“スタートアップの祭典”で岸田首相がメッセージ
開幕の挨拶には運営責任者のWhiplus氏やHeadline・IVC創業パートナーの田中章雄氏らが挨拶。現在、日本のマーケットに注目が集まり、魅力的な環境になりつつあるといった旨が語られた。
その後、今年も岸田文雄首相がビデオメッセージで登場。現在進められている「あたらしい資本主義」の考え方のなかで、スタートアップがその核を担い、成果が着実に生まれつつあることを強調した。また、「世界が日本に注目している」と述べ、今後もスタートアップ支援を継続していくとともに、「日本のスタートアップを世界に羽ばたかせる」と宣言した。
▶︎岸田首相のビデオメッセージ
日本のWeb3.0ゲームの普及に向けた大企業の見解
YGG Japanの椎野真光氏がモデレーターを務め、コナミの金友健氏、DeNAの田中翔太氏、スクエアエニックスの畑圭輔氏が参加したセッション「日本のゲーム会社におけるWeb3戦略」では、国内大手ゲーム企業の視点でWeb3.0ゲームの普及で必要なことが語られた。
▶︎左から椎野氏、畑氏、金友氏、田中氏
セッションのなかで、畑氏は「稼げるが先行すること自体は悪くないが、本当のゲーマーを呼び込むのであれば状況を変える必要がある」と言及。また、コミュニティの重要性や、体験ベースで何が必要か考え、その上で結果的にWeb3.0技術が使われるべきだと強調した。
また、金友氏は「強固なファンがいれば話は別だが、トークンを出すことでゲームよりもそちらに意識が向かう。まずはNFTを重視すべきで、ゲームが面白ければファンもついてくると述べた。
Web3.0ゲームの普及のタイミングについて、まず畑氏は「いつでも普及のチャンスはある」とした上で、ブロックチェーンに情報を刻むということをムーブメントにしたいと語った。また、金友氏は「IP=ファン。普及はIP次第だ」との認識を示した。最後に田中氏は「局所的にグローバルでは普及しつつある。コミュニティが重要だ」と述べた。
いずれにしても、三者のコメントからはブロックチェーンゲームの正攻法について引き続き手探りで進めていく必要があり、その上でゲーム内トークンの在り方についてもよく考えていく必要があると示された形だ。
“ブロックチェーンゲームを再考せよ”
ゲームに特化したブロックチェーン・Oasysを手がける松原亮氏と、さまざまなブロックチェーンゲームの開発に携わるdouble jump.tokyoの上野広伸氏によって行われた「ブロックチェーンゲームを再考せよ! Oasysの戦略とは?」でもブロックチェーンゲームの現状が語られた。
両者の認識として、大手を含めさまざまなコンテンツがOasys上で作られている状況にあり、特に松原氏は「コンテンツの充実度ではOasysは世界一」と自信を覗かせた。さらに、これからブロックチェーンゲーム領域が加速していくことを踏まえ、「これからが本当のローンチだ」と述べ、今夏からOasysを活用したコンテンツが多数出ることを予告した。
また、松原氏はブロックチェーンゲームの現状について「まだマスアダプションしているコンテンツはない」とし、日本は特に可能性を秘めた市場だと力説した。その理由として、日本はトレードが好きかつ、課金率やFXの取引量で世界一であることをあげ、「ブロックチェーンゲームでも世界一になるポテンシャルがある」と説明している。
▶︎登壇する上野氏
上野氏も具体的な例としてテレグラムを通じてプレイ可能なブロックチェーンゲーム「ハムスターコンバット(Hamster Kombat)」をあげ、ゲームのシンプルさなどをからマスアダプションする可能性があると語った。
一方、やはり税制の問題があり、NFT販売などの初動は良くてもセカンダリーの流動性が良いとはいえないとも指摘した。
ブロックチェーンゲームのマスアダプションの可能性としては、現状を踏まえるとユーザー数や円安などの自国通貨不安を踏まえ、日本でも人気を博してもおかしくない状況と松原氏は語る。上野氏は、ユーザーと事業者の双方でマスアダプションをしていく必要があると述べ、同社としてもブロックチェーンゲーム領域をリードしていく姿勢をみせた。
▶︎登壇する松原氏
このほか、double jump.tokyoが現在開発している人気ゲーム「三国志大戦」のIPを活用した「Battle of Three Kingdoms - Sangokushi Taisen -」のリリースについて、上野氏は今年中にリリースすることを改めて示唆した。
