米ドルに裏付けられたステーブルコイン・USDTを開発、運営するテザー(Tether)社は31日、第3四半期の準備金報告書を公開した。世界トップ5に入る独立系会計事務所BDOが報告書を裏付ける証明書を作成した。2023年9月30日時点でテザー社が保有する資産の内訳を示している。
BDOはテザー社の準備金の証明を毎四半期ごとに公表している。四半期終了から報告書の公表まで約1ヵ月の遅れが生じるが、現在テザー社は2024年にはリアルタイムで監査報告を提供するシステムの開発に取り組んでいる。
報告書によると、USDTの準備金における現金と現金同等物の割合は過去最高となる85.7%に達した。その大部分は米国国庫短期証券であることが明らかになった。直接的及び間接的エクスポージャーは726億ドル(約11兆円)となっている。
また、報告書ではテザー社が提供している有担保ローンの額が3億3,000万ドル(約500億円)と減少したことを強調した。ローンの減少は金融資産を慎重に管理するというテザー社の信頼を高め、暗号資産(仮想通貨)分野における透明性と説明責任への取り組みを強調するものであるとしている。
リスク管理戦略と暗号資産市場価格のボラティリティのリスク管理を行うため、現金と現金同等物に対する投資からの収益は10億ドル(約1,510億円)に達したことも発表した。
また同時に、本年は第3四半期までの研究分野における投資が総額8億ドル(約1,210億円)に達したことも明らかにした。第3四半期だけで約6億7,000万ドル(約1,014億円)の投資を実施したという。この投資は準備金の一部には含まれていない。
準備金の余裕は、市場の変動に関わらず安定している。金(ゴールド)とビットコイン(BTC)の価格は大幅に回復しており、ゴールドの在庫は1億1,600万ドル(約175億円)、ビットコインのポジションは1億9,500万ドル(約295億円)の減少となっていた。しかし、金及びビットコインの先月の価格上昇によってこれらの減少を相殺したという。
テザー社グループ全体の連結資産総額は約864億ドル(約13兆円)に達した。一方、連結負債総額は約832億ドル(約12兆5,800億円)。そのうち約831億5,000万ドル(約12兆7,700億円)は暗号資産に関連するものであるという。よってテザー社グループの連結資産は連結負債を約32億ドル(約4,840億円)上回る。
テザー社では、持続可能エネルギー、ビットコインのマイニング、データ、P2Pテクノロジーへも投資を行っているという。これらについては準備金には含まれない。2023年第3四半期にこれらの領域に行った投資は約6億6,890万ドル(約1,012億円)に達し、年初から累計で8億ドルを超えた。
テザー社の目標は、超過準備金と未分配利益を活用して、準備金から有担保ローンを削減し、最終的にゼロにすることだ。9月30日時点で32億ドルの超過準備金があり、USDT準備金の一部となる有担保ローンは20億ドルまで減少している。
10月31日時点では42億ドル(約6,354億円)の超過準備金に達しており、有担保ローンは9億ドル(約1,360億円)まで減少している。テザー社が抱える有担保ローンについては批判を受けていたが、減少を加速化させている。
参考:報告書
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