日本の有望スタートアップが集結! 「Web3 Salon – VC Connect」イベントレポート

2025/09/18 17:30 (2025/09/18 17:53 更新)PR
Iolite 編集部
文:Shogo Kurobe
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日本の有望スタートアップが集結! 「Web3 Salon – VC Connect」イベントレポート

有望なスタートアップが東京に集結

8月25日及び26日の2日間にかけて、有望なスタートアップが一堂に会した「Web3 Salon – VC Connect」が開催された。

このイベントは同日に開催された「WebX2025」のサイドイベントとして、「Web3 Salon」が主催する形で実施。各国のVC(ベンチャーキャピタル)などを招いたセッションのほか、日本のスタートアップ10社によるピッチが行われた。

Web3 Salonとは?

Web3 Salon image

Web3 Salonは、一般社団法人Asia Web3 Alliance Japan(AWAJ)がジェトロ(日本貿易振興機構)と連携して推進する戦略的な取り組みで、Web3.0エコシステムにおけるイノベーションの促進や投資機会の創出、グローバルなパートナーシップの強化を目的としている。また、ジェトロの支援のもと、世界中のVCを招待し、日本のWeb3.0スタートアップの成長と国際展開の支援を行う。

Web3 SalonではWeb3.0スタートアップ、ベンチャーキャピタリスト、機関投資家をつなげることでイノベーションやコラボレーションを加速させることで、日本のブロックチェーン及びWeb3.0分野での地位向上に寄与することをミッションとしている。取り組みを通じて志を同じくするイノベーターが集い、グローバルな連携やあらたなアイデアの創出、分散型イノベーションの未来を切り拓くための架け橋として、機能することを目指している。

公式サイトはこちら

Asia Web3 Alliance Japanとは?

Asia Web3 Alliance Japan image

Asia Web3 Alliance Japanは、アジア全域から260以上の企業や個人が参加する団体で、国際的なビジネス機会と日本市場(政府および企業セクターを含む)との懸け橋となることを目指す団体。アジア及び日本でのWeb3.0業界の協力、成長、革新を促進し、戦略的なパートナーシップの機会を提供するとともに、市場参入支援やWeb3.0業界の規制及び教育に関する活動を行っている。

また、会社設立、ビジネス成長、国境を越えたシナジーに焦点を当て、規制に対する洞察と文化的理解を提供する。さらに、アジアと日本でのWeb3.0企業の利益を念頭に置き、市場拡大のためのカスタマイズされたソリューションの提供も行う。

公式サイトはこちら

代表者メッセージ ヒンザ・アシフ(Hinza Asif)

Hinza Asif

私は日本を拠点とするビジネスウーマンとして、国際市場での豊富な経験を活かし、日本のWeb3.0エコシステムが持つ独自のニーズを深く理解しています。

私の専門知識を活用して、日本のWeb3.0スタートアップが世界のビジネスチャンスを掴み、事業を拡大できるよう支援するとともに、次なる成長と革新のステージへと導いています。

本年は、私の招待により海外投資家がWebXへの参加のために来日し、日本のWeb3.0市場について直接理解を深める機会を設けました。これにより、日本と世界のブロックチェーンコミュニティとの架け橋がさらに強固なものとなるでしょう。

以下に、参加者の一部をあげます。

Investor list

日本のWeb3.0は「大きな変化の時期」を迎える

ここからは注目セッションをいくつか紹介する。

まず「グローバルブロックチェーンエコシステムにおける日本の役割」と題したセッションでは、Ava Labs Head of Japanの平田路依氏と、一般社団法人Japan Blockchain Weekの絢斗優氏が登壇。このセッションではグローバルなブロックチェーンエコシステムにおける日本の優位点、また日本の規制がブロックチェーンの普及にどのような影響をもたらすのかなどが語られた。

まず絢斗氏は日本のブロックチェーンエコシステムの特徴について、「暗号資産の規制整備が非常に早かった国の1つ。金融庁は早い段階で暗号資産の定義を明確化し、シンガポール政府も日本の制度を参考にしたことがある」と言及した。その一方で、「規制が厳格すぎるために、DeFi などのあたらしい試みとの連携が難しいという課題もある」とも指摘した。

Yu Ayato

また、平田氏は日本のWeb3.0について「大きな変化の時期」と述べた。特にステーブルコインを活用した決済分野でのチャンスが広がるのではないかとし、2026年に見込まれるさまざまな法改正も重なり期待感を示した。

このセッションでは日本のスタートアップによる海外進出についても見解が述べられ、海外市場へのリーチをより効率よく行うためにも「世界で成功するには多様なメンバー構成が重要」との見解も示された。

