米司法省が、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)の創業者であるCZ(Changpeng Zhao)氏に対して懲役36ヵ月と罰金5,000万ドル(約78億円)を求刑した。23日に司法省が裁判所に提出した書類で判明した。
CZ氏は昨年11月、バイナンスが米国の法律に違反したことを認め、米規制当局との和解でバイナンスのCEOを辞任。バイナンスは43億ドル(約6,680億円)の和解金を支払い、CZ氏自身は裁判の判決を待つ身となっている。
司法省は書類のなかで、「CZ氏とバイナンスは米国の規制を無視して、拡大戦略の一環として意図的に米国の顧客をターゲットにした。CZ氏の行動は成長と個人的な利益を追求するもので、計算して米国の法律を無視するという経営判断に基づく意図的なものである」と主張した。
さらに、司法省はバイナンスが適切なマネーロンダリング対策の導入を怠り、違法な資金が無制限に流れることを可能にしていたと指摘し、これを「CZ氏の過失」と付け加えている。「CZ氏の故意的な米国法違反は偶然や見落としではなかった。彼は米国法に違反することがユーザーを魅了し、私腹を肥やす最善の策であるという経営判断を下した」と続けている。
司法省はCZ氏に対する判決が世界にメッセージを送ることにつながるとし、他者が「米国の法律を破って富とビジネス帝国」を築くことを阻止するために役立つと述べた。
こうした状況を加味し、CZ氏に対する懲役36ヵ月と罰金5,000万ドルという求刑は「具体的かつ一般的な抑止力を持つことになる」としている。
罪を認めるも弁護士は減刑を主張
これに対し、CZ氏の弁護士らは「(CZ氏は)自らの違反行為を深く反省しており、責任を認め、更生する姿勢を示している」と主張する。その上で、「CZ氏は非暴力的な犯罪者であり、人を傷つける意図はなく犯罪を犯してしまった。彼に再犯の危険性はない。彼は責任を引き受けるために自発的にこの国にあらわれたのだ」と述べ、裁判所に対して前例に沿って執行猶予を言い渡すよう求めている。
なお、当初CZ氏に対する求刑は最長でも18ヵ月の懲役刑になるものと見込まれていた。今回、36ヵ月の懲役と罰金が求刑されたことから、司法省は事態を重くみた格好だ。
また、CZ氏は裁判所に宛てた手紙を提出し、「バイナンスで必要なコンプライアンス管理を確立することができなかったことに弁解の余地はない」と謝罪した。
続けて「私は自分の不適切な決定を謝罪し、自分の行動に対する全責任を負う。物事を正し、章を閉じて頁をめくり、人生の次の章に集中したい」と語った。これは先月CZ氏が立ち上げた教育プロジェクトや、CEOを辞任する際に述べていた今後の方針に関連したものとなる。
CZ氏は「私が法廷に立つことになった選択に対してどれほど深く後悔しているか言葉では説明できない。2度とこのようなことは起こさないし安心してほしい」と述べている。CZ氏自身の手紙のほかにも、家族や関係者などから計161通の情状酌量を求める手紙が裁判所に送られたようだ。
CZ氏への判決は当初2月下旬を予定していたが、4月30日に変更された。現在、CZ氏は1億7,500万ドル(約272億円)の保釈金を支払い釈放されている。
参考:裁判資料1、裁判資料2
画像:Shutterstock
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