SEC(米証券取引委員会)が、昨年3月からイーサリアム(ETH)を有価証券に該当する疑いがあるとして調査を始めていたことがわかった。メタマスク(Metamask)の開発で知られる米ブロックチェーン企業のコンセンシス(Consensys)が裁判所に提出した書類によって明らかになった。
提出書類によると、SECの執行局局長のグルビル・グルワル(Gurbir Grewal)氏が昨年3月、「イーサリアム2.0」に関する正式な調査命令を認可したことが明らかになった。この正式な命令により、イーサリアム取引に関与した個人や団体などを調査し、召喚するための広範な権限がSEC職員に与えられた。
イーサリアム2.0は2022年9月にコンセンサスアルゴリズムをPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へと移行したアップデートに関するものだ。
書類によれば、この調査は「イーサリアムを含む特定の証券の売り出しや販売の可能性」が少なくとも2018年以降に発生していたというSECの信念に基づいているという。
SECはイーサリアムが有価証券である可能性が高いと判断しているが、それはジェイ・クレイトン(Jay Clayton)氏が委員長を務めていた頃のガイダンスと矛盾することになる。同年6月、当時の企業財務局長であるウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏は講演でイーサリアムはビットコインと同様、有価証券ではないというSECの立場を述べていた。
また、SECは昨年4月13日にイーサリアムの調査命令を正式に発行したようだ。それからわずか5日後にゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長が下院金融サービス委員会に出席したが、その際イーサリアムに関する質問への回答を度々拒否していたと指摘している。
その後、SECはコンセンシスを含むイーサリアムに投資している多数の個人や団体に召喚状を発行している。関係者によれば、コンセンシスはSECから召喚状を受け取ったイーサリアム関連商品を手がける数少ない企業の1社であるという。
イーサリアムの規制に注力する姿勢
コンセンシスは先月25日にSECに対して訴訟を起こした。イーサリアムを有価証券に分類しようとするSECの試みは規制上、行き過ぎであると主張し、これによりイノベーションを抑制し、開発者、投資家、イーサリアムの分散インフラストラクチャを活用する団体に対して悪影響を与える可能性があると主張している。
イーサリアムの規制について、SECが最近注力しつつある姿勢が浮き彫りとなっている。2018年当時、ゲンスラー委員長はマサチューセッツ工科大学での講演で、イーサリアムは有価証券とはみなされないと述べていた。しかし、イーサリアムがアップデートを経てPoSに移行した後、ゲンスラー委員長のスタンスは一変した。
なお、コンセンシスは3月に4度目の召喚状をSECより受け取っている。その後、先月10日にはECが企業や個人に対して法的措置を講じることを事前に通知するウェルズ通知(Wells Notice)も受け取った。SECは未登録の有価証券を提供する未登録のブローカー・ディーラーとして活動した疑いで同社に対しても執行措置を起こす意向を表明した。
参考:裁判資料
画像:Shutterstock
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