米投資銀行TDコーウェンのジャレット・サイバーグ(Jaret Seiberg)氏が率いるワシントン・リサーチ・グループは29日、イーサリアム(ETH)現物ETFについて、「今年承認を得られることはなく、承認されるのは2025年以降になる」と予想した。
理由として、「SEC(米証券取引委員会)はまずビットコイン現物ETFから経験を積みたいと考えているだろう。そのため、当分はほかの暗号資産現物ETFを承認することはないだろうと予測している」と述べた。
さらに、SECがイーサリアム現物ETFの証券取引所への上場と取引を可能にする規則変更案を決定する必要がある点を指摘。これについても「SECが現時点で承認する可能性は低い」と主張している。
TDコーウェンは「最終的に規則変更を拒否する可能性がある。その場合、あらたな申請か訴訟につながることになる。どちらにせよ、決着まであと1~2年はかかるだろう」と見解を示した。これらのことから、TDコーウェンはイーサリアム現物ETFが承認されるのは「2025年後半~2026年初頭」と予想した。
SECはヴァンエック(VanEck)のイーサリアム現物ETFの申請について5月23日までに決定を下す必要があるが、アナリストの間では5月の承認の可能性について意見がわかれている。
DeFi予測サービス・ポリマーケット(Polymarket)の調査では5月までの承認確率を47%と予想している。また、JPモルガンの一部幹部は「50%ほどあろう」と見解を示した。ブルームバーグのETFアナリストのジェームス・セイファート(James Seyffart)氏は楽観的で、「承認確率は60%」と述べている。
政治的背景が要因との分析も
TDコーウェンは承認される可能性が低い理由として「暗号資産(仮想通貨)に対する政治的な問題」をあげている。「これは政治的な問題だ。今月初旬にSECがビットコイン現物ETFを承認したが、民主党のなかには動揺した人間も多かった。SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長がイーサリアム現物ETFを承認することについて政治的にプラスになることはない」と言及している。
TDコーウェンは、民主党政権によって現職に就いたゲンスラー委員長が自身の立場を守るために「政治的配慮が必要」と考えているだろうと推測する。
引き続き職務にあたるためには、ジョー・バイデン米大統領とドナルド・トランプ前大統領のどちらかが勝利した際のことを踏まえ、両政党から支持を得るための2つのシナリオを準備する必要がある。現時点で米大統領選は接戦にもつれ込むとの見方が強く、双方の動きを探る意味でもゲンスラー委員長にはイーサリアム現物ETFの承認について急ぐ必要はないとの考えがあるはずだと分析した。
ビットコイン現物ETFが承認された際の投票では、民主党委員の2名は反対票を投じていた。一方で、共和党委員2名は賛成票を投じており、ゲンスラー委員長もビットコイン現物ETFの承認可否に関する裁判の結果や世論の風当たりの強さを考慮し賛成に回っている。
ゲンスラー委員長の後ろ盾ともいえる民主党のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員はビットコイン現物ETFについて不満を主張していた。ゲンスラー委員長はこうした背景も考慮しながらイーサリアム現物ETFについて判断を下す必要が出てくる。
参考:The Block
画像:Shutterstock
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