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Web3.0暗号資産金融・経済

オンチェーン金融の「実装」を議論したブロックチェーンカンファレンス、「Blockchain Summit 2026 Autumn」イベントレポート

2026/10/14 18:00(2026/10/16 08:12 更新)

Iolite 編集部

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オンチェーン金融の「実装」を議論したブロックチェーンカンファレンス、「Blockchain Summit 2026 Autumn」イベントレポート
目次
  1. 登壇者30名超・11プログラムで問われた「実装」
  2. 元デジタル大臣・平将明氏が語った「AI時代のオンチェーン金融」
  3. メガバンクの現在地──「キャッシュレス前夜」の既視感と、流動性規制への問い
  4. JCB・SBI VCトレード・DCPが描いた「意識しない決済」
  5. 「JGBを使える場所を増やす」──みずほ銀行・野村HD・三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  6. 暗号資産ETF、コインチェック德力氏が語った「必ずしもスピード勝負ではない」
  7. まとめ:ブロックチェーン技術、普及の道筋

登壇者30名超・11プログラムで問われた「実装」

2026年10月5日、Pacific Meta Groupが主催するブロックチェーンカンファレンス「Blockchain Summit 2026 Autumn」が、東京・大手町の大手町サンケイプラザで開催された。基調講演4本とパネル7本の計11プログラムに、メガバンク、証券会社、資産運用会社、決済事業者などから30名超のスピーカーが登壇した。

会場で際立ったのは、ステーブルコインやトークン化が「構想・実証」から「実装」のフェーズへ移行したという共通認識だ。自民党の平将明衆議院議員は、日本のステーブルコイン制度が整備を終え、実利用のフェーズに入ったと言及した。暗号資産ETFをめぐる金融機関の議論も、勉強会から実行へとシフトしているという。

キーフレーズは、ステーブルコイン、トークン化預金、DVP(Delivery Versus Payment:証券と資金の同時受け渡し)、国債(JGB)のトークン化、暗号資産ETF(上場投資信託)、そしてAIエージェント。先行する米国との差をいかに埋め、伝統的金融の「信頼」をどう融合させるのか。主要セッションの議論からその回答を紐解く。

元デジタル大臣・平将明氏が語った「AI時代のオンチェーン金融」

Shota Iwasaki image

開幕の挨拶に登壇したPacific Meta 代表取締役社長の岩崎翔太氏は、オンチェーン金融の普及度を具体的な数値で示した。2025年のステーブルコイン取引高は推計33兆ドルに達し、同年のVisa(16兆ドル)とMastercard(10兆ドル)の合算規模を凌駕する。

続いて、株式やコモディティといったRWA(現実資産)の躍進を示す実例として、分散型デリバティブ取引所「Hyperliquid」に言及した。2023年設立の同取引所だが、2025年の取引高は約450兆円を記録し、東証プライム市場(約1,600兆円)の3割弱に迫る規模へと急成長している。

特筆すべきは、その取引の内訳である。すでに取引高上位は純粋な暗号資産ではなく、S&P500や原油、NVIDIA株などに価格連動する銘柄が占めているという。暗号資産の取引所という認識を超え、伝統的資産の取引がオンチェーン上で主流になりつつある現状こそが、オンチェーン化金融の本格的な社会浸透を如実に物語っている。

最後に岩崎氏が「オンチェーン金融は日本にとって国家的なテーマである」と力説し、その本質的な意義として「資産価値の防衛」と「資本アクセスの改善」を提示。カンファレンスは本格的な幕を開けた。

Masaaki Taira image

続く基調講演には、自由民主党「次世代AI・オンチェーン金融構想プロジェクトチーム(PT)」で座長代理を務める元デジタル大臣・平将明氏(衆議院議員)が登壇した。平氏によると、同PT発足の契機は昨年のダボス会議だという。AIエージェント同士の決済には既存の銀行口座が機能せず、自律的な「AI経済圏」が誕生するという議論に触発され、座長に木原誠二氏を迎えて2026年の提言取りまとめに至った経緯を語った。

平氏は現在の国内動向について、JPYCやSBIグループなどの台頭により、日本のステーブルコインはすでに「実利用のフェーズ」へ移行したと指摘した。またトークン化預金に関しても、DCPやGMOあおぞらネット銀行が主導する実証実験に、2026年8月時点で43社が参加を表明している現状を明かした。

