SBIホールディングスは9日、年内にWeb3.0、フィンテックやAIなどのスタートアップ企業に投資するファンド「SBIデジタルスペースファンド(SBI Venture Fund2023投資事業有限責任組合)」の運用を開始することを発表した。
金額は1,000億円規模となるという。日本で遅れているWeb3.0スタートアップの育成を支援し、日本のWeb3.0領域への進化に貢献することを目的としている。ファンドを立ち上げ、Web3.0新興企業に成長資金を供給し、日本のWeb3.0テクノロジーを促進させることが狙いだ。
三井住友銀行、みずほ銀行、日本生命保険、大和証券グループ本社などがすでに合計500億円超の出資を決めている。来年6月までには1,000億円規模の資金を集める予定であるという。投資先の企業の選択は始まっており、合計で150~200社になる見込みだ。
Web3.0やメタバースといったあたらしいテクノロジーに加え、SBIがこれまでに注力してきたAIやヘルスケア領域の新興企業に投資を実施していく。1件あたりの投資額は数億円~数十億円になる見通しで、ファンド開始から2~3年で投資を行う。
ファンドの運用を担うのはSBIインベストメント。今まで累計7,000億円超のベンチャーファンドを組成し、2020年設立の「SBI4+5ファンド」は出資約束額が1,000億円となっていた。国内では1,000億円規模のベンチャーキャピタルファンドはほとんど存在しない。
SBIの担当者は「世界で戦っていけるスタートアップ企業を育てるには、資金力のある出し手の存在が不可欠だ」と述べた。あたらしいWeb3.0領域へのファンドを通じて、創業直後の企業の成長を後押しするという。
▶︎ファンドの主な出資者
新興企業への資金供給は日本全体の課題
世界では、ChatGPTに代表される生成AIなどのあたらしいテクノロジーが次々と開発されている。日本はWeb3.0領域において世界から取り残されているのが現状だ。
新興企業への資金供給は、日本全体の課題でもある。日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)によると、スタートアップの資金調達額は米国が1,984億ドル(約30兆円)、中国は466億ドル(約7兆円)に対して、日本は66億ドル(約1億円)と米国の30分の1しかないという。
それでは成長する産業においても企業が育つことができない困難な状況だ。
機関投資家の投資対象となる規模に達しないままIPOを実施する「スモールIPO」も問題となっている。未上場ながら企業価値が10億ドルを超えるユニコーン企業も、米国では昨年6月時点で500社を超えるが、日本では10社にも満たない。
成長期の新興企業に資金を投入する投資家が少ないことが背景にあり、もう少し資金があれば莫大な成長を遂げたと思われる例は枚挙にいとまがない。
Web3.0領域で資金不足に悩む新興企業は多いので、今回のファンド立ち上げはスタートアップにとってまさに朗報ともいえる。
参考:発表、日本経済新聞
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