要な情報の抽出などが行えるようだ。
AIを取り巻く熱気は落ち着きつつあるものの、今後も需要増と資金流入が見込まれる。それに対し、暗号資産などデジタル資産領域では昨年から続く市況の悪化などを資金流入が減っている状況だ。
こうした市況感も踏まえ、今回アントグループはAI領域に資金を集中させる方向へ舵を切った可能性がある。
参考:ブルームバーグ
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