提言の柱の1つに据えるのが、日銀当座預金のオンチェーン対応だ。これについて平氏は「日銀の動きは若干遅いと感じている。さらに働きかけを強めていきたい」と率直な見解を述べ、政府主導で実装を後押しする姿勢を鮮明にした。

踏み込んだ施策はほかにも及ぶ。ステーブルコインやトークン化預金の公金給付への活用検討をデジタル庁に要請したほか、国債レポ取引のDVP決済を見据え、財務省にはJGB(国債)のトークン化を求めたという。また、AIエージェントが自律的に取引を行う際の責任の所在や、民法上の代理権に関する法的整理も関係部局に指示するなど、省庁横断的なアプローチを進めている。

こうした提言を受け、直近の9月30日には金融庁で「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の初会合が開催された。金融担当大臣を座長に、有識者を始め金融庁、デジタル庁、財務省、日本銀行、全国銀行協会が参画し、2027年初頭には中間整理と工程表(ロードマップ)が示される見通しだ。

平氏は講演の結びに、「決済領域に重点が置かれていたこれまでの議論を拡張し、今後はアセット側とウォレットに関する議論を深めていく」と語り、次なるフェーズへの意欲を示した。

メガバンクの現在地──「キャッシュレス前夜」の既視感と、流動性規制への問い

Panel discussion between SMBC and Pacific Meta

続くパネルセッション「SMBC × Pacific Metaが語るオンチェーン金融の未来」には、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)執行役専務グループCDIOの磯和啓雄氏、同デジタル戦略部ダイレクターの下入佐広光氏、そして岩崎氏が登壇した。

Akio Isowa

磯和氏はこのオンチェーン金融隆盛の引き金として「エージェンティックAI(自律型AI)」の存在をあげる。ステーブルコイン領域で米国が先行している要因については、「規制の前に流通が拡大した米国に対し、日本は法整備が整って初めて実務が動くというお国柄の違いがある」と分析した。それでも「決して今から追いつけないような絶望的な遅れではない」と強調し、現在のフェーズを「国内でキャッシュレス決済が普及し始めた2014〜2015年頃の熱量に近い」と表現した。

Hiromitsu Shimoirisa image

一方で下入佐氏は、日本の緻密なステーブルコイン法制が、かえってイノベーションの足枷になり得るリスクに言及する。海外の銀行コンソーシアムがパブリックチェーンを志向するなか、相互運用性(インターオペラビリティ)の確保でガラパゴス化しないことが喫緊の課題だという。とりわけパブリックチェーンに踏み込む際の最大の障壁となるのがAML(マネーロンダリング対策)であり、発行体としていかなる基準で資金をロックするかの実務設計が問われていると語った。

議論は、既存銀行の収益構造という核心にも切り込んだ。岩崎氏が「米国ではCoinbase(コインベース)に預けたステーブルコインに年利3.5%程度の利回りが付く」という実例をあげ、あらゆる資産を運用しながらシームレスに決済へ転用できる未来像を描き出す。

これに対し、オンチェーン化に伴う預金流出の懸念を問われた磯和氏は変化は漸進的である可能性が高いと前置きしつつも、DVP決済が実装されれば債券と預金の間にある流動性の壁は事実上消滅すると指摘した。「NSFR(安定調達比率)など、現行の銀行の流動性規制の在り方を根本から議論すべき時期にきている」と問題提起した。さらに、人間とは比較にならない頻度で取引をこなすAIエージェントの台頭でトランザクションが100倍規模に跳ね上がり、そこにあらたな金融の収益機会が創出されるとの展望を示した。

セッションの結びに磯和氏は、「どの銀行が発行したコインか」というブランドの違いは本質ではないと断言した。「重要なのはDVPとプログラマビリティの実現だ」と力を込め、SMBC単独の経済圏に固執するのではなく、日米欧でシームレスに相互運用可能なステーブルコインをいち早く構築したいと意気込みを語った。下入佐氏もこれに同調し、「決済インフラ自体はもはや差別化の源泉ではない。今後の競争領域は、UX(利便性)や利回り、そしてあらたなアセットの提供へとシフトしていく」と総括した。

