ドナルド・トランプ(Donald Trump)米前大統領は11日、CNBCのトーク番組「スクワークボックス(Squawk Box)」に出演し、インタビューのなかでビットコイン(BTC)について触れ、「あらたな通貨形態だ」と述べた。これまで暗号資産(仮想通貨)に対して批判的な態度を示してきたトランプ氏が、態度を軟化させた格好だ。
トランプ氏はこれまで、暗号資産やビットコインを「詐欺などの違法行為を助長させている」と述べるなど、一貫して否定的な姿勢をとっていることで知られていた。しかし、今回のインタビューにより暗号資産への考えが比較的前向きな方向へと転換していることがうかがえた。
トランプ氏は従来の主張を変えることなく、「世界基軸通貨として米ドルの地位を維持することが最優先事項であると考えている」と明言した上で、「米ドルが基軸通貨としての地位を失うことは、米国経済への打撃となる。各国が米ドルの取り扱いを廃止することを許すことはできない」と続けた。
その一方で「ビットコインは今までたくさん使われてきたが、現時点でそれを取り上げたいかどうかはわからない」と述べ、暗号資産の市場環境が成熟化してきたことに伴い、ビットコインもさまざまな場面で使用されてきたことを認めた。
その上で、「考えてみれば、ビットコインはあたらしい形の通貨だ」と言及し、これまでの立場を一変させた。
これまでの考えを軟化させた一方、「私は1つの通貨が望ましいと考えているし、なかでもドルが欲しいし、人々にドルから離れてほしくない。ドルは命を吹き込まれている」との見解を述べ、あくまでもドルの存在が最優先であることを強調した。
トランプ氏は今年2月に限定スニーカーを販売しており、決済手段として暗号資産に対応していた。同氏はその際の決済について触れ、「非常に多く人々が暗号資産で支払いをしており、その額は信じられないほどだった」と驚きを示している。
大統領選を大きく意識か
トランプ氏がビットコインについてコメントしたのはこれが初めてではない。以前、サウスカロライナ州での共和党予備選に先立つフォックスニュースやタウンホールイベントで「暗号資産には規制が必要である」と述べており、それ以前はビットコインについて否定的な態度をみせていた。
しかし、自身のNFTコレクションやプロジェクトに暗号資産を組み込んだことで考え方に変化が生まれた可能性もある。
さらに、今年11月に行われる米大統領選において、特に若者を中心に暗号資産政策へ前向きな候補者を支持する姿勢が浮き彫りになったこともトランプ氏の選挙戦略に影響を与えた可能性が考えられる。
運用大手グレースケール(Grayscale)が昨年実施した調査では、大統領戦の候補者について「暗号資産を含む最新テクノロジーへの知見を有するべきだ」との回答が7割以上にのぼった。
また、米暗号資産取引所コインベース(Coinbase)の調査によれば、カリフォルニア州の暗号資産保有者のうち、5人中4人が「暗号資産政策に前向きな候補者を支持する」と答えている。
このような情勢も踏まえ、自身が暗号資産に対して前向きな態度を示していることをアピールする狙いもあるものとみられる。
なお、トランプ氏はCBDC(中央銀行デジタル通貨)については「絶対に認めることはない」と発言し、明確に否定する発言を繰り返している。
参考:CNBC Television
画像:Shutterstock
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