OECD(経済協力開発機構)は10日、暗号資産(仮想通貨)を利用した脱税対策として、2027年までにCARF(暗号資産報告フレームワーク)を採用すると発表した。日本を含む加盟国が署名し、英国政府がCARFを実装する。
共同声明に署名したのは日本のほか、米国、アルメニア、豪州、ベルギー、カナダ、ブルガリア、韓国、など48ヵ国だ。
発表では「暗号資産市場の急速な発展と成長に歩調をあわせる」という点が強調され、「世界的な税制面での透明性向上が損なわれないよう、OECDによって策定された税務当局間の自動情報交換に関するあたらしい国際基準を歓迎する」と述べられた。
また、CARFが広範かつタイムリーに実施されることにより、税務コンプライアンスの確保と脱税の取り締まり能力が向上することにつながると強調。今後、適用される国内立法手続きを条件としてCARFを迅速に国内法に適用させ、2027年までの情報交換開始に間に合うように協定を結ぶとしている。
CARFでは、対象となる暗号資産の範囲、データ収集、報告義務の対象となる事業体や個人、報告の対象となる暗号資産取引と暗号資産保有者を特定するためのデューデリジェンスが含まれる。あわせて、報告や交換を目的とした「納税地の決定」も盛り込む。
これにより、OECDに加盟する海外暗号資産取引所で取引をした際、その情報が居住国の規制当局にも共有されることとなる。たとえば、日本居住者がCECD加盟国の海外暗号資産取引所で取引を行った際、国税庁等に情報が共有される。
OECD事務総長のマティアス・コーマン(Mathias Cormann)氏は発表で、「本日の発表は暗号資産に対する国際的な協調において大きな前進だ」とコメント。さらに、今後CARFに実装や国際間での情報共有実現に向け迅速に対応するとの姿勢を打ち出した。
今年6月にCARFの法的及び運営上の方針が決定されて以来、グローバルフォーラムは作業を進めるための専門チームを設立していた。暗号資産の脱税に関する問題は、今月29日から来月1日までポルトガルのリスボンで開催されるグローバルフォーラムの総会で議論される予定であるという。
個人間取引などの追跡では課題も
暗号資産の脱税に関する問題や対策を巡っては、各国において常に議論の中心となっている。これらのなかにはマネーロンダリングやテロ資金供与に関連したものもあるとされ、早急な対策が必要不可欠であるといえる。
一方、対策を講じる上では追跡が難しい部分もある。実際、一部の国や地域ではOTC取引で現地両替商などが取引を仲介する場合もあり、米国で摘発されたミキシングサービスを利用する動きも見受けられる。このような取引が行われた場合、追跡が困難になるのが実情だ。
しかし、法的に厳格な処分を課し、国際間で情報交換を行うことで、一定の効果及び抑止力となる可能性がある。なお、今回の共同声明には中国やロシア、インドなど一部の国は署名していない。
参考:英国発表、OECD発表
画像:Shutterstock
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