大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)が、タイで2024年初頭に暗号資産取引所「ガルフ・バイナンス」を立ち上げることがわかった。設立にあたり、タイの大手エネルギー企業ガルフ・エナジー(Gulf Energy)と提携する。
ガルフ・エナジーが15日にタイ証券取引所に登録した2023年第3四半期の提出書類によると、ガルフとバイナンスの提携による暗号資産取引所は、まず招待されたユーザーのみに提供されるという。その後、2024年初頭には一般公開される見込みだ。バイナンスのタイ法人は10日、タイ証券取引委員会から運営開始の認可を取得した。
ガルフ・エナジーは声明で「ガルフ・バイナンスは、セキュリティと規制の準拠を優先し、暗号資産とさまざまなデジタルトークンの両方に対応したデジタル資産取引サービスとデジタル資産ブローカーサービスを提供する」と述べた。
潤沢な資金を有するガルフ・エナジー
ガルフ・エナジーはタイでは有名な天然ガス販売企業だ。現在はタイの億万長者であるサラット・ラタナヴァディ(Sarath Ratanavadi)氏がCEOを務めている。ブルームバーグ億万長者インデックスによると、ラタナヴァディ氏の純資産は約106億ドル(約1兆5,700億円)だ。
ラタナヴァディ氏は第3四半期の投資家向けのプレゼンテーションで「『ガルフ・バイナンス」と呼ばれるあたらしい暗号資産取引所は今年5月、タイ財務省から暗号資産仲介業と運営ライセンスを取得し、2024年1月にローンチする予定だ」と述べていた。ガルフ・エナジーがガルフ・バイナンスの51%の株式を保持し、バイナンスが49%の株式を保有すると記載されている。
バイナンスの広報担当者は「このプラットフォームはまず招待制の取引所として立ち上げられた。最終的には取引所を一般公開することを目指している」と各報道機関にコメントしている。
バイナンスの米国での対立深まる
バイナンスがタイで取引所をローンチする決定をしたのは、バイナンスとCEOのCZ(Changpeng Zhao)氏に対して米規制当局の厳しい監視が継続している最中であった。
CFTC(米商品先物取引委員会)は3月、CZ氏と米法人のバイナンスUS(Binance US)の両者を、米国在住者に対して禁止されている収益性の高い海外取引所への誘導を行った共謀の容疑で告訴した。
また、6月にはSEC(米証券取引委員会)がバイナンス及びCZ氏が米証券法を回避するために「広範にわたる欺瞞に関与した」として、13件の容疑で告訴した。そして今もなおバイナンスとCZ氏に対する司法省の捜査は進行中であるとされている。以降、フランスなどほかの国々も米国の動きに追随し、バイナンスに対して独自の調査を実施している。
しかし、バイナンスの勢いは世界的にみれば衰えてはいない。4月、アルゼンチンで暗号資産取引所を開設することを発表したほか、8月には日本法人であるバイナンスジャパン(Binance Japan)をローンチし、サービスを提供している。バイナンスは世界の主要都市で未進出の国にターゲットを絞り、今後も事業拡大を図っていく構えだ。
参考:提出書類、ブルームバーグ
画像:Shutterstock
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