JCB・SBI VCトレード・DCPが描いた「意識しない決済」

Panelists from JCB, SBI VC Trade and DeCurret discussing on-chain payments

パネルセッション「人とAIにとって"当たり前"のインフラへ オンチェーン決済の本格導入とその先」では、異なる立ち位置から決済インフラを支える3社が議論を交わした。カード加盟店網とステーブルコイン決済の接続を牽引するJCB(ジェーシービー)イノベーション統括部長の山口朋晃氏、ステーブルコインの入り口となる暗号資産取引所を運営するSBI VCトレード代表取締役社長の近藤智彦氏、そしてトークン化預金プラットフォームを提供するDCP執行役員の福家康文氏だ。

「3〜5年後の決済の未来図」について、福家氏は「AIに指示するだけで購入から決済まで完結する世界が、5年後には一部で実装される」と予測した。近藤氏も「給与のうち10万円分が自動的にステーブルコインへ振り替わり、その範囲でAIによるエージェンティックコマースが日常的に行われるようなユースケースであれば、3〜5年で十分に実現し得る」と展望を語った。

対照的に、山口氏は「3〜5年後に日本の決済・金融インフラの主役がステーブルコインに置き換わっているかといえば、決してそうではないだろう」と冷静な見方を示した。既存のカード事業にとっては「脅威」と「機会」の双方が混在しており、当面はクロスボーダー送金やB2B決済など、裏側(バックエンド)の処理を効率化する決済手段の一つとして社会実装が進むとの立ち位置をとった。

Yasufumi Fuke image

議論のなかで福家氏は、混同されがちな「ステーブルコイン」と「トークン化預金」の性質の違いを明確に整理した。トークン化預金は銀行法に基づく「預金」として預金保険の対象となり、主にプライベートチェーン上で発行される。一方のステーブルコインは資金決済法上の「電子決済手段」であり、パブリックチェーンにおけるボーダーレスな利便性に強みがある。両者は競合するものではなく、法人が期末の資産保全にはトークン化預金を、期中の機動的な運用や決済にはステーブルコインを用いるといった「用途に応じた使い分け」が進むという。

Tomohiko Kondo image

この1年の実証実験を通じて浮き彫りになった課題も、極めて具体的だった。近藤氏によると、USDCなど海外発行のステーブルコインは1回あたりの送金上限が100万円(約6,700USDC相当)に制限されており、大口の企業間決済には実質的に使えないのが現状だ。また、2026年6月に流通を開始した円建てステーブルコイン「JPYSC」も、現時点ではSBI VCトレードの口座内での利用にとどまっている。

しかし近藤氏は、8月末に金融庁が公表した税制改正要望に「信託型の円建てステーブルコイン」の取り扱いが盛り込まれた点に言及した。「確定ではない」と前置きしつつも、税制改正が順調に進めば、来年(2027年)4月にもパブリックチェーンでの流通が可能になる見通しを示した。信託型のステーブルコインには1回100万円の送金上限がかからないため、実現すればユースケースは飛躍的に広がることになる。

Tomoaki Yamaguchi image

一方、山口氏によると、JCBは既存のPOS端末にステーブルコイン決済を組み込む実証実験でシステムの正常稼働を確認したものの、実店舗でのUX(ユーザー体験)には課題が残ったという。「コンビニのレジ待ちに耐えうる処理速度の担保」や、「ウォレットの提示から署名(シグネチャー)に至るまでの手間の解消」などだ。また、現段階では大手加盟店側にも売上をステーブルコインで受け取る強い動機は生まれていない。

福家氏は、トークン化預金普及の最大のハードルとして「各銀行の勘定系システムとの接続に伴う莫大な改修負担」をあげ、業務とシステムの標準化が不可欠だと指摘した。現在、金融庁の決済高度化プロジェクト(PIP)に採択された銀行間決済の実証実験には約40行が参加しており、そのうち約30行を地域金融機関が占めている現状を紹介し、システム共通化を通じた地方からのボトムアップの機運が高まっていることを示唆した。

「JGBを使える場所を増やす」──みずほ銀行・野村HD・三菱UFJモルガン・スタンレー証券

Panelists from Mizuho Bank, Nomura Holdings and Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities discussing tokenization of Japanese government bonds

