米FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は21日、年2回開催される下院金融サービス委員会の金融政策に関する公聴会で、ステーブルコインについて中央銀行による管理が必要との見解を示した。
これは暗号資産(仮想通貨)に関して言及した際に述べられたもので、パウエル議長は「我々は決済用ステーブルコインを貨幣の一形態とみなしている。すべての先進国において、貨幣の信頼性の最終的な源は中央銀行だ」と語った。
さらに、「連邦政府が非常に強力な役割を担うことが適切だ」と続け、中央銀行がステーブルコインの発行等を管理する必要性を強調した。その上で、「州レベルで民間通貨が発行されることは誤った行為」との認識も示した。
また、パウエル議長は委員会が取り組んでいる暗号資産法案について、FRBの職員が両党議員との協議に参加していると言及した。公聴会の冒頭では、共和党のパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry)下院金融委員長が7月下旬に2つの暗号資産法案をマークアップする予定であると述べている。
マークアップとは、法案が委員会で採決される前に、議論や法案の詳細について修正を進めるものだ。ここでの議論をもとに最終案がまとめられ、採決を経て本会議へ法案が送付される。
パウエル議長は現在の暗号資産市場についても言及し、米国の経済に対する影響力について「ある程度の持続力があると思う」と述べた。その一方で、暗号資産市場の市況は昨年から落ち込んでいると指摘している。
公聴会ではCBDC(中央銀行デジタル通貨)に関しても言及。パウエル議長はCBDCにあたるデジタルドルを発行すべきかについて、「その次元からは程遠い」と語り、現時点で発行可否の判断段階ではないとの考えを示した。
さらに、「個人向けに発行されることを支持しない」と述べ、デジタルドルが発行されたとしても、企業や機関投資家間での決済を円滑にするホールセール型での発行が望ましいとの態度を示した。
これに関連し、パウエル議長は伝統的な金融における米ドルの役割について、改めて現在の地位を維持することが重要であると語った。
暗号資産業界にとって、今回の公聴会でパウエル議長がステーブルコインを貨幣の一種とみなしたことは今後の規制を巡る情勢にも影響を与える可能性がある。
現在、米SEC(証券取引委員会)と暗号資産業界との対立は一層深まっている状況で、一部の暗号資産については証券とみなす見解も示されている。SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長はビットコイン(BTC)を除く多くの暗号資産が証券に該当するとの姿勢をみせており、そのなかには一部ステーブルコインも含まれるものとみられる。
そうした現状を踏まえると、今回のパウエル議長の発言はゲンスラー委員長との温度感の相違を示す形になったといえる。
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