中国政府が、暗号資産(仮想通貨)を使用したマネーロンダリング対策を念頭に法改正を予定していることがわかった。15日、South China Morning Postが報じた。
2006年に制定され、2007年に施行された現在のマネーロンダリング対策法の改正草案は、中国の李強首相が議長を務める国務院会議で議論され、国家議会に提出され審査される見込みだ。
上海の復旦大学中国マネーロンダリング対策研究センターのエグゼクティブ・ディレクターのヤン・リーシン(Yan Lixin)氏は「暗号資産を活用したマネーロンダリングは現在、最も緊急かつ必要な問題で、法改正が必要である」と述べた。
中国政府によるマネーロンダリング対策の取り組みは、ビットコイン(BTC)を始めとした暗号資産のマイニングや取引を厳格に禁止しつつ、NFTの活用などWeb3.0の促進に向け歩調をあわせるという政府の政策を反映したものとなるという。
来年可決される予定の改正案は、あらたなタイプのマネーロンダリングリスクに対処するもので、同法改正の議論に関わっている北京大学法科大学院教授のワン・ジン(Wang Xin)氏の言葉を引用している。
最高人民検察院の上級検察官のチャン・シャオジン(Zhang Xiaojin)氏は今月初めにマネーロンダリングと違法外国為替取引犯罪に対する取り組みを強化すると述べていた。あわせて、同氏はデジタル通貨の使用に関連した犯罪の訴追に今後は重点を置くと付け加えている。
禁止されるも続く中国での暗号資産取引
中国当局は、暗号資産関連のマネーロンダリング事件に対する監視を強化している。2022年には暗号資産を使用して120億元(約2,530億円)をマネーロンダリングしたとして63人が逮捕されている。
一方で、中国では暗号資産が全面的に禁止されているのにも関わらず、中国本土で暗号資産取引が活発に行われているとの報告もある。昨年、大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)において、わずか1ヵ月で900億ドル(約13兆5,000億円)もの暗号資産取引が行われたとされている。また、テザー(USDT)などのステーブルコインを使って人民元と他国の法定通貨を交換し利益を得るなど、政府による外国為替監視を回避した事業者も続出しているのが現状だ。
中国人民銀行総裁も昨年10月に「暗号資産取引などの投機活動」を取り締まると発言するなど、暗号資産に厳しい監視の目を光らせてはいるが、実際には回避されている。そのため、法改正をしたとしてもどこまで抑止力となるかは不透明な状況といえる。
参考:報道
画像:Shutterstock
関連記事
中国国家外国為替管理局、「暗号資産は違法ツール」と警告
中国、Web3.0促進を表明 NFTやdApps等の活用に焦点