欧州議会は20日、EU(欧州連合)における暗号資産(仮想通貨)に関する規制法案「MiCA(暗号資産市場規制法案)」を可決したと発表した。これにより、欧州で統一された暗号資産規制が施行されることとなる。
MiCAは賛成517票、反対38票、棄権18票となり、圧倒的賛成で可決された。
この法案は暗号資産サービスプロパイダーや暗号資産の発行・取引業者に対する包括的なものとなっている。内容としては基本的なユーザー保護のほか、暗号資産サービスプロバイダーのライセンス取得やステーブルコイン発行者に関する要件などを定めている。
最終的な合意文書には市場操作やマネーロンダリング・テロ資金調達、その他の犯罪行為を防止するための対策が盛り込まれたという。
ESMA(欧州証券市場機構)はマネーロンダリング等のリスクに対抗すべく、認可を受けずに欧州連合で活動する非適合暗号資産サービスプロバイダーの公開登録簿を設置する必要があると主張する。今後、ESMAはMiCAの適用に関するガイダンスを作成する運びだ。
MiCAは2020年に提案されたもので、一時は環境面への影響を考慮し、ビットコイン等のPoW(Proof of Work)をコンセンサスアルゴリズムとして採用している暗号資産を禁止する条項が含まれ話題となった。
PoW銘柄規制については反対多数により昨年3月に否決されており、今回可決された法案に含まれていない。
なお、欧州議会では暗号資産の移転追跡義務付ける法案についても可決した。この法案は賛成529票、反対29票、棄権14票で可決された。
FATF(金融活動作業部会)が定める国際的な規制「トラベルルール」を念頭に置いたもので、暗号資産の送受信者の情報を取得し、不正な取引を抑止する狙いがある。
欧州議会のメンバーであるステファン・ヴェルガー(Stefan Berger)氏は発表で、「EUは1万種類の暗号資産を持つトークンエコノミーの最前線に立つことになる。消費者は欺瞞や詐欺から守られ、FTXの破綻でダメージを受けたセクターも信頼を取り戻すことができるだろう」とコメント。
さらに「この規制はEUに競争上の優位性をもたらすものだ。欧州の暗号資産業界は、米国のような国にはない規制の明確性を持つことになった」と述べた。
これらの法案は法制化に向け欧州理事会にて正式に承認される必要がある。
正式承認後、ステーブルコイン等に関する規制は2024年7月に施行。そしてトラベルルールに関する規制は2025年1月に施行される見通しだ。
参考:欧州議会発表
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