
ビットコイン市場に総悲観の空気が漂っている。10月10日以降、ビットコイン価格は約40%の急落、市場全体に諦めムードが広がった。投資家心理と市場動向の裏側を探ってみたい。
10月中旬からビットコインは、早くも弱気相場入りを意識させる展開となった。年初来の最高値である約126,000ドルから現在では約87,000ドル前後まで一気に値を崩した形だ。11月20日、AIブームの象徴銘柄であるNVIDIA社が好決算を発表し、関税政策の延期観測なども追い風となって投資家心理が幾分改善。実際、NVIDIAの好調な業績見通しが伝わるとテック株とともにビットコインも下げ止まり、わずかながらも下値から切り返す動きを一時みせた。
しかしながら、翌21日に市場では投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式や暗号資産(仮想通貨)など幅広い投資商品が連れ安となった。Fear & Greed Index(恐怖と欲望指数)も「15」と、今年4月以来の低水準に沈み、いわゆる「極度の恐怖」の領域に達した。まさに多くの市場参加者が「総悲観」に傾いた状況だったといえる。
米国株式市場で楽観論が広がった影響で株価指数先物のボラティリティ指数(VIX)が低下に転じ、暗号資産市場にも過度な不安感の緩和が波及した面もあるだろう。もっとも、依然として利下げ時期の不透明感は残っており、この反発も力強い上昇トレンドに転換するには至っていない。
ビットコイン急落の裏側で、売り手として浮かび上がったのは中期保有層や個人投資家だった。資産運用大手VanEckの分析によれば、今回の調整局面で売り圧力を主導したのは「ミッドサイクル保有者」であり、長期保有のクジラ(大口投資家)層は依然として暗号資産を保持し続けているという。
5年以上動いていない暗号資産の数量は着実に増加傾向にあり、直近の売りは保有期間が中程度の層に集中しているとのことだ。言い換えれば、弱気相場で投げ売りしたのは途中参入組や短期志向の投資家だった可能性が高い。
オンチェーンデータやETF市場の動きをみても、こうした傾向は裏付けられる。暗号資産ETF(上場投資信託)からは、大幅下落に伴い資金流出が相次いだ。先週一週間で18億ドル超もの資金が暗号資産関連ETFから流出し、そのうち約8億7,000万ドルはビットコイン現物ETFからの流出だったと報告されている。
BlackRock社のビットコイン現物ETF(IBIT)やFidelity社のFBTCといった主要ETFの運用資産残高も軒並み減少した。こうした大量解約の背景には、「高値圏でビットコイン現物ETFを購入した短期勢が、今回の下落で我先に投げ売りに走った」との分析がある。