日立製作所は16日、IoTやブロックチェーン基盤を活用したデジタル環境債「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の発行に向けて、JPX総研、野村證券、BOOSTRYと協業することを発表した。デジタル環境債の発行は、日本取引所グループに続いて国内では2例目となる。
デジタル環境債とは、デジタル技術を活用してグリーン投資に関連するデータの透明性の向上やデータ収集の効率化を目指す債券だ。
グリーン・デジタル・トラック・ボンドは日立とJPXが開発した環境改善効果をタイムリーに参照できるグリーン・トラッキング・ハブに加えて、BOOSTRYが提供するブロックチェーン基盤を活用した社債型セキュリティ・トークン(デジタル債)のスキームを活用している。
4社は今後も本件で協業したスキームを活用してデジタル環境債の発行を促進させ、多くの発行体や投資家が利用可能とすることで、社会全体のカーボンニュートラルの実現に貢献していくという。
日立はデジタル環境債で得た資金を、2030年度までの事業所(ファクトリー・オフィス)におけるカーボンニュートラルの実現に向け、2019年3月に竣工し、2021年度にカーボンニュートラルを達成した中央研究所「協創棟」(省エネルギービル)に関する、建設費用と改修費のリファイナンスに充てるという。
「ibet for Fin」でデジタル環境債を発行・管理
今回発行されるデジタル環境債は、日立が発行会社となる公募STO(セキュリティ・トークン・オファリング)だ。STOとは、発行会社が株式や社債などに代わり、ブロックチェーンを活用したトークンに株式や社債などを表示する「セキュリティ・トークン」によって資金を調達するスキームだ。
デジタル環境債は、グリーンポンドなどのESG債市場において、投資されるプロジェクトが生み出す環境・社会への効果を測定かつ比較可能な指標の形で示すことができれば非常に有効と考えられている。デジタル環境債の発行にあたって、日立は格付投資情報センター(R&I)によりグリーンポンド・フレームワークに対するセカンド・パーティ・オピニオンを取得している。
本デジタル債では、従来の証券補完振替機構による管理ではなく、BOOSTRYが主導するコンソーシアム型ブロックチェーンネットワーク「ibet for Fin」を用いて発行と管理を行い、発行から期中管理、償還までの業務プロセスについてデジタル技術を用いて完結させる。
Ibet for Finに係るシステム上で社債原簿の管理を行い、従来型の社債で困難だった発行会社による社債権者の継続的な把握などを可能にしている。
日立は、デジタル環境債により調達した資金の使用について透明性を高めるため、グリーン・トラッキング・ハブを活用し、資金充当した省エネルギー性能を有する建物のエネルギー消費量を自動計測し、ベンチマークを比較してCO2排出削減量やエネルギー削減量に換算したデータ開示を行う。これにより、投資家はいつでも外部からモニタリングすることが可能になる。
年次のレポーティングだけではない高度の透明性を保持する。また、BOOSTRYへのデータ連携を行い、ibet for Fin上にエネルギー削減量やCO2排出削減量を記録することで、データの透明性や適時性を高めることが可能になるという。
グリーン・トラッキング・ハブではすでに対応済みである再生エネルギー施設からのデータ収集機能に加えて、今回建物からのデータ収集に対応したと説明する。今後、対象となるグリーンアセットを順次拡大していく予定であるという。
なお日立はグリーン・トラッキング・ハブが有するグリーンプロジェクトの環境改善効果の透明性を高める仕組みを応用して、カーボン・クレジットの発行と認証の自動化や、事業会社のカーボン・オフセット支援などにも活用していく計画があるという。
参考:発表
画像:Shutterstock
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