三菱UFJ信託銀行は先月31日、国内初となる「暗号資産信託」の提供に向け、暗号資産(仮想通貨)ウォレット事業等を手がけるGincoと協業を開始したことを発表した。
日本が暗号資産発行市場として健全かつ魅力的な環境となることを目的として、暗号資産発行体にとって適切な税制の適用と機関投資家による暗号資産投資が可能なスキームを実現する。
2023年度中の商用化を目標とし、Gincoを始めフィナンシェやHeadline Asiaなどの共同検討参加者と共に必要な関係当局との手続完了及び対象となるトークンのベスティング(権利確定)にあわせた社会実装を目指す。
三菱UFJ信託銀行では、デジタルアセット全般の発行・管理基盤である「プログマ(Progmat)」の開発に先駆け、暗号資産に係る規制を定めた資金決済法の施行にあわせて、暗号資産を対象とした特許を2件取得している。暗号資産信託の提供については、約6年前から模索していたようだ。
今回、三菱UFJ信託銀行が暗号資産信託の提供に舵を切った背景には昨年10月の法改正がある。これにより、国内でも信託銀行本体によるカストディ業務提供が可能となった。
法改正以前は、2018年に発生した暗号資産の流出事件をきっかけとして規制が強化され、銀行本体が暗号資産を対象とした業務を行うことができなかった。
また、自社発行トークンなど条件を満たした暗号資産について、今年6月に国税庁が発表した法令解釈通達に伴い期末時価評価の対象外となったことも影響したものとみられる。
この税制改正により、暗号資産を発行するスタートアップなどがこれまで以上に事業展開をしやすくなったことから、暗号資産信託の需要増に備える形となった。
今回協業するGincoは暗号資産交換業者など金融機関が利用する業務用暗号資産ウォレット「Ginco Enterprise Wallet」などを手がけている。
こうした実績を踏まえ、Gincoは「Ginco Enterprise Wallet」の機能提供のほか、パブリックブロックチェーン上の暗号資産管理に必要な技術知見提供を行う。
三菱UFJ信託銀行は暗号資産信託のスキーム開発や同サービスにおける受託者としての信託業務を提供する。また、信託対象となる暗号資産の秘密鍵管理等を含むカストディも同行が担う。
三菱UFJ信託銀行は今年に入りWeb3.0領域での動きを活発化させている。
今月には、デジタル社債向け標準インフラの構築に向けNTTデータと提携を発表。また、6月にはDatachain及びTOKIとパブリックブロックチェーン上で発行されるステーブルコインにけるクロスチェーンインフラ構築を目的として技術提携を開始した。
参考:発表
画像:発表より引用