SEC(米証券取引委員会)は20日、暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)を未登録の証券取引所、ブローカー、ディーラー、清算機関として運営を行なっていたとし告訴した。
SECの訴状によると、2018年9月以降、クラーケンは有価証券としてみなされる暗号資産の売買を違法に促進し、数億ドルの利益を稼いだとしている。
SECはクラーケンが暗号資産取引所、ブローカー、ディーラー、清算機関のサービスについて、法律で義務付けられているサービスの登録を怠っていたと述べる。これにより、投資家はSECによる検査、記録保持要件、利益相反に関する保護措置などの重要な保護を受けることができなかったと説明している。
クラーケンの違反内容
具体的にSECが指摘したクラーケンの違反内容は下記の通りだ。
- 非裁量的方法を用いて複数の買い手と売り手の証券注文をまとめ、そのような注文が相互作用する市場の提供
- クラーケンの顧客口座の証券取引を実行するビジネスに従事し、ブローカーとして機能
- 自己口座で有価証券を売買するビジネスに従事し、ディーラー業務を行う
- クラーケンの顧客による未登録証券とみなされる暗号資産の取引を仲介したほか、証券保管機関及び清算機関として機能
SECは訴状で、クラーケンの商業行為、内部統制の不備、不十分な記録管理の慣行が顧客にさまざまなリスクをもたらしていたと主張している。クラーケンは顧客の現金を保管している口座から運営費を直接払うなど、顧客の資金と自社資金を混同していると指摘した。
また、クラーケンは顧客の暗号資産と自社保有分の暗号資産を混同し、自社の監査人が顧客にとって「重大な損失リスク」を生み出し続けているという。
SEC執行部ディレクターのガービル・S・グレワル(Gurbir S. Grewal)氏は声明で「我々はクラーケンが証券法を遵守しておらず、投資家から数億ドルを得る経営上の決定を下していると主張する。利益相反がはびこるビジネスモデルを作り、投資家の資金を危険に晒している」と述べた。
さらに、「投資家保護より不法利益を追求するクラーケンの選択は、この分野で頻繁にみられるものだ。今日私たちはクラーケンの不正行為の責任を追求するとともに、ほかの企業にも法律を遵守するメッセージを送っている」と続けている。
クラーケンはSECに反発
SECによる告訴を受け、クラーケンは「私たちはSECに同意することはしない。法律は私たちの味方だ」と反発した。
クラーケンへの訴状に対して、詐欺行為、市場操作、ハッキングやセキュリティ侵害による顧客損失、受託者義務違反はないと説明している。また、取引には多額のドルが含まれているが、そのドルのうち1ドルたりとも紛失及び悪用しておらず、顧客資金を1対1で完全に保管しているほか、ポンジスキームや適切な準備金の維持の失敗などもないため、SECの主張はどれも真実ではないと主張している。
さらに、クラーケンがサポートするデジタル資産は、実際には「投資契約」であるため、同取引所のビジネスを運営するには特別な証券ライセンスが必要であるというが、これは法律、事実の両面において誤りであり、SECの対応は「悲惨だ」と述べている。こうしたSECの主張は、ほかの裁判で完全に却下されていると付け加えた。
クラーケンは10年以上にわたって運営されており、米国、英国、欧州連合、カナダなど、新興市場を含む世界各国でライセンスを取得し、認可、承認を得ていると主張した。
クラーケンは声明で、「私たちの使命は、誰もが経済的自由と包括性を達成できるように、暗号資産の導入を加速することだ。今日のニュースが私たちの任務の邪魔になることはない。当社が提供するサービスには影響なく、当社は中断することなく引き続きサービスを提供していく」と述べた。
今年に入り、SECは暗号資産業界の企業に対して厳しい取り締まりを続けている。
こうした状況を受け、米議会ではSECから暗号資産業界を保護する超党派の法案が審議されている。この法案はSECによる暗号資産業界への行き過ぎた取り締まりを阻止するものだ。
参考:SEC発表、クラーケン声明
画像:Shutterstock
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