シンガポール金融管理局(MAS)は30日、日本の金融庁、スイス金融市場監督庁(FINMA)、英国金融行為監視機構(FCA)など15の金融機関と提携し、現実資産をトークン化させるプロジェクトを開始したことを発表した。
債券、外国為替、資産管理商品などにおける、トークン化のパイロットテストを進める計画だ。
日本、スイス、英国の各当局は、シンガポール金融管理局が昨年に立ち上げたデジタル資産に関する官民連携イニシアチブ「Project Guardian(プロジェクト・ガーディアン)」の政策立案者グループを構成することになる。
シンガポール金融管理局は政策立案者グループを立ち上げた理由として、試験運用の規模が拡大し洗練されるにつれて、政策立案者と規制当局の間で国境を越えた緊密な協力が必要になってきたとしている。
MASは、政策立案者グループの目的として以下の項目をあげている。
- デジタル資産の法的、政策、会計上の取り扱いにおいて議論を進める
- 潜在的リスクとトークン化されたソリューションに関連する政策や法律のギャップを特定する
- デジタル資産ネットワークの設計のための各国共通標準を設定し、さまざまな管轄区域にわたる市場のベストプラクティスを検討していく
- 国境を超えたデジタル資産開発をサポートするため、高水準の相互運用制を促進する
- 規制サンドボックスを通じてデジタル資産のパイロット版をテストする
- 規制当局と業界間の知識共有を促進する
MASのサブ・マネージングディレクター(市場開発担当)であるレオン・シン・チオン(Leon Sing Chiong)氏は、今回のパートナーシップについて、「デジタル資産のイノベーションから生じる機会とリスクに関する理解を深めていきたいという政策立案者の願望を表したものだ」とした上で、「パートナーシップを通じて、国境を超えた相互運用性とデジタル資産エコシステムの持続可能な成長を適切にサポートする共通の標準と規制枠組みの開発を進めていきたい」と述べた。
金融庁は6月26日、プロジェクト・ガーディアンへオブザーバーとして参加することを発表していた。
資産のデジタル化については各国や各企業が取り組んでいるが、それに伴い金融安定や公正性に係るリスクを管理する必要がある。また、アセット・トークナイゼーション等のデジタル技術の活用可能性について、パイロット版を通じて検証を重ねる必要があるという。現在は、債券、外国為替取引、資産運用等の分野でパイロット実験が行われている。
金融庁・総合政策局参事官の柳瀬護氏は発表に際し、ブロックチェーン技術がWeb3.0を含め中長期的にイノベーションの源泉となる可能性があるとして、「シンガポール金融管理局や金融機関との協働を通じて、本領域における知見を高めていければと思います」と述べていた。
参考:発表
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