香港の裁判所が、2019年に破綻したGatecoinに関連して、暗号資産(仮想通貨)を信託可能な財産として認める判決を初めて下したことがわかった。
18日の法律事務所Hogan Lovellsの発表によると、リンダ・チャン(Linda Chan)判事は暗号資産に財産属性があることを認めたという。
この決定により、暗号資産を含むデジタル資産の所有権及び性質を認める点で、香港は英国や米国、オーストラリアなど複数の法管轄区域と結論が一致したことになる。
Gatecoinは2016年にハッキング被害で約200万ドル(約2億6,900万円)相当のデジタル資産を失った。その後、決済サービスプロバイダーとの意見の相違で失われた資産を取り戻すことが不可能となり、事業継続が困難に陥った。
2019年3月には、香港裁判所が暗号資産取引所サービスの運用停止命令と同時に強制清算命令を発出。翌日、清算人が任命された。
清算人はGatecoinが保有している暗号資産が信託されたものと判断すべきか、それとも一般の債権者が利用できる資産としてみなすべきかについて裁判所の指導を求めていた。
今回の判決によると、Gatecoinの場合、取引所が暗号資産の返還前の保管と管理に責任を負う受託者の立場に置かれるという。
Gatecoinが保有する暗号資産は昨年10月31日の時点で1億4000万香港ドル(約24億円)を超えていたようだ。チャン判事はGatecoinの債権者の資金は信託されていないと判断したが、暗号資産は本質的に財産に該当するすべての性質を持っているとの判決を下した。
また、Hogan Lovellsはチャン判事の判決が「暗号資産が法的に信用できる」ものであることを意味すると付け加えている。さらに、「暗号資産の保有が株式や他の無形資産と同等の財産を構成するという認識は、ほかの法管轄区域と一致したものだ」と述べた。
各国の事例として、米国や英国において暗号資産に財産価値があるとの判決がすでに下されている。また、中国においても2019年「通貨としての合法性はないが仮想資産として商品価値があり法律で保護される財産」との判例が出た。
香港では暗号資産を始めとするデジタル資産のハブを目指す動きが加速しており、今回の判決は追い風となる可能性がある。
ポール・チャン(Paul Chan)財務長官は4月に開催された「香港Web3.0フェスティバル2023」において、「Web3.0開発の前提は金融システムの安定性と投資家保護が損なわれてはならないということ。香港がWeb3.0デジタル経済に投資をする機は熟している」と述べている。
参考:Hogan Lovells
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