2022年に破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの弁護士であるアンドリュー・ディードリッヒ(Andy Dietderich)氏は31日、同取引所の再建計画を断念したと明らかにした。
今後、FTXは顧客に対して全額返済する計画であるという。
ディードリッヒ氏は公聴会で裁判官に対し「現時点では、許可されているすべての顧客及び債権者の請求を全額支払う十分な資金がある」と述べた。
FTXは元CEOで創業者のサム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏が率いていたことで知られる。バンクマン・フリード氏は昨年、FTXの顧客や投資家に対して詐欺を行ったとし、7つの刑事犯罪すべてにおいて有罪判決を受けた。量刑は3月28日に言い渡される予定で、最大で115年の懲役刑が下される可能性がある。
ディードリッヒ氏は、FTXが暗号資産取引所サービスを再開しない理由について「(FTXが)数億ドルで買収した事業はほとんど価値がないことが判明し、関心のある投資家もいない」と言及している。さらに、「収益化すべき貴重な顧客データと情報はある。しかし徹底的に努力しても、取引所の再開に必要な資金を投じる投資家がおらず、コストとリスクも非常に高い」と付け加えた。
FTXの破産手続きを進めているCEOのジョン・J・レイ3世(John Ray Ⅲ)氏は昨年、「FTX取引所の再起動に利害関係者を募るプロセスを開始した」と述べていた。FTXは取引所サービス再開の一環として、ブランド名を変更して再出発を図ることも計画していた。
全額返済予定も資産価値は大幅下落
取引所サービスの再開を断念したことで、FTXは顧客に対して全額返済することとなる。ディードリッヒ氏はこれを「債務者にとっての転機」であると述べた。
その一方で、「いくつか注意点がある」とし、「支払いは求の申し立て日の価値に基づいて行われる。申し立て日までの混乱期に請求された資産の価値は劇的に下落してしまった。多くの顧客や債権者は、最初からそれが本当の全額支払いであると思わないだろう。しかし、私たちは資産価値を決める上で請求日の適用を認識しなければならない」と説明した。
こうした説明から、債権者が得られる請求資産価値は大幅に下がっていることがうかがえる。なお、公聴会では暗号資産を米ドルに変換して返還するという申し立てが承認された。
参考:ロイター
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