日本銀行は4日、BIS(国際決済銀行)が企画・運営する新規実験プロジェクト「アゴラ(Agorá)」に参加することを発表した。
本プロジェクトではスマートコントラクトとプログラマビリティを活用し、トークン化された商業銀行預金とCBDC(中央銀行デジタル通貨)の国際決済に関する実証実験を行う。また、プロジェクトを通じてあらたな決済インフラの可能性を検討するとしている。
アゴラはギリシャ語で「市場」を意味する。プロジェクトに参加するのは日銀を始めた7ヵ国の中央銀行で、韓国銀行、メキシコ銀行、スイス国立銀行、イングランド銀行、ニューヨーク連邦準備銀行、フランス銀行が名を連ねている。各地域の商業銀行と協力し、検討作業を行うという。
今後、アゴラでは民間金融機関に対して参加の呼びかけを行っていく。民間金融機関の取りまとめは、IIF(国際金融協会)が担う。
現行のクロスボーダー決済には、コスト、スピード、透明性、アクセスに課題があることが指摘されている。そこでアゴラでは金融の廉潔性(integrity)を維持しつつ、クロスボーダー決済における課題の克服を目指す。
BISはトークン化の意義について「スマートコントラクトを通じて記録を管理するルールやロジックと記録を統合することだ」と説明している。スマートコントラクトを活用することで、これまでに費やされていたリソースの大幅削減が期待される。
BISは共有インフラストラクチャでのコンプライアンス費用の削減につながる可能性を強調している。顧客確認(KYC)やマネーロンダリング対策(AML)監視などが合理化される可能性があるとしている。こうした監視体制の整備は、現時点で銀行にとって大きな負担となっている。
BISはテクノロジーよりも、機能に焦点を当てる立場をとっている。BISの研究責任者のヒュン・ソン・シン(Hyun Song Shin)氏は「ブロックチェーンプロジェクト、特にパブリック・ブロックチェーン上のプロジェクトが直面するスケーラビリティと相互運用性に課題がある」と言及。その上で、「アゴラでは中央銀行を中核とする2層通貨システムの実績ある基盤に基づき、既存の機能を改善し、あらたな機能を実現することを目指す」と述べた。
対極化するCBDCを取り巻く状況
ほかにも越境の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の取り組みは存在する。実用化に近づいているのは、中国、タイ、香港、UAEの中央銀行が連携して実施している「mBridge」だ。
また、中国及びUAEが参加する国際的な取り組みとしては、「BRICs」におけるブロックチェーン基盤の決済システムがあげられる。BRICsはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカといった5ヵ国の総称で、今年に入りUAEやサウジアラビアなどがあらたに加わった。主にドル支配からの脱却を目指す国々が参加している。
今回発表されたアゴラにより、こうしたドル支配からの脱却を目指す国々との対極化が一段と進んだ格好といえる。
参考:日銀発表
画像:Shutterstock
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