SpaceX(スペースX)は26日、Apollo Global Management(アポロ・グローバル・マネジメント)が運用する事業体と、GPUと関連機器を対象とする約400億ドルのマスター・ファイナンスリースについて、拘束力のある合意に達したと発表した。導入するのは、NVIDIA(エヌビディア)の次世代チップ「Vera Rubin」だという。
SEC(米証券取引委員会)に提出した8-K(臨時報告書)によると、確約書の日付は今月24日で、正式な契約は年内に締結する見込みだ。GPUは複数回に分けて引き渡され、リース期間はそれぞれの開始日から約5年〜5年3ヵ月となる。賃料は四半期ごとの前払いで、融資額の20分の1に相当する額と未払残高に対する固定金利などで構成され、金利はマスター・リースの締結前に決める。
資金の拠出はApolloとGoldman Sachsが主導し、Goldman Sachsが単独のストラクチャリング・エージェントを務める。BlackRockが運用するファンドやGoldman Sachs Asset Management、KKRが助言する資本も、アンカー投資家として加わった。GPUは宇宙ではなく地上のデータセンター網の整備にあて、AI「Grok(グロック)」の提供やクラウドサービスの顧客向けに使うとしている。
SpaceX CFOのブレット・ジョンセン氏は発表で「SI(スーパーインテリジェンス)インフラへの投資では、回収期間が1年を切っている」とコメント。あわせて、今回のリースは資金調達先の多様化につながると説明する。
SpaceXが今月22日に提出した10-Q(四半期報告書)によると、9月30日時点で同社が抱える長期の借入金や社債(長期債務)と、実質的に分割購入にあたるリース契約の支払い義務(キャピタルリース債務)は、合計388.44億ドルだった。今回のリースの元本は約400億ドルで、こうした既存の負債をすべて足した額を1件で上回る。全額が実行されれば、賃料のうち元本の返済にあたる分だけで四半期ごとに約20億ドル、年間では約80億ドルを支払う計算だ。
今月20日に発表した7〜9月期決算では、AI事業を担うSI部門の売上高が75.60億ドルとなり、全社の売上高145.75億ドルの半分を超えた。売上高でみれば、AIはすでに同社の中心事業になっている。一方、利益の面ではまだ投資が先行している。同部門の設備投資は164.44億ドルと売上高の2倍を上回り、営業利益は4.31億ドルにとどまった。Starlink(スターリンク)を含むコネクティビティ部門の営業利益23.67億ドルと比べると、約5分の1の水準だ。
投資は今後さらに膨らむ見通しだ。決算説明会でジョンセン氏は、10〜12月期の設備投資を350億〜400億ドルとする見通しを示した。7〜9月期の全社の設備投資は195.93億ドルで、そこから約1.8〜2倍に増えることになる。
SpaceX CEOのイーロン・マスク氏は今月25日、Xへの投稿で、AI向けの資金調達環境が急速に厳しくなっているとの認識を示した。「ここ数週間で、債務市場はAIデータセンターから独立した十分な収益を持たない企業への資金供給をほぼ完全に止めた」という。AIデータセンター事業のほかに確かな収益源を持たない企業には、金融機関や投資家が資金を貸さなくなった、という指摘だ。
その上で、GPUを貸し出す事業を専業とするクラウド企業(neocloud)について、「200社超のneocloudは、グッピー級の死と統合を迎える。生き残るところもあるが、多くはない」と続けた。資金が途絶えることで、neocloudの多くが経営破綻や再編に追い込まれるとの見立てだ。SpaceXがこうした企業を買収するのではないかとの臆測に対しては、「SpaceXはneocloudを買収しない。意味がない」と返信し、否定している。
マスク氏は同じ投稿で、400億ドルの調達を「完了した」とも書いた。しかし、Bloombergは関係者の話として、今月25日夜の時点でも金利などの価格条件をめぐる協議が続いていたと報じている。8-Kでも、契約の締結には一定の条件を満たすことが前提とされており、手続きはまだ完了していない。
資金調達の仕組みも、当初の報道からは変わった。今月6日、Financial Timesは、SpaceXがApollo主導で約400億ドルの調達を協議していると報じていた。当時は、約100億ドルを銀行融資、約300億ドルを投資適格債でまかない、SpaceX自身が資金を借りてチップを購入する計画とされていた。しかし実際に発表されたのは、Apolloが運用する事業体がGPUを購入・保有し、それをSpaceXに貸し出す形だった。
こうした「第三者が半導体を買い、使う企業に貸し出す」仕組みには先例がある。ApolloとBlackstone(ブラックストーン)がAnthropic向けに組成した案件だ。特別目的会社がGoogleのTPU(テンソル処理装置)を購入してAnthropicにリースし、リース終了後のTPUの価値をBroadcom(ブロードコム)が保証する内容とされる。規模は5月の報道時点で約360億ドル、6月に約350億ドルで組成を終えたと伝えられた。
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