米連邦控訴裁判所は29日、米SEC(証券取引委員会)が昨年、暗号資産(仮想通貨)運用大手のグレースケール(Grayscale)が提出したビットコイン投資信託をETF転換する申請を却下したことについて、見直すよう命じた。
この裁判は申請が却下されたことを不服として、昨年6月にグレースケールが提訴したものだ。今回の判決は、事実上グレースケールの勝訴を示す形となる。
グレースケールは、ビットコイン先物ETFをSECは承認したものの、現物を直接保有するビットコインETFを承認しないのは恣意的なものだと主張していた。
提出書類によると、判決はグレースケールの審査請求を認め、「SECの命令を取り消す」ように命じている。これはSECが拒否したグレースケールの申請を再審査する必要があることを意味する。
控訴裁判所のネオミ・ラオ(Neomi Rao)判事は判決文で、「SECによる申請却下は恣意的で気まぐれなものだ。ほかの類似商品との違いを説明できていない」とし、グレースケールの主張とも一致した。さらに、SECがビットコイン先物ETFを承認していることをあげ、グレースケールの申請に関しても類似の申請と比較して検討する必要があると述べた。
グレースケールのCEOであるマイケル・ソネンシャイン(Michael Sonnenshein)氏は発表で、「米国の投資家、ビットコインエコシステム、そしてETFを通じてビットコインへのエクスポージャーを提唱してきたすべての人々にとって歴史的なマイルストーンだ」と語った。
今後については、ビットコイン現物ETFを上場させるためにSECと協力して「次のステップを追求する」と付け加えた。
グレースケールに有利な判決が出たことで、ビットコイン(BTC)は一時2万8,000ドル(約420万円)まで上昇するなど価格を大きく伸ばした。アルトコインについてもビットコインと連動する形で価格を伸ばし、暗号資産市場は全面高となっている。
SECは今年に入り暗号資産市場の取り締まりを強化している。6月には多くの暗号資産を有価証券とみなし、証券法違反にあたるとして大手暗号資産取引所バイナンス(Binance)やコインベース(Coinbase)を立て続けに提訴した。
また、2020年に提訴した米リップル(Ripple)社が提供するXRPの有価証券問題については先月判決が下され、機関投資家に販売される場合には無登録証券に該当するものの、一般投資家に販売される場合は有価証券に該当しないと判断された。
SECは一般投資家向けのXRPについても有価証券であると主張していたことから、リップル社に比較的有利な判決が下された格好だ。
現在、米国では資産運用大手のブラックロック(BlackRock)がビットコイン現物ETFを申請するなど、動きが活発になっている。そうしたなかでの今回の判決は、ビットコイン現物ETFの承認に向け大きな後押しとなる可能性がある。
参考:裁判所判決文、グレースケール発表
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