米財務省は25日、暗号資産(仮想通貨)などのデジタル資産の売買や交換に関するあらたな規制案を発表した。
この規制では納税逃れを防ぐ狙いがあり、暗号資産取引所や決済事業者等のブローカーに対して、IRS(米国歳入庁)への報告義務を課す。こうしたブローカーは証券やその他金融商品の仲介業者と同じ報告義務が適用されるという。
なお、ブローカーの定義には中央集権的な暗号資産取引所やDeFi等の非中央集権的な取引所、暗号資産決済事業者などが含まれる。
この規制が施行された場合、ブローカーはあらたな税務報告書「フォーム1099-DA」をIRSのほか、デジタル資産を保有するユーザーに対して送付する必要があるという。
米財務省はこの取り組みにより、脱税を取り締まることが可能になるほか、納税者が自らの支払う税金を把握しやすくなるといったメリットが生まれると説明している。
超党派の税務委員会(JCT)によれば、この規制が施行されることで今後10年の間に280億ドル(約4兆1,000億円)の税収をもたらす可能性がある。
今後、パブリックコメントを10月30日まで募集し、最初の公聴会を11月7日に開催する予定だ。米財務省は2026年の納税にあわせ、2025年にも本規制の適用を目指す。
バイデン政権では2021年にインフラ投資・雇用法に盛り込む形で暗号資産の報告義務に関する提案を行なっており、今回の規制案はそれに関連したものとなる。
また提案が行われた際には、1万ドル(約146万円)を超える暗号資産の送金が別の事業者に行われた時、受金者がその取引を報告する義務も盛り込まれた。財務省が発表した規制案では、暗号資産に限らず広範なデジタル資産にも関しても1万ドルを超える取引が行われた際に報告する義務が課せられる。
一方、今回の規制案について、暗号資産業界からは一部で否定的な声があがっている。
DeFi関連のロビー活動等を行うDeFi Education FundのCEOであるミラー・ホワイトハウス=レヴィーン(Miller Whitehouse-Levine)氏はロイターに対し、「提案されたアプローチが税務作業を容易にさせたり法律を遵守させることにはつながらない」と指摘。
その上で、「この提案は混乱を招くだけではなく、矛盾しつつ誤ったアプローチとなっている。存在しない場所にいるブローカーが“存在している”と仮定した状態で規制の枠組みを適用させようとしたものだ」と批判した。
また、下院金融委員会のパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry:共和党)委員長は声明で、「これはバイデン政権がデジタル資産のエコシステムに対して攻撃を続けているものの一環だ」とし、「バイデン政権は米国のデジタル資産エコシステムを壊滅させるこれらの誤った試みを停止し、業界に明確なルールを提供するべく議会と協力すべきだ」と非難した。
参考:発表、ロイター
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