19日、アルゼンチンのバビエル・ミレイ氏が次期大統領として選出された。これを受け、ビットコイン(BTC)価格が一時急騰した。
暗号資産(仮想通貨)運用大手のグレースケール(Grayscale)は20日、アルゼンチン大統領選挙が暗号資産市場に及ぼした影響についてレポートを発表した。これによると、アルゼンチンの法定通貨であるペソ建てのビットコイン(BTC)価格は過去最高値に迫っているという。なお、CoinMarketCapによれば、今月16日にペソ建てビットコイン(BTC)価格は最高値を更新している。
ビットコイン支持と中央銀行の廃止を主張
ミレイ氏は経済学者であり、テレビ番組などで歴代政権を過激に批判して人気を博したアウトサイダーとして知られる。有権者は長年の経済的混乱を解決することはできないとして、既存の2大政党に対する不満を噴出させていたが、これがミレイ氏の劇的な勝利につながった。
大統領選挙では、2001年の債務危機から続いている経済的苦境からの脱却策が最大の争点だった。アルゼンチンでは、米国の利上げに伴うペソの下落や記録的な干ばつなどによる農産品の生産が著しく落ち込み、激しいインフレが続いている。10月の物価上昇率は前年同月比142%という高水準で、9ヵ月連続で100%を超えた。貧困層は国民の40%を占めている。
ミレイ氏は中央銀行を経済不安定の「主要な原因」と断定している。また、ビットコインを支持していることでも知られている。同氏はビットコインのような暗号資産を法定通貨の代替案として提唱している。ビットコインは現金と同等の存在であり、インフレを阻止するツールとして利用できると考えているようだ。
ミレイ氏がビットコインを支持しているのは、経済的信念と、消費者物価のハイパーインフレ、前年比ペソ対ドルが117%下落していることなど、アルゼンチンの金融苦境と結びついている。
ミレイ氏はオーストリア経済学派のリーダーとして、無政府資本主義者を自認している。既存政府に対する抗議活動に参加する有権者や暗号資産愛好者など、アルゼンチン国民の一部は深く共鳴しているという。
ハイパーインフレ国で高まる暗号資産の需要
アルゼンチンのようなハイパーインフレが問題となっている国では、暗号資産が金融政策を近代化するまたとない場所になる可能性がある。
アルゼンチンは数年間、世界で最も高いインフレ率に耐えてきたが、これによりペソに対する国民の信頼性は失墜しており、安定した代替通貨を求める議論が現在起きている。
ミレイ氏の経済政策は、抜本的な再編と政府介入の削減を目的としている。同氏が掲げるビジョンは、国の金融政策を超え分散化されたインフレに強い価値の保存手段を提供する超主権通貨としてビットコインを採用するというものだという。
グレースケールは、ビットコインがアクセスしやすく、包括的な金融システムを加速する超主権交換手段となる日が近づいていることから、「暗号資産を採用することにとって有意義な前進と考えている」と説明している。
参考:レポート
画像:Shutterstock
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