米ドルに価値を裏付けたステーブルコイン・USDコイン(USDC)を発行・運営するサークル社(Circle )が、IPOを見据え法的拠点をアイルランドから米国に移転することが明らかになった。15日、ブルームバーグが報じた。
サークル社の広報担当者は、ブルームバーグの取材に対し、アイルランドの持ち株会社を米国に移すために裁判所へ文書を提出したことを認めた。その一方で、その理由については明らかにしなかったという。サークルの移転は、同社がIPOの準備を進める上で米国の金融規制に準拠することを目的にしている可能性が高いようだ。
サークルは2021年、特別買収目的会社(SPAC)との合併による上場計画を発表。2022年2月の企業評価額は90億ドル(約1兆3,800億円)にのぼった。また、コインゲッコーによればUSDコインの時価総額は330億ドル(約5兆円)に達しており、ステーブルコインではテザー(USDT)に次ぐ2番目の規模を誇っている。
一方、サークルは準備に遅れが生じたことなどにより2022年にIPOの計画は頓挫した。しかし今年1月、サークルはSEC(米証券取引委員会)にIPOのためのForm S-1ドラフト(草案)を非公開で提出したことを発表している。
アイルランドの税制改革も影響か
サークルによる法的拠点を米国に移す決定は、米国内における暗号資産とステーブルコインに対する規制環境が不十分ななかで行われる。米国では現在、規制を早急に整備すべきであるという声が高まっている。
今後、サークルは米国に拠点を置くことでSECらの規制に準拠する必要があるが、今回の本社の移転は株式公開に向けた準備における重要なステップとなる。
また、今回の決定は多国籍企業に最低15%の課税を課すというOECD(経済協力開発機構)が定めた税制改革にも影響を受けた可能性がある。アイルランドの低い法人税率という経済的メリットが減り、課税額が増加することで、サークルが拠点を同国に置く必要性が弱まった。そのため、IPOも踏まえ早いタイミングでの移転を決めた可能性も考えられる。
参考:報道
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