午後のパネルセッション「金融の中核・国債のオンチェーン化」には、JGB(日本国債)トークン化の最前線に立つ大手金融機関から、みずほ銀行決済営業部長の日置貴史氏、野村ホールディングスデジタルアセット戦略推進部長の佐々木俊典氏、三菱UFJモルガン・スタンレー証券市場エンジニアリング室特命次長の糸﨑真一郎氏が登壇した。Pacific Meta(パシフィックメタ)執行役員・ブロックチェーン研究所所長の松本頌平氏のモデレートのもと、白熱した議論が交わされた。

現在、国内では2つのJGBトークン化プロジェクトが進行している。1つは、みずほ銀行、野村證券、JSCC(日本証券クリアリング機構)による共同プロジェクトだ。技術開発をDigital Asset(デジタルアセット)社が担い、JGBの法的性質を維持したままブロックチェーン上で扱い、クロスボーダー決済などのユースケース創出を目指している。もう1つは、三菱UFJ銀行・信託・証券のグループ3社によるJGBの「日中レポ取引」オンチェーン化構想であり、こちらにはProgmat(プログマ)とDigital Asset社が支援に回る。両プロジェクトに共通するのは、基盤技術として「Canton Network(カントンネットワーク)」を採用している点だ。

セッションで注目を集めたのは、「なぜMUFGは単純な売買ではなく、レポ取引を最初のユースケースに選んだのか」という論点である。糸﨑氏は、JGB売買における現行の「T+1決済」を、仮にオンチェーン化で「1分後決済」にまで短縮した場合、「在庫を持たない証券会社は価格提示ができなくなり、結果として市場の価格発見機能が損なわれる」と構造的な課題を指摘した。そこで白羽の矢が立ったのが、数時間単位で資金を融通しあう超短期のレポ市場だ。オンチェーン化によって金融機関が決済準備として積む余剰資金(バッファ)を圧縮できるポテンシャルがあり、先行する海外ではすでに米国債の日中レポ取引などが稼働し始めているという。

この「グローバルとのスピード差」に強い危機感を示したのが日置氏だ。米国では早ければ10月末にも、DTCC(米国証券預託機関)において現物資産のオンチェーン取引が本格稼働する見込みだという。日置氏はグローバル投資家の視点に立ち、「『米国資産はオンチェーンで決済できるが、日本資産はできない』という事態は避けなければならない」と語り、日本が約1年のビハインドを背負っている現状に警鐘を鳴らした。

また、両陣営が基盤にCanton Networkを選定した理由について、佐々木氏が「米国の主要プレーヤーがすでに参画しているネットワーク効果の大きさ」をあげれば、糸﨑氏も「KYC(本人確認)を通過した参加者のみで構成されるコンソーシアム型の性質が、高いコンプライアンス水準を求める伝統的金融と極めて相性が良い」と技術的な合理性を補足した。

今後の展望と課題について、日置氏は「実装スピードの引き上げ」と「民間プロジェクト同士の分断回避」を提起した。佐々木氏は「現行の振替制度との整合性を保ったままのオンチェーン化」を最重要テーマに位置づけた。日本銀行やほふり(証券保管振替機構)をも巻き込んだ業界横断的なインフラ刷新に向けて、官民が一体となった取り組みが不可欠であるとの認識を強く共有し、セッションは締めくくられた。

暗号資産ETF、コインチェック德力氏が語った「必ずしもスピード勝負ではない」

パネルセッション「暗号資産ETF、実装の現場 解禁までの課題と論点」には、第一線でETFビジネスを牽引する3名が登壇した。フランクリン・テンプルトン・ジャパンでETFビジネスを統轄する向井大貴氏、コインチェック金融法人戦略部長の德力創一朗氏、そして野村アセットマネジメント運用部部長の上崎勲氏だ。

Soichiro Tokuriki image

德力氏によれば、国内の運用会社や信託銀行はすでに「2028年1月」をターゲットに見据え、暗号資産ETFの組成に向けて本格始動している。「昨年や一昨年とは異なり、現在は運用手法やオペレーションの詳細を詰める、完全なる『実行』のフェーズにある」と同氏は現状を分析した。上崎氏もこれに同調し、解禁想定までの残り約15ヵ月で、実務に耐え得るオペレーション設計を完了させると明言した。

