メタマスク(Metamask)の開発で知られる米ブロックチェーン企業のコンセンシス(Consensys)は25日、イーサリアム(ETH)の有価証券性を巡りSEC(米証券取引委員会)を提訴したことを発表した。SECの不法な権力掌握を阻止するために必要な措置であるという。
コンセンシスは発表で、「SECがイーサリアムを証券として規制するという脅迫は、米国がイーサリアムや同様のブロックチェーン技術を能力を脅かすものだ」と主張。また、「その影響はデジタル資産取引にとどまらず、この次世代インターネットが解き放つあらたなイノベーション、サービス、米国の雇用の将来を危険にさらすことになる」と続けた。
コンセンサスはイーサリアムについて「グローバル・コンピューター・プラットフォームであり、投資スキームではない」と述べ、CFTC(商品先物取引委員会)にも確認されているようにコモディティに該当すると主張する。
次に「イーサリアムを使用して人々が独自に取引できるようにするアプリケーションは証券ブローカーに当たらない」とし、SECから規制される必要がないと強調している。
そして「SECの不法な権力掌握は、次世代インターネットのリーダーとして米国の地位を損なう恐れがある」と説明し、「他国や敵対国が、インターネットの技術進化に基づき構築された経済の発展を制御する扉が開かれる。これは米国がテクノロジー業界に望んでいることではないが、SECはその道に導こうとしている」と述べた。
その上で、SECを訴えた理由として、「グローバルなP2Pネットワークを規制する権限がない上に、するべきでもない。SECの商品、ソフトウェア、新テクノロジー・プラットフォームに対する積極的かつ過剰な行為は違法だ」と指摘した。
さらに、SECの主張を受け入れた場合には「イーサリアムの弱体化につながる」とし、開発者や市場参加者だけでなく、米国全体にも悪影響を及ぼす可能性があると述べる。こうしたことも踏まえ、イーサリアムの監視強化を目的として法的基準や権限の変更を行うこと自体が間違いであると断じている。
イーサリアム現物ETF実現にも影響か
今回、コンセンシスが提訴した背景には、今月10日に同社がSECからウェルズ通知(Wells Notice)を受け取っていたことがある。ウェルズ通知はSECが企業や個人に対して法的措置を講じることを事前に通知するものだ。これまでにさまざまな暗号資産(仮想通貨)企業もウェルズ通知を受け取っている。
現在、イーサリアムは現物ETFの承認を巡り注目を集めている。承認可否のカギを握る要因の1つとしてイーサリアムの有価証券性を巡るSECの判断があるとされているが、今回の訴訟次第では現物ETFの実現にも影響を及ぼす可能性がある。過去には、ビットコイン投資信託のETF転換申請を巡る裁判で暗号資産運用大手グレースケール(Grayscale)が勝訴し、その後のビットコイン現物ETF誕生に大きく影響した。
今回の裁判の行方がイーサリアム現物ETFの承認可否につながるかは不透明な部分もあるが、結果次第ではSECが方針を転換せざるを得ない状況となる可能性もあるため、動向には注目が集まるものとみられる。
参考:発表
画像:Shutterstock
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