デジタル資産運用会社ビットワイズ(Bitwise)は11日、暗号資産(仮想通貨)とAIが、2030年までに世界のGDPを20兆ドル(約3,145兆円)増加させる可能性が高いと予測するレポートを発表した。
ビットワイズの上級暗号資産リサーチアナリストであるファン・レオン(Juan Leon)氏は「暗号資産とAI業界は人々が想像する以上に大きくなるだろう」と指摘した。
レオン氏は暗号資産とAIが協働する機会の1つとして、ビットコイン(BTC)マイナーとAIのあらたなパートナーシップであると記した。
現在はAIブームで半導体メーカーのNVIDIAが注目を集め、時価総額は3兆ドル(約470兆円)に達している。マイクロソフト(Microsoft)とアップル(Apple)に次ぐ世界第3位の企業となっている。
レオン氏は「AI覇権」をめぐる競争により、データセンター、AIチップ、電力供給が前例にないほど不足していると指摘する。その上で、「世界4大クラウドサービスを展開するアマゾン(Amazon)、グーグル(Google)、メタ(Meta)、マイクロソフトは来年だけで新データセンターに約2,000億ドル(約31兆円)を投資すると予想される」と述べた。
しかし商業不動産会社CBREグループによると、建設中のデータセンターの80%以上がすでに前借りされており、あらたなAI需要を満たすには不十分な状況であるという。
そこで、ビットコインマイニング用に構築されたストレージや冷却システムなどのインフラが役に立つ可能性があるとレオン氏は説明する。マイニングで使用される集積回路自体はAIには向いていないが、大量のデータ保存に適していることから、大規模なデータセンターをサポートするのに役に立つと述べた。
好例は、AIクラウドプロバイダーのコア・ウィーブ(CoreWeave)が先週、ビットコインマイナーのコア・サイエンティフィック(Core Scientific)を16億ドル(約2,520億円)で買収すると提案したことだ。この提示額は市場価格より55%も高いものだという。これは両社間において12年間、35億ドル(約5,500億円)に及ぶ提携契約に続くものでもある。
コア・サイエンティフィックCEOであるアダム・サリバン(Adam Sullivan)氏は「コア・ウィーブとの関係拡大により、我々はビジネスモデルを多様化し、ビットコインマイニングと代替コンピューティングホスティングのポートフォリオのバランスをとる道が開かれ、ビットコインの上昇の可能性に対する大きなエクスポージャーを維持しながら、キャッシュフローを最大化し、リスクを最小限に抑えることができるようになる」と述べていた。
コア・サイエンティフィックを含むビットコインマイニング企業は、マイナーのブロック報酬が半減した4月の半減期以来、収益拡大について模索してきた。ハット8(Hut8)やアイリス・エナジー(Iris Energy)などほかのマイニング企業もここ数ヵ月の間にAIに関する取り組みを進めている。
ディープフェイク対策などでも暗号資産とAIを活用
また、レオン氏はマイナーの多様化を超え、ブロックチェーンベースの検証作業が暗号資産とAIが交わるもう1つの機会になると主張する。
AIツールが増加する一方で、生成AIコンテンツやディープフェイクに関連するリスクが大きな懸念事項になりつつある。こうした背景から、あらたなプロジェクトはAIの悪用に対抗するために、パブリックブロックチェーンのアクセシビリティ、透明性、不変性を活用する方法をみつけようとしているとレオン氏は指摘した。
一例として、レオン氏はアテスティヴ(Attestiv)というスタートアップ企業をあげている。同社は動画がいつ、どこで撮影されたかなどのメタデータに基づいて動画のデジタル「指紋」を作成し、それをブロックチェーンに保存している。動画が操作された疑いがある場合、プラットフォームは指紋と照合し、視聴者に動画が改ざんされたことを知らせることができるという。
レオン氏によると、もう1つの潜在的な使用例はバーチャルアシスタントに関連している。
「AIアシスタントをスマートコントラクトやビットコイン、ステーブルコインなどの暗号資産と組み合わせることで、生産性を高めるあらたな道が開かれる可能性がある」と記した。
参考:レポート
画像:Shutterstock
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