NFTがもたらすビジネス領域での可能性とWeb3.0ビジネスの現在地
「日本におけるNFTビジネス新潮流:新たな可能性を探る」と題されたセッションでは、テレビ朝日の増澤晃氏、SBINFTの高長徳氏、デジライズの茶圓将裕氏、集英社の金丸尚史氏、JR九州の牛島卓二氏が登壇。
このセッションでは「コンテンツを持っている企業のユースケースは増えつつある」と高氏が述べた一方、金丸氏は「ユーザー目線を持ったプロデューサーが不在という課題がある」と指摘。
また、ファン及びユーザーがどう楽しむかを考えたプロジェクトの裏側に、トークノミクスがあるかを考え始められる段階に現在あるとの認識を示した。その上で、IPホルダーや原作者にお金が回る設計と透明性が重要だというのがセッションの主題となった。
▶︎左から茶圓氏、高氏、金丸氏、増澤氏、牛島氏
Web3.0ビジネスに関しては、SHAKE entertainmentの原島和音氏、N.Avenue/CoinDesk JAPANの神本侑季氏、平将明衆議院議員、Startale Labs Japanの海老島幹人氏、double jump.tokyoの満足亮氏が登壇した「世界と勝負する、日本発チェーンの『勝ち筋』」でも語られた。
このセッションでは、平氏が「AIとWeb3.0は相互に現在地を確認しながら相互に作用していく」と述べ、その上で時代を上回るメリットの提供が必要になるとの認識を示したことが特に印象的だ。さらに、大企業との連携が進行することを望むとした。
▶︎左から神本氏、原島氏、平氏、満足氏、海老島氏
いずれのセッションでも、Web3.0技術が現在進行系で使われていることが示され、その上で社会実装化するために解決すべき課題へどのように向き合うか語られた形だ。
迫る「2025年大阪・関西万博」に向けた現在の状況
いよいよ来年に迫った「2025年大阪・関西万博」。そこで使用することが予定されている「EXPO2025デジタルウォレット」の話題を中心に、三井住友フィナンシャル・グループの磯和啓雄氏、神田潤一氏、2025年日本国際博覧会協会の河本健一氏、HashPortの吉田世博氏が「2,820万人が訪れる2025年大阪・関西万博で日本のWeb3とFintechはどのように変わるか」に登壇した。
▶︎左から吉田氏、河本氏、磯和氏、神田氏
このセッションのなかで、河本氏は地方との連携でNFTが重要視されると言及。また磯和氏はEXPO2025デジタルウォレットを通じて顔認証だけで物品の購入ができる仕組みを導入することで「決済への没入感」を与えることができると述べた。その上で、すでにウォレットが当初の想像よりも利用されていると語った。
神田氏もNFTを活用することで、さまざまな地域との連携が可能になるとの認識を示し、「Web3.0は地方創生との相性が良い」とコメント。河本氏は地方や事業者との連携を通じて「万博を契機にWeb3.0が進めば」と期待感を示し、磯和氏もウォレットが人々にとって身近なものになってほしい」と願いを込めた。
セッションのモデレーターを務めた吉田氏は、「私たちは情熱を持って取り組んでいる。引き続き情熱を持って推し進めていきたい」と締めた。
境界線を超えた熱気
以上、ここまでIVS Crypto 2024 KYOTOの注目セッションを中心に当日の様子をお届けした。
昨年に続き京都を舞台として3日間開催されたIVS 2024 KYOTO及びIVS Crypto 2024 KYOTOでは、3日目途中の時点で12,000名が来場したと公式発表があった。これは過去のIVS史上、最多来場人数となる。
IVS Crypto 2024 KYOTOでは、昨年よりもブロックチェーンゲームに関するセッションが多く、また注目度も高かった印象だ。今後、日本のIPを活用したあらたなゲームの誕生に、国内外のプレイヤーがますます注目することだろう。
このほか、昨年盛況となった再度イベントも京都のさまざまな地で開催され、その数は公式に登録されているものだけで300を超えた。
“Cross the Boundaries”、 「境界線を越えよう」をテーマに開催された本イベントは、熱気と興奮が冷めないまま幕を閉じた。“スタートアップの祭典”ともいえるIVSを通じて、参加者の多くが次世代の波を感じ、また収穫を得たはずだ。
今回のイベントを機に、世界を驚愕させるあらたなスタートアップの誕生に期待したい。
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