中国のCBDC(中央銀行デジタル通貨)であるデジタル人民元が、初めて原油取引に使われたことがわかった。SHPGX(上海石油天然ガス取引センター)は19日、ペトロチャイナ・インターナショナルにより、同取引所のプラットフォーム上でデジタル人民元による原油取引を行ったという。
発表によると、原油100万バレルを購入したようだ。なお、売却元と取引価格は明らかにされていない。
同取引所は発表で、この取引は国境を超えた取引であり、「国際貿易でデジタル人民元を積極的に使用する」という上海市党委員会と市政府の要件に対処するSHPGXの取り組みの一環であると述べている。
さらに「国内外の市場で事業を拡大する際、取引所は国内外の市場に、迅速で安定した効率的な取引と決済を提供し、幅広いニーズに応える。これにより、国際資本も中国市場をより開拓できるようになる」と付け加えている。
中国国有の中信証券(CITIC証券)の首席エコノミストであるミンミン(Ming Ming)氏は、中国の電子新聞・チャイナ・デイリーに対し、「人民元の国境を超えた決済と中国通貨の国際化を促進するために、デジタル人民元が十分に活用されるべきである」と主張した。
デジタル人民元による決済は、17日にCNOOC(中国海洋石油公司)と仏エネルギー企業エンジー社(Enfie.Pa)がSHPGXを通じて液化天然ガス(LNG)取引を完了してから2日後に行われた。
同取引所によると、契約に基づきエンジー社は11月に65,000トンのLNGをCNOOCに供給する予定だ。この取引は3月、SHPGXを通じてCNOOCとフランスの大手エネルギー企業トタルエナジーズ社との間で行われた中国初の人民元ベースのLNG取引に続くものだ。
世界銀行間金融通信協会によると、人民元は9月時点で、金額ベースで世界の決済では5番目に多く使用されているという。市場シェアでは3.71%を占める。全体的に9月の人民元の決済額は8月から2.77%増加しており、ほかの基軸通貨による決済額は3.96%減少しているという。
ユーロ圏内での決済を除いた国際決済に関して、人民元は9月にシェア率2.73%で6位。中央銀行の中国人民銀行が発表したデータによると、当座預金による越境人民元決済額は、今年の3四半期で総額10兆1,600億元(約208兆円)に達しており、前年同期比35%増加したという。
アルゼンチン中央銀行は6月、アルゼンチンの銀行システムで人民元の入出金を可能にすると発表している。ブラジル中央銀行も人民元がユーロを超えて同国第2位の国際基軸通貨になったと発表している。
中国はCBDC領域で世界の最先端を行く。デジタル人民元を通じて中国は通貨覇権を掴むことも視野に入れているとされ、今後の動向は引き続き注目を集める。
参考:発表、報道
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