金融庁の井藤英樹長官は、日本における暗号資産(仮想通貨)現物ETFの承認について「慎重に検討する必要がある」と述べた。ブルームバーグのインタビューで述べた。
井藤長官はインタビューで、「暗号資産は必ずしも安定的かつ長期的に日本国民の富の創出に貢献するものではない」と多くの人が考えていると述べた。長官の発言は、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)に直接投資する現物ETFに対する世界の規制当局の姿勢が軟化しているものとは真逆のものだった。
SEC(米証券取引委員会)は、グレースケール(Grayscale)が起こした訴訟で2023年に裁判所が逆転判決を下したことを受けて、1月に初のビットコイン現物ETFを渋々ながらも承認した。
ビットコイン現物ETFは現在までに192億ドル(約2兆8,000億円)の資産流入を集めるなど大成功をおさめている。米国ではさらにイーサリアム現物ETFを承認した。
暗号資産現物ETFは今年、香港、豪州、英国でも承認されている。ほかの国々は、「個人投資家による暗号資産投資に対してはるかに保守的な姿勢」を取っていると、7月に長官に就任したばかりの井藤長官は述べた。
ハッキング被害事件が要因か
暗号資産現物ETFの需要は、暗号資産市場の広範な売りと連動して最近では確かに低下傾向にある。
ビットコインの価格は今週初めには16%下落し、一時的に5万ドル(約730万円)を下回った。イーサリアムは価値の5分の1を失った。その後は若干回復傾向にありビットコイン価格は60,000ドル(約880万円)を上回り、イーサリアムは3,500ドル(約51万円)を上回っている。
井藤長官は、前任者と同様、1998年に財務省に入省したキャリア官僚だ。地方銀行監督局長としてキャリアを積み、財務省と金融庁の両方でさまざまな役職を歴任してきた。
最近では、家計資産を組み込み経済の自立的成長サイクルを促進するという金融庁の取り組みにおいて中心的な役割を担っていた。
金融庁は、過去の知識と経験に基づき、投資商品やサービスが投資家にとって適切であるかどうかをより厳格に審査するようになっている。
井藤氏は、金融庁は「テクノロジー推進の姿勢」を維持していくと述べ、暗号資産現物ETFの可能性自体は完全に否定するつもりはないとも述べた。
「それでも、一般の人々が暗号資産に投資するよう奨励されるべきかどうかについては、検討すべき点がある」と付け加えた。
この背景には日本の暗号資産業界の波乱万丈の歴史があることが要因としてある。暗号資産領域の先駆者的存在だった暗号資産取引所マウントゴックスはハッキング被害に遭い、大規模な資産を失った。暗号資産分析会社のチャイナリシスによると、6月のDMMビットコインは史上7番目に大きなハッキング被害で3億1,000万ドル(約455億円)を損失した。こうした事件を踏まえて井藤長官は慎重な姿勢を崩さないのかもしれない。
参考:ブルームバーグ
画像:Shutterstock
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