政府と日銀は26日、日本のCBDC(中央銀行デジタル通貨)にあたるデジタル円について、今後の論点を議論するために初会合を開いた。法律上の課題などを関係機関ごとに整理する方針を確認した。
しかし、デジタル円の発行について政府や日銀は「現時点で発行する計画はない」と説明している。
世界では中国がデジタル人民元のパイロット版を発行しており、欧州連合(EU)がデジタルユーロ発行のために法整備をまとめる段階に入っている状況だ。そのため、日本でも世界に遅れをとることのないよう、CBDCに関する規制整備を早急に進める必要があるとの声もある。
今回の会合に先立ち、昨年12月には財務省の有識者会議が論点整理をまとめている。その際、デジタル円はスマートフォンなどを使って現物の通貨や紙幣と同じようにいつでもどこでも決済ができるものとして想定されている。
論点整理では「導入すると判断した場合には遅滞なく発行できるよう、さらなる具体化を行っていく」としていた。2025年にはキャッシュレス化が40%~50%進むと予測するアナリストもいる。
既存金融への悪影響を抑えるべく保有制限等を検討
有識者会議の論点整理ポイントは下記の通りだ。
- 預金からのシフトによる金融システムへの悪影響を防ぐため保有額の制限を検討する
- CBDCは現金や民間デジタル決済を相互に補完し、円滑に交換できるようにする
- 仲介機関は個人情報や取引情報の所得前に利用目的を明示する
- 日銀に可能な限り情報を所得しない設計、匿名化を要請する
- 政府は不正利用などに応じて情報適用を受けられるようにする
- 導入を判断した場合は遅滞なく発行できるよう、政府によるさらなる制度の具体化を要請する
発行が決まった場合には現預金からの急激な変化により現金融システムへの影響も考えられる。こうした悪影響を防ぐため、保有額の制限を検討すべきであるともした。
政府・日銀は需要がある限り、現物の現金を供給し続ける方針は変わっていない。デジタル円は現金と相互に補完するものであるとの基本方針を明記している。デジタル円の授受などは銀行など民間の仲介機関が担うとした。
利用者の選択肢の確保と利便性の向上につながる前提として、デジタル円が現金や預金、民間の電子マネーと円滑に交換できるようにする設計にする必要もあるとしている。
海外を中心にCBDCの導入に向けた動きが加速するなか、米国ではプライバシーの侵害等を理由に反対する声が強まっている。米大統領選における共和党の有力候補者であるドナルド・トランプ元大統領も、再選した際にはCBDCの発行を断固として阻止する姿勢を貫いている。
日本においても、プライバシーの確保等は発行に向け重要な条件となる。仲介機関には個人情報や取引情報の取得前に利用目的を特定するほか、日銀が情報を得られない制度設計を講じる必要があるとした。
その一方で、マネーロンダリングやテロ資金供与を阻止するため、政府は目的や対象を明確化し、不正利用対策など必要に応じて情報提供を受けられるようにすることも重要であると言及している。
参考:NHK、財務省
画像:Shutterstock
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