Roy Hirata

開発、VC、アクセラレーターからみたWeb3.0スタートアップに必要な要素

Draper Universityのクリス・ジョアンヌ(Chris Joannou)氏、TRIVE Digitalのショーン・タン(Shawn Tan)氏、そしてDFINITY Foundationのハーバート・ヤン(Herbert Yang)氏が登壇したセッションでは、次世代のWeb3.0人材が成功するために必要な国境を超えたスタートアップ支援について語られた。

ヤン氏が所属するDFINITY Foundationは、レイヤー1ブロックチェーン・ICP(Internet Computer Protocol)に関連する非営利団体。これまでの活動から「開発者にとって、ブロックチェーン選びは事業の成否を左右する」と述べた。その上で、重要な3要素として「自由度の高い開発環境(キャンバス)」「セキュリティの担保」「助成金やコミュニティ支援」をあげた。

また、シンガポールを拠点とするVCファンドマネージャー・TRIVE傘下のファンドであるTRIVE Digitalのタン氏は、投資家からみたスタートアップの評価に言及。VCはプロダクト完成前でも「ビジョンとチーム力」を評価するとした上で、「トレンドに乗るだけでなく、本当に価値のある問題を解決しているかが重要だ」と述べた。さらに、市場が追いつくまで生き残れる力も重視すると語っている。

Draper Universityで創業者支援等を行うジョアンヌ氏は、トークノミクスや暗号資産特有の要素を考慮しつつも、「基本的なビジネス基盤」の重要性を忘れてはいけないと強調した。さらに、海外展開に向けたアドバイスでは日本のスタートアップに対して「早期にグローバル展開を視野に入れるべき」とした上で、現地文化にあわせたサービス設計を推奨した。

このほか、印象的だったのは起業家への3つのアドバイスとしてあげられた「行動力:すぐに手を動かし、早く市場検証を行うこと」「AIの積極活用:MVP構築までのスピードを劇的にあげる手段として必須」「信念を持つこと:変化の激しい業界で事業を続けるには強い信念と一貫性が重要」といった要素だ。開発者、VC、アクセラレーター、いずれの視点からみても、Web3.0領域ではスピード感を持って取り組むとともに、信念をどれほど持ち貫き通せるかが重要になるということが強調された形だ。

Session material
左からクリス・ジョアンヌ氏、ショーン・タン氏、ハーバート・ヤン氏

注目集めたスタートアップ10社によるピッチセッション

「Web3 Salon – VC Connect」の目玉として実施された日本のスタートアップ10社によるピッチセッションには、多くの来場者が詰めかけた。当10社は、ジェトロの実施する中東向けアクセラレーションプログラム「J-starX Web3コース」採択企業だ。ここからは各社のピッチについて紹介する。

1 CREATANT

Seref Mamas

CREATANT CEOのセレフ・ママス(Seref Mamas)氏が登壇。CREATANTは、AIを活用したクリエイティブプロフェッショナルのためのインテリジェントビジュアルワークスペース。ワークフローを効率化し生産性を高めることで作業を12倍高速化し、月当たり56時間を節約するだけでなく、ほかのSaasサービス等にかかるサブスクリプション費用を70%削減する。また、インスタント検索、自動タグ付け、自動整理、コンテンツ作成を通じて、ワークフローを合理化し、生産性を向上させると説明した。

 

2 Curvegrid

Jeffrey Wentworth

登壇したCurvegridのファウンダーであるジェフリー・ウェントワース(Jeffrey Wentworth)氏は、1つのプラットフォームで複数のブロックチェーン対応を可能にする開発ツールキット「MultiBaas」について紹介。実績として大手不動産テック企業・LIFULLにおける採用実績などについて語ったほか、注目を集めるステーブルコイン領域への対応についても述べ、「連携するためのインフラはすでに整っている」と強調した。

3 NEURON X

Yusuke Hirota

NEURON X(Laplace)CEOの廣田裕介氏は「Democratize luxury real estate ownership through innovation(イノベーションを通じて、世界中のラグジュアリーアセットの所有を民主化する)」を掲げる。Laplaceは、これまで一部の富裕層しかアクセスできなかった高級不動産を誰でも小口で投資・所有できるプラットフォームを展開している。廣田裕介氏は「流動性不足」「取引の複雑さ」といった従来の不動産投資の構造的課題を指摘し、Laplaceがそれをブロックチェーンのテクノロジーによって解決することを強調した。現在、数億ドル規模のトークン化を進行しており、シードラウンドで資金調達中だ。

 

4 XENEA

Tanimoto Yuma

分散型ストレージ統合型のEVM互換ブロックチェーン・Xeneaを手がけるXENEAからはCSOのTanimoto Yuma氏が登壇した。Xeneaが既存のクラウドシステムが抱える単一障害点などの課題に対応している点や、MENA地域(中東・北アフリカ)での実績などを紹介。また、将来的にグローバルサウスに小型AIデータセンターを設置したいと言及した。

