先月、東京で開催された国内最大級のWeb3.0のカンファレンスである「WebX」で、私が携わるBitLendingも2日間会場でブースを構えさまざまな方と交流をさせていただいた。来場者の印象としては業界関係者ではなく、一般の方も多かったように思う。学生の方や外国の方も多く見受けられた。
偶然ブースで声をかけられて立ち話をしたマダムが、SECにビットコインETFの申請を行った企業の1つである某米国の資産管理会社のトップだったのは、のちに見覚えのある顔がトークセッションに登壇していたことで知ることとなった。
熱狂は肌でしか感じられない。初めて会場へ行かれた方はディズニーランドに迷い込んだような高揚感と、なんだかすごそうなイノベーションの幕開けに対する期待感を抱いたのではないだろうか。これが国内のWeb3.0の現在地と思っていただいて間違いではない。しかし、これはまだ伸びしろ段階であることをここで強調させていただきたい。
一方で世界に目を向けると、世界最大規模のWeb3.0カンファレンスと名高い「TOKEN2049」は来場者、出展者、ともに少なく見積もっても日本の倍以上の規模感はあるだろう。この違いはシンプルにマーケットの違いに起因すると私は思う。
Web3.0領域のプロダクトだからといってグローバルにNo Borderで拡大できると思いきや現実はそう簡単ではない。欧米、アジア、中東など地域ごとに国の規制も異なればユーザーの性質、需給バランス、トレンドなど分野ごとのエコシステム1つとっても状況は異なる。
BinanceやCoinbase、Bybitなど世界トップの取引所がWebXに出展していないのはそういう事情もあるだろう。これと同じことがたとえば、決済、不動産、セキュリティ、金融サービス、ゲーム、NFTなど各領域でいえる。
それを踏まえると日本はまさに陸の孤島なのだ。ガラパゴス化とはまさにこのことで、日本のプロダクトにとってはデジャヴでしかない。国内で独自路線を築きながらも一方ではグローバル展開を見据えて、海外の競合に対して遅れが出ないようある程度の国際標準化も考えていかねばならない。せめて税制面だけでも足並みが揃えば良いなんて考えてからもう何年経つだろうか。
WebXは来年も同じ日に同じ会場での開催が決まっているとのことだが、こういう大規模なイベントは我々業界従事者にとっては大きなマイルストーンとなる。来年の今、どうなっていたいか。そもそも生き残っているのか。来場者数、出展者数、少なからず今回よりさまざまな面でのアップグレードが求められる。
出展するプロジェクト側も出展者や広告主を集める主催者側もこの1年、予想外にハードな戦いを強いられることになるだろう。まだまだ首の皮一枚の状態という危機感を持ちながら生きているのはきっと私だけではない。それだけあたらしい業界でご飯を食べていくというのは大変なことなのである。
今回のテーマは「カストディアン(Custodian)」について。おそらくほとんどの読者の皆様には聞き慣れない言葉だろう。カストディ(Custody)とは、金融の文脈では、金融資産の保管及び管理を行うサービスのことを指す。カストディアンは、顧客の資産を安全に保管し、取引の決済、資産の管理、記録の維持、報告などの関連サービスを提供する役割を担う事業者のことである。
暗号資産業界が成熟する為にはプレイヤーの増加が1つのカギとなる。昨今、ビットコイン現物ETFの流入、流出に対してマーケットが敏感に反応しているように、BlackRockなど伝統金融の巨人たちがさまざまな形で参入してくることが絶対条件といえる。
今回クローズアップするのは、機関投資家向けのカストディアンとして世界最大規模を誇るCopper(以下、コパ)社。彼らはハッキングや盗難リスクなどを回避した安全な資産保管サービス、マーケットでの取引や決済を効率的に行うためのインフラサービスを提供しているが、それだけではなく暗号資産の普及をさらに促進するためにあらたな取り組みを進めている。
今回、コパ社のアジア地域ヘッドディレクターである柴山貴俊氏へのインタビューを通じて、同社の成長戦略と未来の展望から業界の今を掘り下げていく。