先行する米国市場の事例として德力氏が着目したのが、BlackRockの動向だ。同社の暗号資産ETFは市場参入こそ後発だったものの、結果的に大きな資金流入を集めている。德力氏によると、その勝因は単なる手数料競争ではなく「情報開示の質」にある。たとえばイーサリアムのステーキングを組み込んだ商品では、目論見書でステーキングの仕組みや潜在的なリスクを解像度高く開示し、機関投資家の厳格な投資委員会(インベストメント・コミッティ)の審査を通過しやすい設計を施したのだという。「ETF組成は必ずしも先発優位のスピード勝負ではない」という、実務者ならではの示唆だ。

Mukai Daiki image

米国市場の現在地について、向井氏は「ETFというビークルの登場により、機関投資家を含む広範な層からの資金流入が定着した」と解説した。議論の焦点はすでに「暗号資産がETFとして機能するか」という初期の問いから、「機関投資家のポートフォリオのなかでどう機能させるか」というアロケーションの段階へ移っているという。日米の投資家心理の違いを問われると、向井氏は「米国の投資家が積極的で、日本の投資家が慎重だとは一概にいいたくない」と応じた。両者の差は投資姿勢の違いではなく、市場環境の発達段階の違いに過ぎない、という整理だ。

Uesaki Isao image

今後の商品戦略について上崎氏は、ビットコインETFが信託報酬の低さだけで比較され、コモディティ化しつつあるリスクを認めた。その上で、「投資委員会を説得しやすい商品ストラクチャーの構築」や「伝統的資産と組み合わせたポートフォリオ提案」こそが、運用会社にとって真の差別化要因になると強調した。また、既存の証券口座で株式や債券と一元管理できるという、ETFならではのUXの優位性も改めて確認された。

一方で、乗り越えるべきハードルも少なくない。德力氏は、複数の暗号資産を組み込む多銘柄型や、ステーキング型のETFを国内の法制度のもとで組成・運営するには、投信経理や税務処理の面でなお課題が多いと指摘した。カストディ(保管)を担う事業者の立場からも「実際のAUM(運用資産残高)がどこまで伸びるかは未知数」と率直に語り、市場を広げるには業界全体で投資家教育や情報発信の底上げに取り組む必要があると訴えた。

まとめ:ブロックチェーン技術、普及の道筋

閉幕の挨拶に登壇したPacific Meta(パシフィックメタ)共同創業者CBDOの邵鴻成氏は、国内のキャッシュレス決済比率が2015年の18%から2025年には約46%(従来の国際比較指標)へと急伸した軌跡を引き合いに出し、現在のオンチェーン金融の立ち位置は「キャッシュレス普及前夜の熱気と酷似している」との見立てを示した。

企業や個人が「資金を使うその瞬間まで常に資産を運用し、その最適な運用をAIエージェントが自律的に担う世界」について、邵氏は「これが現実となるのは、文字通り時間の問題だ。なぜなら、圧倒的に便利だからだ」と強く断言した。一方で、あたらしいテクノロジーや決済手段を社会に浸透させる上では、「既存の伝統的金融機関が長年かけて築き上げてきた『信頼と信用』の基盤こそが、何よりも不可欠な要素となる」と強調した。次回となる「Blockchain Summit 2027 Spring」は、2027年3月4日に同じく大手町サンケイプラザで開催される予定だ。

【参加登録はこちら】

1日を通じたセッション全体から浮き彫りになったのは、オンチェーン金融をめぐる国内の議論が、「技術的に実現可能か(Can do)」という検証フェーズを終え、「どのように実務へ実装し、社会普及させるか(How to deploy)」という実行フェーズへ完全に移行したという事実だ。

ステーブルコイン、トークン化預金、JGB(国債)のトークン化、暗号資産ETFといったいずれのテーマにおいても、登壇者たちは先行する米国とのスピード差や遅れを冷静に認めつつも、日本市場が持つ「既存金融の圧倒的な信頼感」をアドバンテージとして捉え、十分にキャッチアップ可能であるという見解で一致していた。

その一方で、金融機関の勘定系システム改修に伴うコスト負担、パブリックチェーンにおける処理速度やUX(ユーザー体験)の課題、法的整理や税制改正の進捗、民間プロジェクト間の孤立・分断回避など、クリアすべき実務的ハードルも極めて具体的に提示された。

2027年4月にも見込まれる信託型ステーブルコイン(JPYSC等)のパブリックチェーン流通や、2028年1月をターゲットに動く国内初の暗号資産ETF組成など、今後1〜2年で訪れる構造変化の節目から目が離せない。

写真:Shogo Kurobe

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