米連邦控訴裁判所は23日、暗号資産(仮想通貨)運用大手のグレースケール(Grayscale)がSEC(米証券取引委員会)に対して起こした訴訟について、今年8月に下された判決を確定させた。これにより、グレースケールの勝利が確定した。
グレースケールはビットコイン現物ETFの申請を却下したことを不服とし、SECに訴訟を起こしていた。判決が確定したことにより、SECは却下した申請を撤回し、速やかに審査を行うこととなる。
今年8月、裁判所はSECが理由を説明せずにグレースケールが提案しているビットコイン現物ETFを却下したことは誤りであるという判決を下した。これを受けSECは控訴するものとみられていたが、期限である今月13日までに動きはなかった。
暗号資産業界から注目を集めていた訴訟の判決が確定したことは市場にもポジティブに働いた。ブラックロック(BlackRock)が申請するビットコイン現物ETFの承認が近付いていることを受け、24日にビットコイン(BTC)は10%以上上昇したが、グレースケールの勝利も要因の1つとなった。
グレースケールを担当する法律事務所のデービスポーク(Davis Polk)はSECに提出した書簡の中で、「(SECの)現時点でのリソースの最善活用は、ETF商品を承認することに同意することであり、そうなることを願っている」と述べていた。
ビットコイン現物ETFは、個人や機関投資家にビットコインを保有することなくエクスポージャーを与えることになる。SECはこれまで、市場操作に関するリスクなど、投資家保護を十分に行っている証明がないとして、ビットコイン現物ETFの申請を却下してきた。
しかし、ビットコイン先物取引が行われているシカゴ・マーカンタイル取引所との市場監視協定に基づき、ビットコイン先物ETFは承認されている。グレースケールは、両商品ともビットコインの原価に基づく取引になるとして、自社の現物ETFでも同じ設定でリスク回避などが可能だと主張している。
控訴裁判所はこうした背景を踏まえ、SECが先物ETFと現物ETFの取り決めが大きく異なる理由を全く説明していないとして、グレースケールの申請を恣意的に却下したと判断し、今回の判決に至っている。
SECは今年に入り暗号資産関連企業に対する締め付けを強化しているが、注目を集める訴訟では主張を退けられることも増えてきた。
20日には、米リップル社のブラッドリー・ガーリングハウス(Brad Garlinghouse)CEOと元CEOで現会長のクリスチャン・ラーセン(Chris Larsen)氏に対する告発の棄却を裁判所に申し出ている。リップル社への追求は引き続き行うとしているが、事実上裁判からは撤退した形だ。
暗号資産XRPの証券性を巡りリップル社に対してSECが提訴したものだったが、7月の判決では機関投資家へ直接販売したことは連邦証券法に違反する可能性があるが、個人投資家への間接的な販売については違反性がないとの判決が下されている。
参考:判決
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