デジタル資産分析を行うK33リサーチは14日、2022年に破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの債権者に対して、現金による返済が暗号資産価格の急騰を引き起こす可能性があるとするレポートを公表した。
K33リサーチのアナリストらは、FTXから実施される返済に関連して、暗号資産市場の潜在的な強気傾向につながると予測している。
K33のアナリスト、ヴェトル・ルンデ(Vetle Lunde)氏とアンダース・ヘスレス(Anders Hesleth)氏はレポートで、FTXが債権者に最低145億ドル(約2兆2,600億円)の現金を分配する用意があることを指摘。FTXの破綻時に損失を被ったユーザーによって市場に大きな買い圧力を及ぼすと分析している。この買い圧力は暗号資産に関連するほかのネガティブな影響をも相殺する可能性があるとした。
また、K33のアナリストらはFTXの現金返済と、マウントゴックス(Mt Gox)やジェミニ(Gemini)などほかの事業体が計画している暗号資産の現物返済とを比較している。債権者はこの2社から合計106億ドル(約1兆6,500億円)相当の暗号資産を受け取る予定だ。
アナリストらは、受取人が資産を清算する際に暗号資産ベースの返済が売り圧力を高める可能性がある一方で、FTXからの現金返済は逆効果となり、需要を促進し、価格を安定させる可能性があると主張している。
これらの返済のタイミングは、市場への影響を予測する上で非常に重要である。ジェミニは6月初旬に17億ドル(約2,650億円)の返済を開始する予定で、マウントゴックスは10月までに89億ドル(約1兆3,860億円)を返済する予定だ。
しかし、FTXの返済スケジュールは現在、時期が表明されておらず不透明で、裁判所の承認を待っている状況にある。その一方で債権者らは今年後半には返済を受けることを期待しているようだ。
アナリストらは、こうした返済のタイミングをずらすことで、夏場にみられる市場の低迷を回避することにつながり、年末に向けて市場が活況し続ける可能性があることを強調している。さらに、こうした時間差のアプローチが施されることで、ボラティリティを軽減する潜在的な役割も担う可能性があるとした。
返済について一部では批判的な見方も
K33リサーチは楽観的な予測を示すものの、一部の業界関係者はFTXの返済案に懸念を表明している。
今月8日、FTXは最大163億ドル(約2兆5,400億円)の返済を行うことについて発表。比較的被害額が小規模な請求者は、2022年11月の暗号資産の価格に基づいて損失の100%を超える額を受け取る見込みとなっている。
しかし、デジタル資産のカストディ企業・ビットゴー(BitGo)のCEO、マイク・ベルシェ(Mike Belshe)氏はこの計画を批判し、「すべての債権者に十分な補償を行うには至らない」と主張した。
ベルシェ氏は「なぜ破産手続きがこのように進められる必要があるのかは理解しているが、被害者がお金を取り戻すふりをするのはやめよう」と不満を述べ、一部の利害関係者の間では不満の感情が広がっていることを強調した。
参考:レポート
画像:Shutterstock
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