5 Tempura Technologies

Moriki Kamio

Web3.0やAIなどの最先端技術を軸に製品・サービスの企画開発などをサポートするTempura Technologiesの神尾守輝氏は、ソニーが提供するブロックチェーン「Soneium(ソニューム)」で展開されているNFTローンチパッド/マーケットプレイス「Sonova」について紹介した。神尾氏はポケモンカードやゲームアイテムなどの物理的なコレクティブルの需要が高まっている一方、決済面での課題などを指摘。今後ステーブルコインの利活用の増加などを通じて安全かつスピーディな決済が可能になるとした上で、Sonovaで対応するプロダクトの新規開拓についても言及した。 

6 ANDLAW FZCO

GOKI KATO

UAEを拠点としてブロックチェーン分野における相互運用性に関する課題解決に取り組むANDLAW FZCOからはGOKI KATO氏が登壇した。KATO氏はチェーン・アブストラクション(抽象化)に関するプロダクトである「Miki」について紹介。伝統的金融(TradFi)と暗号資産の橋渡し役としての強みについて語ったほか、暗号資産取引の効率化を実現すると説明した。また、複数金融機関・分散型取引所と連携しているとし、来年には大規模な商用展開を計画していると述べた。

7 Animechain

Syuhei Mise

Animechainの三瀬修平氏は、現状のアニメ業界における課題について取り上げた。三瀬氏はアニメ市場が現在急速に拡大している一方、クリエイター不足が深刻化しており、制作環境や報酬体系が整っていないと指摘する。その上で、Animechainではアニメ業界の課題解決に取り組むと強調。具体的には、プロジェクトを通じて制作環境の生産性を大幅に向上させるツールの開発や、ブロックチェーンを活用した素材の管理・記録などを実現するとしている。今後の目標としては、各作品で使用されるデータをトークン化し、クリエイターやスタジオが正当な収益を得られる仕組みを作ることなどをあげた。

8 Wonder Wall

Ken Komatsu

「Web3.0×ゴルフ」プロジェクトとして知られる「GOLFIN」を提供するWonder Wallの小松賢氏が登壇。Web3.0とゴルフ体験を融合させたGOLFINの取り組みを紹介し、会場を賑わせた。今後の展望としては、まずシンガポールで開催される「TOKEN2049」の公式イベントとして、ゴルフトーナメントを開催することを告知。今後はゴルフだけでなく、野球・サッカーなどほかのスポーツ分野への拡張も計画していると明かした。

9 Blocksky

Hideki Takita

ブロックチェーンを活用した広告プラットフォーム「W3AP」の開発及び運営を行うBlockskyの滝田秀樹氏は、自社サービスの紹介に加え、現状のWeb3.0企業を対象とした広告状況の課題を指摘した。現在、Web3.0企業は増加しているものの、ユーザーに直接リーチできる広告サービスが不足していると滝田氏は語る。また、インフルエンサー依存の不透明なマーケティングに頼る傾向があるとし、欧州などでは広告規制が厳しいとも述べた。こうした状況の改善に向け、Blockskyではユーザーと広告主双方にメリットのあるプラットフォームを構築しているとし、将来的には、広告制作・運用・分析を完全自動化する仕組みも導入する計画だという。

10 Kyuzan

Takumi Takahashi

最後に登壇したのは、NFTゲーム「EGGRYPTO」などを手がけるKyuzanの高橋卓巳氏。高橋氏は日本の暗号資産市場は世界有数の規模だと評した一方、「持続的なユーザーエンゲージメントを持つユースケース不足」「Web3.0に関するノウハウ不足」など、日本企業における課題を指摘した。結果的に日本ではまだ本格的なWeb3.0サービス利用が進んでいないと述べた。Kyuzanではこうした課題の解決に向け、ウォレットとユーザーの相互強化や、IP・コンテンツと連携し、ユーザー基盤とサービス価値を高める戦略などを進める考えを示した。

日本のWeb3.0スタートアップとグローバルな投資家をつなぐ架け橋に

セッション終わりには、起業家や投資家らによるネットワーキングで会場は盛り上がりをみせていた。

また、本イベントはグローバルなマッチメイキングであったことから、すべてのセッション、コミュニケーションが英語で行われていた。それでも、多くの日本人が集まり、関心を持って参加していた様子は非常に印象的であった。

Web3.0という可能性を秘めた領域のスタートアップと投資家の接点を創出するということは、イノベーションを進めて行く上で極めて重要なことだ。今後、「Web3 Salon – VC Connect」に集まった日本のスタートアップが、グローバルな舞台でさらなる飛躍を遂げることに期待したい。

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