世界最大の暗号資産(仮想通貨)運用会社であるグレースケール(Grayscale)は2日、提供するイーサリアム信託「Grayscale Ethereum Trust(ETHE)」をイーサリアム現物ETFに転換するための申請を行ったと明らかにした。
グレースケールによると、今回の申請はSECがイーサリアム先物ETFを承認したことを受けてのものだという。米証券取引所NYSE Arcaの協力のもと、米SEC(証券取引委員会)に提出した。
グレースケールが提供する既存の投資信託は、イーサリアム(ETH)への間接的な投資手段として投資家の需要を集めてきた。現物ETFへの転換を図ることで、イーサリアムの現物に直接投資することとなる。
グレースケールCEOのマイケル・ソネンシャイン(Michael Sonnenshein)氏は発表で、「グレースケールのコミットメントは、投資家に透明性があり、暗号資産へのアクセスを提供することだ」と述べ、イーサリアム信託をETFに転換するのは今が最適であるとの認識を示した。
また、「イーサリアム信託を現物ETFに転換することはサービスを進化させる上で自然な流れであり、イーサリアムを米国の規制対象として取り扱う重要な機会となる」と続けた。
イーサリアム投資信託は2019年3月に設立し、同年5月に公開。現在、同信託は世界最大のイーサリアム投資商品となり、運用資産は約50億ドル(約7,500億円)にのぼる。これは流通するイーサリアムの約2.5%に相当するという。グレースケールによると、約25万人の投資家が保有しているという。
グレースケールのETFグローバル責任者のデビッド・ラヴァール(David LaValle)氏は発表で「この申請は歴史上最も重要なマイルストーンとなる」とし、NYSE Arcaと協力してイーサリアム現物ETFを実現する姿勢を強調した。
現在、世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)などがビットコイン現物ETFを申請しているが、その判断をSECは延期している。米裁判所や米有力議員はSECに対して、先物ETFを許可しているのにも関わらず現物ETFを許可しないのは誤った対応だとして糾弾している。
そうしたなか、SECは先日、イーサリアム先物ETFの申請を認可した。SECはグレースケールとの間で係争中であった裁判で敗訴しており、現物ETFを許可するのは時間の問題であるといわれている。
グレースケールとしては世界に先駆けてイーサリアム現物ETFを手がけたいという思惑がある。短期間で承認される可能性は低いが、世界最大の暗号資産運用会社としてイーサリアム現物ETFを提供した最初の企業体としてのポジションを押さえたい形だ。
参考:発表
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