現在も続く暗号資産(仮想通貨)XRPの有価証券問題を巡る裁判で、争点の1つとなっていた米SEC(証券取引委員会)の元法人金融部長であるウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏のスピーチ資料が12日、公開された。
この資料は「ヒンマン文書」とも称され、SECの公式見解を示す重要な証拠として米リップル(Ripple)社が公開を求めていた。これに対し、SECは情報保護等を理由に非公開を裁判所に求めていたが、昨年9月に提出を命じられている。ヒンマン文書が公開されたことにより、XRPは一時価格を伸ばした。
ヒンマン氏は2018年6月、スピーチ内で「ビットコインとイーサリアムなど、一部の暗号資産については有価証券にあたらない」と発言している。その根拠の1つとして、「十分に分散化されたトークンは有価証券にあたらない」との認識を示していた。
焦点となっているのは、このスピーチ資料が完成するまでにSEC職員らとの間でどのようなやり取りが行われていたかについてだ。
リップル社の最高法務責任者であるスチュアート・アルデロティ(Stuart Alderoty)氏は公開されたやり取りを踏まえ、「ヒンマン氏の演説には法的根拠のない分析が含まれ、ハウィー・テストの要因から乖離しており、規制のギャップを露呈させ、市場の混乱だけでなく『さらに大きな混乱』を引き起こしかねない複数の警告を無視したことが明らかになった」と述べた。
やり取りでは、ヒンマン氏のスピーチ資料の草案に対してSEC職員が懸念を示す場面も見受けられた。特にイーサリアムの有価証券性に言及する点では意見が分かれる部分があるとし、「証券にあたらないとの立場を示すなら強い言葉を。断定的な意見を避けるのであればビットコインの説明と同程度の文言を使用すべき」との提案もあった。
またあわせて、「もし注釈を加えたとしても、SECが今後イーサリアムについてこのスピーチと異なる立場を取ることが困難になる可能性がある」との指摘したことも明らかになっている。
このことからも、SEC職員らはイーサリアムの有価証券性について慎重な姿勢をみせるようヒンマン氏に求めていたことがうかがえる。
さらにスピーチに先立ち、ヒンマン氏がイーサリアム財団の役割について自身の認識と相違がないか、またETHを証券として規制する必要の可否についてイーサリアムの創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏と議論する計画があったことも明らかになった。
こうした経緯を踏まえ、アルデロティ氏は「何が、そして誰がヒンマン氏に影響をあたえ、さまざまな不安要素があるにも関わらず懸念が無視されたのか。なぜSECは『より大きな混乱を引き起こす』ことを承知した上でスピーチを宣伝したのか再調査し解明する必要がある」と述べた。
XRPの有価証券を巡っては、2020年12月にSECがリップル社を提訴している。今回の文書が公開されたことにより、リップル社に有利な判決が出る可能性が高まったとの声がある一方、影響は限定的との指摘もあることから、依然として裁判の行方は不透明なままだ。
参考:アルデロティ氏Twitter
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